お嬢様、流刑地に送られ婚約も破棄。でも最強になったら、ザマぁとかどうでも良くなってた

好きな言葉はタナボタ

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第1部

第52話 「スピード・プリンセス再び②」

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世界は停止した。 よく見れば少しずつ動いているが、停止しているのとほとんど変わらない。 その世界の中で唯一マリカと同じ速度で動くミツキが言う。

「マリカにしては好戦的だね」

「あの威圧的な振る舞いだけで、攻撃する理由として十分よ」

強面こわもての巨漢2人が威圧的な物腰でからんできたのだ。 マリカにとっては、それだけで十分に正当防衛が成立する。

「スピード・プリンセスになったってことは、マリカが《水生成》を使うんだろ? 殺すの?」

「殺さないように努力する」

《水生成》で水を発生させるポイントをずらして、むせさせるのに留めるつもりだ。 万が一殺してしまっても、ここは無法地帯だから問題ない。 自分に不当な危害を加える者が罰せられない代わりに、自分が不当に危害を加えても罰せられない。

「ふーん、頑張ってね」

ミツキが熱意のない口調でマリカを応援した。 ミツキには巨漢たちの生死などどうでもいい。

                   ◇❖◇

マリカは加速した状態で長々とミツキと会話していたが、巨漢はまだマリカたちがいる場所に達していない。 マリカとミツキはいったい何倍に加速しているのだろう? 50倍? 100倍? 100倍速ぐらいかもしれない。 100倍速なら世界の3秒がマリカたちにとっては300秒すなわち5分である。

マリカは《水生成》の呪文を唱えようと精神を集中する。 最初のターゲットは、こっちに歩いてくる巨漢。 その巨漢の口の中に水を少なめに生成してみよう。

「ヴィテーム・ウルビテーム・ラ・ウィータ」

呪文が発動し水が生成される手応えがあったが、巨漢の時間はほとんど止まっているのでリアクションはない。

マリカは続けてもう1人の巨漢をターゲットに同様に《水生成》を唱え、唱え終えたのを見計らってミツキが高速を解除した。

                   ◇❖◇

世界が音と動きを取り戻し、2人の巨漢が激しくムセはじめる。 ぐぼぁ。 げほっ、げほっ! 突如として口内に生じた水が気管に入り込んだのだ。

巨漢たちは苦しさのあまり四つん這いになり、顔を真っ赤にして鼻水を垂らしながらムセ続けていたが、マリカの《水生成》の調節が絶妙だったので死ぬことはなさそうだ。

マリカは苦しみ続ける巨漢2人に冷たい声で言い放つ。

「次に同じような真似をしたら溺死させるわよ? これからは背中を丸め下を向いて遠慮がちに生きてゆきなさい」

マリカは町の乱暴者を退治したわけだが、周囲の傍観者から拍手喝采がき起こったりはしなかった。 傍観者の1/4ほどは自分自身が乱暴者だったし、残りの3/4はその乱暴者に怯えていたからだ。 マリカが乱暴者を退治したのを喜べば、手近にいる未退治の乱暴者に目を付けられてしまう。

1/4の乱暴者は警戒の眼差まなざしで、残りの3/4は称賛の眼差しで、それぞれに黙ってマリカを眺めるのみであった。
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