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第1部
第59話 「豪語」
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朝食を済ませたマリカとミツキは、仲良く手をつないでコモノ・ハウスへと向かった。 コモノたちを狩りに誘うのだ。
コモノ・ハウスの前にはすでに身支度を整えたコモノたちが待ち構えており、マリカとミツキの姿を見つけて大喜び。
「マリカさん!」「ミツキくん!」
マリカはコモノたちのもとへ歩み寄った。
「準備万端だなんて感心じゃない」
「連れて行ってもらうんですから当然ですよ!」
会話を交わしながらマリカは違和感を感じる。 籠を背負っている者の数がやけに多い。 それに女性も混じっている。 女性たちは30~40代で、妊娠している者もいる。
「いま籠を背負ってる人が全員きょうの狩りに参加するのかしら?」
元気のいい返事が返ってきた。
「はいっ!」「そうでーす」「よろしくお願いしまーす」
籠を背負う者の数を目で数えていたミツキが、カウントを完了して悲鳴を上げる。
「30人もいるよ!」
昨日の3倍である。 言うまでもないが、マリカが仕留めた獲物を運ぶのに30人も必要ない。
マリカがコモノ代表に要求する。
「30人はさすがに多すぎるわ。 人数を絞ってちょうだい。 それにどうして女の人までいるの?」
「共用女の人たちです」
コモノから共用女にマリカ主催の狩りの話が伝わったのだという。 コモノ・ハウスのすぐ隣には共用女ハウスがある。
「ふ~ん。 まあ、それはいいとして、狩りに連れて行くのは10人という約束だったでしょう? どうして増えてるのよ?」
「新たに参加したい人が出るいっぽうで、マリカさんの狩りに一度参加した者が必ずまた参加したいと言って譲らなかったんです。 皆で一晩中話し合ったんですが折り合いがつかなくて...」
コモノにとってマリカの狩りはご馳走にありつくチャンスであるだけでなく、息抜きとして格好の機会でもある。
しかしマリカにとっては狩りは単なる食料確保の手段だし、コモノを雇うのも仕留めた獲物を運ばせるため。 コモノの生活を豊かにしようと狩りを主催しているわけではない。 だからマリカが次のように突っぱねてしまうのも無理からぬことである。
「それはあなたたちの問題でしょう? 私が雇えるのは10人が限度よ」
それまで朗らかに活気づいていたコモノと共用女が、マリカの言葉の意味を理解して一斉に静まり返る。 意気消沈してガックリと肩を落とす。
マリカは自分の発言の影響力に驚いた。
「なにもそんなにショックを受けなくてもいいじゃない...」
そう言いつつもマリカは罪悪感に苛まれ始めていた。 暗い顔のコモノは貧相さもひとしおで憐れみを誘う。 彼らは流刑地で皆が嫌がる労働を押し付けられる一方で満足な食事を与えられず、みな痩せていて疲労の色も濃い。
(考えてみれば、コモノさん達は私のほかに頼れる人がいないのよね)
その思いから連鎖的にマリカの頭に浮かぶ言葉がある。
(いい年をした大人が情けない)
マリカは慌ててその言葉を否定した。 無法地帯にあって肉体的に貧弱なコモノに何ができようか? 勇気を出して行動したところで問答無用の暴力が返ってくるだけである。 いい年をした大人にもどうしようもない状況は存在し、コモノにとっての流刑地はそういう状況なのだ。
マリカは幸いにも魔法が使えるし、ミツキという最強の妖精とも懇ろの仲だ。 不条理な理由で流刑地に送られたのがそもそも不運だとはいえ、流刑地においては格別に恵まれた立場にある。 そんなマリカは恵まれない者を助けてやるべきではないのか? 流罪に処された当初にマリカ自身も感じた流罪の不公平さを解消するために何かをすべきではないのか?
「少し... 言い過ぎたかもしれないわね」
近くのコモノたちがマリカのつぶやきに耳敏く反応し、耳をピクつかせて瞼を瞬かせる。 えっ、それじゃあ? もしかして? 彼らの瞳に希望の光が戻り始める。 その次のセリフを早く聞かせてくださいマリカさん。
しかしマリカがなかなか続きの言葉を口にしようとしないので、焦れたコモノ代表が水を向ける。
「あの... 言い過ぎたとは?」
「ぜ、全員...」
マリカは言い淀んだ。 いま自分は間違った決断をしようとしているのでは? 果たして面倒を見切れるのか?
「全員?」
ええい、ままよ! マリカは半ばヤケっぱちで言い放つ。
「狩りに行きたい人は全員つれて行ってあげるわ!」
コモノと共用女が歓喜を爆発させる。 やったー! ばんざーい、ばんざーい! どすこーい!
(言っちゃった。 豪語しちゃった)
コモノ・ハウスの前にはすでに身支度を整えたコモノたちが待ち構えており、マリカとミツキの姿を見つけて大喜び。
「マリカさん!」「ミツキくん!」
マリカはコモノたちのもとへ歩み寄った。
「準備万端だなんて感心じゃない」
「連れて行ってもらうんですから当然ですよ!」
会話を交わしながらマリカは違和感を感じる。 籠を背負っている者の数がやけに多い。 それに女性も混じっている。 女性たちは30~40代で、妊娠している者もいる。
「いま籠を背負ってる人が全員きょうの狩りに参加するのかしら?」
元気のいい返事が返ってきた。
「はいっ!」「そうでーす」「よろしくお願いしまーす」
籠を背負う者の数を目で数えていたミツキが、カウントを完了して悲鳴を上げる。
「30人もいるよ!」
昨日の3倍である。 言うまでもないが、マリカが仕留めた獲物を運ぶのに30人も必要ない。
マリカがコモノ代表に要求する。
「30人はさすがに多すぎるわ。 人数を絞ってちょうだい。 それにどうして女の人までいるの?」
「共用女の人たちです」
コモノから共用女にマリカ主催の狩りの話が伝わったのだという。 コモノ・ハウスのすぐ隣には共用女ハウスがある。
「ふ~ん。 まあ、それはいいとして、狩りに連れて行くのは10人という約束だったでしょう? どうして増えてるのよ?」
「新たに参加したい人が出るいっぽうで、マリカさんの狩りに一度参加した者が必ずまた参加したいと言って譲らなかったんです。 皆で一晩中話し合ったんですが折り合いがつかなくて...」
コモノにとってマリカの狩りはご馳走にありつくチャンスであるだけでなく、息抜きとして格好の機会でもある。
しかしマリカにとっては狩りは単なる食料確保の手段だし、コモノを雇うのも仕留めた獲物を運ばせるため。 コモノの生活を豊かにしようと狩りを主催しているわけではない。 だからマリカが次のように突っぱねてしまうのも無理からぬことである。
「それはあなたたちの問題でしょう? 私が雇えるのは10人が限度よ」
それまで朗らかに活気づいていたコモノと共用女が、マリカの言葉の意味を理解して一斉に静まり返る。 意気消沈してガックリと肩を落とす。
マリカは自分の発言の影響力に驚いた。
「なにもそんなにショックを受けなくてもいいじゃない...」
そう言いつつもマリカは罪悪感に苛まれ始めていた。 暗い顔のコモノは貧相さもひとしおで憐れみを誘う。 彼らは流刑地で皆が嫌がる労働を押し付けられる一方で満足な食事を与えられず、みな痩せていて疲労の色も濃い。
(考えてみれば、コモノさん達は私のほかに頼れる人がいないのよね)
その思いから連鎖的にマリカの頭に浮かぶ言葉がある。
(いい年をした大人が情けない)
マリカは慌ててその言葉を否定した。 無法地帯にあって肉体的に貧弱なコモノに何ができようか? 勇気を出して行動したところで問答無用の暴力が返ってくるだけである。 いい年をした大人にもどうしようもない状況は存在し、コモノにとっての流刑地はそういう状況なのだ。
マリカは幸いにも魔法が使えるし、ミツキという最強の妖精とも懇ろの仲だ。 不条理な理由で流刑地に送られたのがそもそも不運だとはいえ、流刑地においては格別に恵まれた立場にある。 そんなマリカは恵まれない者を助けてやるべきではないのか? 流罪に処された当初にマリカ自身も感じた流罪の不公平さを解消するために何かをすべきではないのか?
「少し... 言い過ぎたかもしれないわね」
近くのコモノたちがマリカのつぶやきに耳敏く反応し、耳をピクつかせて瞼を瞬かせる。 えっ、それじゃあ? もしかして? 彼らの瞳に希望の光が戻り始める。 その次のセリフを早く聞かせてくださいマリカさん。
しかしマリカがなかなか続きの言葉を口にしようとしないので、焦れたコモノ代表が水を向ける。
「あの... 言い過ぎたとは?」
「ぜ、全員...」
マリカは言い淀んだ。 いま自分は間違った決断をしようとしているのでは? 果たして面倒を見切れるのか?
「全員?」
ええい、ままよ! マリカは半ばヤケっぱちで言い放つ。
「狩りに行きたい人は全員つれて行ってあげるわ!」
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