お嬢様、流刑地に送られ婚約も破棄。でも最強になったら、ザマぁとかどうでも良くなってた

好きな言葉はタナボタ

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第2部

第3話 「爪切り①」

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派閥ボスの座に落ち着いたマリカの急務は爪切りだった。 今や1cm近くにまで伸びた爪が邪魔で仕方ないし、ミツキに爪の長さに注目されたらマリカの爪の伸びる速さに気付かれてミツキに子造りを要求されてしまう恐れがある。

マリカに子造りするつもりはない。 流刑地で子を産み育てる自信が無いから。 けれど、ミツキに本気でお願いされたらマリカはきっと断り切れない。 人間との子造りにはクイックリング一族の命運がかかっているそうだから、ミツキは土下座すらいとわないだろう。

(もしもミツキに土下座で子造りをお願いされちゃったら... ハァハァ)

マリカの足元にいつくばり子造りを嘆願するミツキを想像して、マリカは乙女心を甘く切なくうずかせるのであった。

                  ◇❖◇❖◇

マリカは爪切りを求めて、まず自宅を探し回った。 マリカの自宅にはゲレニカが住んでいた頃の家財道具がたくさん残されているので、爪切りぐらいあってもおかしくない。 だが爪切りは見つからなかった。

そこでマリカは、おりよく世間話をしに来たコモノ代表に相談してみた。

「爪切りですか? 見かけませんねえ。 流刑地には存在しないのかも」

「じゃあ、ダイヒョーさんは爪をどうしてるの?」

コモノ代表には「ムネカタ」という名前があるのだが、そう伝えられてからもマリカは彼を名前で呼ぼうとしない。

「ナイフで切ってます。 慣れれば簡単ですよ」

コモノ代表の返答にマリカは顔を曇らせる。 ナイフで爪を切るなんて絶対にムリ。 それに私は週に一度は爪を切るのよ? 毎週毎週ナイフを振りかざせと言うの?

マリカの浮かない顔を見たコモノ代表ムネカタは親切心を発揮して、憶測おくそくに基づく不確かな情報を提供する。

「私はコモノだったので流刑地で爪切りを見たことはありませんが、パンピーだった人なら爪切りを持っているかもしれません」

コモノ代表がいちいち「だった」と過去形を使うのは、共用女だけでなくコモノやパンピーといった身分もマリカが廃止したからである。 したがって「コモノ代表」という呼称も、もはや適切ではない。 これからは彼を「ムネカタ」と呼ぶことにしよう。

マリカはコモノ代表あらためムネカタの言葉に飛びついた。

「まあ! そうだったの?」 そういうことだったのね!

「あくまでも可能性なので、あまり期待されては...」

「ちょっと爪切り探しに行ってくる!」

部屋を飛び出すマリカに、武装した男性4人があわてて付いていった。 実務責任者のパグルが編成した護衛チームの面々である。
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