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第2部
第2話 「最後まで責任をもって面倒を見ましょう」
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コモノ・ハウスに到着したマリカは、そこに自派閥の住民400人超を集めさせた。 改めてマリカの方針を全員に伝えるためだ。 共用女以外の女性はゲレニカが降参した場に居合わせなかったから、マリカが派閥を乗っ取ったことすらまだ知らない。
「マリカさん、だいたい全員集まりました」
コモノ代表の報告を受けたマリカは、演壇の代わりに用意された木箱の上に飛び乗りスピーチを始めた。
「皆さん、私が今日からあなたたちのボスになるマキハタヤ・マリカです」
そうしてマリカは自分のポリシーを皆に披露した。 次の3点である:
1. 暴力の禁止。 派閥内の争いの解決に暴力や威圧的な言動を用いてはならない。
2. 労働と物資の公平な配分。 一部の者のみが美味しい思いをするのは認められない。 何をもって公平とするかは今後おいおい決めていく。
3. 「共用女」制度の廃止。 性交を望まぬ女性に性交を強いることは許されない。
のちに「マリカの3ヶ条」としてアガマサラ市の歴史の教科書にも登場することになるこのポリシーを、派閥民は拍手で迎え入れた。 ゲレニカも幹部も派閥を出て行ったから、この新しいポリシーを不満に思う者は少数だった。
「次に、実務責任者を決めたいと思います」
マリカの派閥の運営を取り仕切る人物を決めようというのだ。 マリカは派閥という組織に詳しくなかったから、自分の役割を派閥の大まかな方針の策定と派閥民の保護に限定しようと考えていた。
マリカは住民たちに候補を選ばせたうえで住民投票を行うことにした。 候補として名が挙がったのは5人。 その中から投票で実務責任者に選ばれたのは、パグルという名の男性パンピーだった。
パグルは元官僚で、収賄の罪で流刑に処されたのだという。 収賄事件を起こした人物に派閥の運営を任せるのもどうかと思うが、ここ流刑地にあって元官僚は得がたい人材である。
「それじゃあパグルさん、細かいことはあなたに任せるのでよろしくね」
実のところマリカは、細かくないこともパグルに任せるつもりである。
「任せてくださいマリカさん。 やってやりますよ!」
こうしてマリカはまんまと面倒ごとを他人に押し付けた。
◇❖◇
「じゃあ、そういうことで。 後のことはよろしくねパグルさん。 ミツキ、お家に帰るわよ」
家に帰ろうとするマリカを周囲の者が慌てて引き留める。
「ちょ、ちょっと待ってくださいマリカさん!」「お家って、これまで住んでた家じゃ...」「私たちをほったらかしにしないで!」「最後まできちんと面倒を見てください!」
マリカがこれまで住んでいた家はジュニアの派閥の居住区にある。 今や一派を率いる身となったマリカがジュニアの居住区に住み続けるのは不適切だ。 そうパグルに諭されてマリカはゲレニカが住んでいた邸宅に住むことになり、そこに案内された。
「あら、立派な家じゃない。 ミツキと2人で住むには広すぎないかしら?」
門の内側には門番の詰め所まで設えられている。
「マリカさんはボスですから、家に人が集まることも多いでしょう」
マリカもミツキも私物を持っていないので、引っ越し作業は不要である。 隣人に狩猟採集の道具を借りていたのを返しに行ったついでに、これまで何日間かを過ごした家を外から少し眺めただけだった。
◇❖◇
ゲレニカから奪った拳銃とミツキだけを引っ提げて、マリカが今や自分のものとなった居住区へと戻って来ると、そこではパグルが男性の集団を引き連れてマリカの帰還を待っていた。
聞けば彼らは、マリカを護衛するためパンピーの中から選び抜かれた人員なのだという。 若く壮健な男性ばかり24人。 この24人が4人で1チームとなり、6交代制で昼夜を問わずマリカを護衛する。
さらにパグルは数名の女性をマリカの家の使用人に任命した。 女性たちが炊事などの家事をやってくれるのだ。
「ボスにはボスの仕事があるでしょうから」
パグルはそう言ったのは、ボスの仕事の大部分を彼自身がやることになるのをこのとき彼がまだ知らなかったからだ。 マリカはそのことを知っていたけれど、元お嬢様の彼女は使用人の存在を当然のものとして受け入れた。
「マリカさん、だいたい全員集まりました」
コモノ代表の報告を受けたマリカは、演壇の代わりに用意された木箱の上に飛び乗りスピーチを始めた。
「皆さん、私が今日からあなたたちのボスになるマキハタヤ・マリカです」
そうしてマリカは自分のポリシーを皆に披露した。 次の3点である:
1. 暴力の禁止。 派閥内の争いの解決に暴力や威圧的な言動を用いてはならない。
2. 労働と物資の公平な配分。 一部の者のみが美味しい思いをするのは認められない。 何をもって公平とするかは今後おいおい決めていく。
3. 「共用女」制度の廃止。 性交を望まぬ女性に性交を強いることは許されない。
のちに「マリカの3ヶ条」としてアガマサラ市の歴史の教科書にも登場することになるこのポリシーを、派閥民は拍手で迎え入れた。 ゲレニカも幹部も派閥を出て行ったから、この新しいポリシーを不満に思う者は少数だった。
「次に、実務責任者を決めたいと思います」
マリカの派閥の運営を取り仕切る人物を決めようというのだ。 マリカは派閥という組織に詳しくなかったから、自分の役割を派閥の大まかな方針の策定と派閥民の保護に限定しようと考えていた。
マリカは住民たちに候補を選ばせたうえで住民投票を行うことにした。 候補として名が挙がったのは5人。 その中から投票で実務責任者に選ばれたのは、パグルという名の男性パンピーだった。
パグルは元官僚で、収賄の罪で流刑に処されたのだという。 収賄事件を起こした人物に派閥の運営を任せるのもどうかと思うが、ここ流刑地にあって元官僚は得がたい人材である。
「それじゃあパグルさん、細かいことはあなたに任せるのでよろしくね」
実のところマリカは、細かくないこともパグルに任せるつもりである。
「任せてくださいマリカさん。 やってやりますよ!」
こうしてマリカはまんまと面倒ごとを他人に押し付けた。
◇❖◇
「じゃあ、そういうことで。 後のことはよろしくねパグルさん。 ミツキ、お家に帰るわよ」
家に帰ろうとするマリカを周囲の者が慌てて引き留める。
「ちょ、ちょっと待ってくださいマリカさん!」「お家って、これまで住んでた家じゃ...」「私たちをほったらかしにしないで!」「最後まできちんと面倒を見てください!」
マリカがこれまで住んでいた家はジュニアの派閥の居住区にある。 今や一派を率いる身となったマリカがジュニアの居住区に住み続けるのは不適切だ。 そうパグルに諭されてマリカはゲレニカが住んでいた邸宅に住むことになり、そこに案内された。
「あら、立派な家じゃない。 ミツキと2人で住むには広すぎないかしら?」
門の内側には門番の詰め所まで設えられている。
「マリカさんはボスですから、家に人が集まることも多いでしょう」
マリカもミツキも私物を持っていないので、引っ越し作業は不要である。 隣人に狩猟採集の道具を借りていたのを返しに行ったついでに、これまで何日間かを過ごした家を外から少し眺めただけだった。
◇❖◇
ゲレニカから奪った拳銃とミツキだけを引っ提げて、マリカが今や自分のものとなった居住区へと戻って来ると、そこではパグルが男性の集団を引き連れてマリカの帰還を待っていた。
聞けば彼らは、マリカを護衛するためパンピーの中から選び抜かれた人員なのだという。 若く壮健な男性ばかり24人。 この24人が4人で1チームとなり、6交代制で昼夜を問わずマリカを護衛する。
さらにパグルは数名の女性をマリカの家の使用人に任命した。 女性たちが炊事などの家事をやってくれるのだ。
「ボスにはボスの仕事があるでしょうから」
パグルはそう言ったのは、ボスの仕事の大部分を彼自身がやることになるのをこのとき彼がまだ知らなかったからだ。 マリカはそのことを知っていたけれど、元お嬢様の彼女は使用人の存在を当然のものとして受け入れた。
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