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第2部
第1話 「ゲレニカの女」
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ゲレニカの派閥を乗っ取ったマリカが派閥の新方針を発表すると、ゲレニカと幹部たちは派閥から出ていくと言い捨てて、そそくさと町へと戻っていった。
コモノと共用女にパンピーを加え300名近くにまで膨れ上がったマリカたち一行は特に急ぐこともなく町への道を進む。 コモノも共用女も足取りは軽く、まだ興奮冷めやらぬ様子である。
「まさかこんな日が来るなんて」
「やれ、めでたや」
「ハーレルーヤ」
◇❖◇
流刑地に着いたマリカは、コモノ・ハウスの前までコモノたちと一緒に行くことにした。 マリカが新たなボスとなったことを派閥民に周知し、派閥の今後について皆で話し合わねばならない。
その途上でマリカたちは、ゲレニカと元幹部の一団が街路の向こうからやって来るのに出くわした。 総勢40人ほどで、半数以上が女性。 大きな荷物を載せた荷車を引いている。 女性たちはゲレニカと幹部の女なのだろう、流刑地の他の女性よりも格段に若く美しく、流罪人とは思えぬほどオシャレな衣服と装飾品で着飾っている。
「ゲレニカさんたち、どこに行くのかしら?」
マリカの問いにコモノ代表が答える。
「他のエリアに移り住むんでしょう」
「どうして?」
「流刑地じゃ派閥ごとに集まって暮らしてますからね。 派閥を抜けたゲレニカたちは、我々の居住区に住んでいられません」
コモノ代表は穏やかな表情でそう言った。 いま彼は自分にとって最大の脅威が彼の生活圏から出ていくのを目の当たりにしているのだ。
◇❖◇
マリカたちとゲレニカの一団との距離が近づく。
ゲレニカたちが今さら襲い掛かって来るはずはないが、それでもマリカは緊張し、背中の籠から拳銃を出して右手に持つ。 傍らではミツキも微発光だ。
2つの集団の距離がさらに近づき、マリカがゲレニカらのほうをこっそり見ると、彼らは切羽詰まった表情である。 今夜寝る場所すら決まってないから、それも当然だ。
ゲレニカらがマリカたちと目を合わせないようにしているのとは対照的に、彼らが連れている女たちは興味津々といった様子でマリカたちに視線を向けてくる。
いよいよゲレニカたちとすれ違おうとするとき、5~6人の女がゲレニカたちの集団から飛び出してマリカたちのほうへ駆けてきた。 いずれも若く美しい女で、彼女らが放つ魅力は共用女と比べるべくもない。
驚いたゲレニカと元幹部たちが女の名を呼ぶ。
「オリエ!」「ユッコ!」「リサ!」
何事かと警戒を強めるマリカたちに、女たちは口々に訴える。
「助けて!」「派閥に残りたいの!」
◇❖◇
マリカはゲレニカたちと多少揉めたものの無事に女たちを保護した。 ゲレニカはしきりに「オリエ、オリエ!」と呼びかけていたが、オリエなる女は耳を貸さず頑なにゲレニカに背を向けていた。
そのオリエからマリカは事情を聞きだした。
「派閥を抜けた者の末路は悲惨なんです。 他の派閥に入れてもらえなければ野垂れ死にです」
流刑地では食料の多くを派閥ごとの調達に頼っているから、ゲレニカがどこかの派閥に入らなければ食うに困るのは明らか。 しかし、ボスだったゲレニカを受け入れる派閥ボスがいるわけがない。 ゲレニカがボスの地位を狙うのが目に見えているからだ。
「ゲレニカは新しい派閥を作ると言ってましたけど、上手くいくはずがありません」
ゲレニカの失敗を予見したオリエがマリカに救いを求め、オリエと同じ考えの女たちが後に続いたわけである。
コモノと共用女にパンピーを加え300名近くにまで膨れ上がったマリカたち一行は特に急ぐこともなく町への道を進む。 コモノも共用女も足取りは軽く、まだ興奮冷めやらぬ様子である。
「まさかこんな日が来るなんて」
「やれ、めでたや」
「ハーレルーヤ」
◇❖◇
流刑地に着いたマリカは、コモノ・ハウスの前までコモノたちと一緒に行くことにした。 マリカが新たなボスとなったことを派閥民に周知し、派閥の今後について皆で話し合わねばならない。
その途上でマリカたちは、ゲレニカと元幹部の一団が街路の向こうからやって来るのに出くわした。 総勢40人ほどで、半数以上が女性。 大きな荷物を載せた荷車を引いている。 女性たちはゲレニカと幹部の女なのだろう、流刑地の他の女性よりも格段に若く美しく、流罪人とは思えぬほどオシャレな衣服と装飾品で着飾っている。
「ゲレニカさんたち、どこに行くのかしら?」
マリカの問いにコモノ代表が答える。
「他のエリアに移り住むんでしょう」
「どうして?」
「流刑地じゃ派閥ごとに集まって暮らしてますからね。 派閥を抜けたゲレニカたちは、我々の居住区に住んでいられません」
コモノ代表は穏やかな表情でそう言った。 いま彼は自分にとって最大の脅威が彼の生活圏から出ていくのを目の当たりにしているのだ。
◇❖◇
マリカたちとゲレニカの一団との距離が近づく。
ゲレニカたちが今さら襲い掛かって来るはずはないが、それでもマリカは緊張し、背中の籠から拳銃を出して右手に持つ。 傍らではミツキも微発光だ。
2つの集団の距離がさらに近づき、マリカがゲレニカらのほうをこっそり見ると、彼らは切羽詰まった表情である。 今夜寝る場所すら決まってないから、それも当然だ。
ゲレニカらがマリカたちと目を合わせないようにしているのとは対照的に、彼らが連れている女たちは興味津々といった様子でマリカたちに視線を向けてくる。
いよいよゲレニカたちとすれ違おうとするとき、5~6人の女がゲレニカたちの集団から飛び出してマリカたちのほうへ駆けてきた。 いずれも若く美しい女で、彼女らが放つ魅力は共用女と比べるべくもない。
驚いたゲレニカと元幹部たちが女の名を呼ぶ。
「オリエ!」「ユッコ!」「リサ!」
何事かと警戒を強めるマリカたちに、女たちは口々に訴える。
「助けて!」「派閥に残りたいの!」
◇❖◇
マリカはゲレニカたちと多少揉めたものの無事に女たちを保護した。 ゲレニカはしきりに「オリエ、オリエ!」と呼びかけていたが、オリエなる女は耳を貸さず頑なにゲレニカに背を向けていた。
そのオリエからマリカは事情を聞きだした。
「派閥を抜けた者の末路は悲惨なんです。 他の派閥に入れてもらえなければ野垂れ死にです」
流刑地では食料の多くを派閥ごとの調達に頼っているから、ゲレニカがどこかの派閥に入らなければ食うに困るのは明らか。 しかし、ボスだったゲレニカを受け入れる派閥ボスがいるわけがない。 ゲレニカがボスの地位を狙うのが目に見えているからだ。
「ゲレニカは新しい派閥を作ると言ってましたけど、上手くいくはずがありません」
ゲレニカの失敗を予見したオリエがマリカに救いを求め、オリエと同じ考えの女たちが後に続いたわけである。
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