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第2部
第28話 「大事な相談が済んだ後で①」
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大事な相談がひとしきり済んで、パグルが言い出した。
「今日アガマサラ市から定期便が来ましてね」
そう言いながらパグルは、足元の紙袋から紙箱を2つ取り出してテーブルの上に置く。
「注文していた拳銃のホルスターと弾薬が届いたんです」
「まあ!」
マリカは胸の前に両手を合わせて喜んだ。 弱っていた心に朗報である。
「こちらの箱がホルスターで、こちらが弾薬。 50発です」
「ありがとう。 大切に使わせて頂くわ」
マリカは2つの箱を大事そうに膝の上に載せた。 本当は弾薬をもっと大量に欲しいところだが、高価だからマリカの派閥の経済力ではそう多くは買えない。 ミツキに去られると分かっていれば、無理してでも大量に注文しただろうが。
「ええ。 それから、マリカさんのご実家に関する噂を耳にしました」
「わたしの実家?」
自分の実家と聞いてすぐに、マリカはお嬢様だった頃の気分に戻った。 マキハタヤ家の壮麗な邸宅、マリカを可愛がってくれた使用人たち、そしてお父さまとお母さま... マリカは両親の顔と声を、まるで昨日会ったばかりのようにはっきりと思い出した。
◇❖◇
マリカが追憶に浸るうちにも、パグルは話を続ける。
「マキハタヤ家がサナキダ派の連中から、ひどい嫌がらせを受けているそうです。 町中で噂になるほどに」
パグルの言葉にマリカはドキリとする。
「嫌がらせ?」
「邸宅が放火や投石の被害に遭っているほか、脅迫状が送られて来るそうです。 マキハタヤ氏の奥方は寝込んでるらしいですよ」
「っ! ...いったい誰が私の家に嫌がらせを?」
「サナキダ系ヤクザの仕業だろうって話です。 マリカさんのお父上が最近になって反サナキダの急先鋒に立つようになったからだとか」
「お父さまが? どうして...?」
サナキダ市はマリカの元婚約者シンジュロウが住む都市である。 娘をサナキダ市の元首の息子に嫁がせようとしていたぐらいだから、これまでマリカの父はサナキダ市を嫌っていなかった。
(シンジュロウさまが私との婚約を破棄したから? でも、事情を考えれば当然だし、お父さまもそのことは分かってるはず...)
「それは不明ですが、マキハタヤ氏は国内の親サナキダ派を一掃しサナキダ市と距離を置くことを主張しているそうです。
「私としては、マキハタヤ氏の主張に賛成ですね。 親サナキダ派がアガマサラ市よりもサナキダ市の利益を優先するのは以前から明らかでした。 警察もサナキダ派の影響下にあるから、マリカさんの実家への嫌がらせも、きっと野放しでしょう」
そこまで語って、パグルはマリカの顔から血の気が引いているのに気付いた。
「いや、余計なことを伝えてしまって申し訳ない」
流罪人であるマリカに実家の危機を丁寧に伝えても、マリカの心を無意味に乱すだけだ。 派閥ボスとはいえ流罪人であるマリカに、アガマサラ市内にある実家を救えはしない。
だが、マリカはパグルの謝罪の言葉を聞いていなかった。 ただただ望郷の念に圧倒されていた。 マリカの里心を封じていた蓋をパグルの話が開けてしまったのだ。
マリカには実家の嫌がらせに立ち向かう自信があった。 流刑地でメンタルを鍛えられたマリカの心は、放火・投石・脅迫状と聞かされたぐらいでは揺らがない。 彼女には拳銃もあれば、《水生成》で人を殺した経験もある。 そんなマリカが帰省すれば ―たとえミツキが一緒でなくても― 両親の強力な味方となることだろう。
マリカは絞り出すように言う。
「なんとかならないの?」
「なんとかとは?」
「なんとかして...」 自分でも分かってる。わたし無茶なこと言っている。「アガマサラ市に戻れないかしら?」
「それは無茶な相談」そこまで言って、パグルは何かを考えついた。「...いや、マリカさんなら」
「私なら!? 戻れるの?」
マリカは勢い込んでパグルに尋ねたが、彼は返事をせず思考にふける。
「...」
しばしの黙考ののち、パグルはマリカに告げた。
「マリカさんならアガマサラ市に戻れるでしょう。 ですがマリカさんの帰還を手助けするにあたり、1つ条件を求めたいと思います」
「今日アガマサラ市から定期便が来ましてね」
そう言いながらパグルは、足元の紙袋から紙箱を2つ取り出してテーブルの上に置く。
「注文していた拳銃のホルスターと弾薬が届いたんです」
「まあ!」
マリカは胸の前に両手を合わせて喜んだ。 弱っていた心に朗報である。
「こちらの箱がホルスターで、こちらが弾薬。 50発です」
「ありがとう。 大切に使わせて頂くわ」
マリカは2つの箱を大事そうに膝の上に載せた。 本当は弾薬をもっと大量に欲しいところだが、高価だからマリカの派閥の経済力ではそう多くは買えない。 ミツキに去られると分かっていれば、無理してでも大量に注文しただろうが。
「ええ。 それから、マリカさんのご実家に関する噂を耳にしました」
「わたしの実家?」
自分の実家と聞いてすぐに、マリカはお嬢様だった頃の気分に戻った。 マキハタヤ家の壮麗な邸宅、マリカを可愛がってくれた使用人たち、そしてお父さまとお母さま... マリカは両親の顔と声を、まるで昨日会ったばかりのようにはっきりと思い出した。
◇❖◇
マリカが追憶に浸るうちにも、パグルは話を続ける。
「マキハタヤ家がサナキダ派の連中から、ひどい嫌がらせを受けているそうです。 町中で噂になるほどに」
パグルの言葉にマリカはドキリとする。
「嫌がらせ?」
「邸宅が放火や投石の被害に遭っているほか、脅迫状が送られて来るそうです。 マキハタヤ氏の奥方は寝込んでるらしいですよ」
「っ! ...いったい誰が私の家に嫌がらせを?」
「サナキダ系ヤクザの仕業だろうって話です。 マリカさんのお父上が最近になって反サナキダの急先鋒に立つようになったからだとか」
「お父さまが? どうして...?」
サナキダ市はマリカの元婚約者シンジュロウが住む都市である。 娘をサナキダ市の元首の息子に嫁がせようとしていたぐらいだから、これまでマリカの父はサナキダ市を嫌っていなかった。
(シンジュロウさまが私との婚約を破棄したから? でも、事情を考えれば当然だし、お父さまもそのことは分かってるはず...)
「それは不明ですが、マキハタヤ氏は国内の親サナキダ派を一掃しサナキダ市と距離を置くことを主張しているそうです。
「私としては、マキハタヤ氏の主張に賛成ですね。 親サナキダ派がアガマサラ市よりもサナキダ市の利益を優先するのは以前から明らかでした。 警察もサナキダ派の影響下にあるから、マリカさんの実家への嫌がらせも、きっと野放しでしょう」
そこまで語って、パグルはマリカの顔から血の気が引いているのに気付いた。
「いや、余計なことを伝えてしまって申し訳ない」
流罪人であるマリカに実家の危機を丁寧に伝えても、マリカの心を無意味に乱すだけだ。 派閥ボスとはいえ流罪人であるマリカに、アガマサラ市内にある実家を救えはしない。
だが、マリカはパグルの謝罪の言葉を聞いていなかった。 ただただ望郷の念に圧倒されていた。 マリカの里心を封じていた蓋をパグルの話が開けてしまったのだ。
マリカには実家の嫌がらせに立ち向かう自信があった。 流刑地でメンタルを鍛えられたマリカの心は、放火・投石・脅迫状と聞かされたぐらいでは揺らがない。 彼女には拳銃もあれば、《水生成》で人を殺した経験もある。 そんなマリカが帰省すれば ―たとえミツキが一緒でなくても― 両親の強力な味方となることだろう。
マリカは絞り出すように言う。
「なんとかならないの?」
「なんとかとは?」
「なんとかして...」 自分でも分かってる。わたし無茶なこと言っている。「アガマサラ市に戻れないかしら?」
「それは無茶な相談」そこまで言って、パグルは何かを考えついた。「...いや、マリカさんなら」
「私なら!? 戻れるの?」
マリカは勢い込んでパグルに尋ねたが、彼は返事をせず思考にふける。
「...」
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「マリカさんならアガマサラ市に戻れるでしょう。 ですがマリカさんの帰還を手助けするにあたり、1つ条件を求めたいと思います」
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