お嬢様、流刑地に送られ婚約も破棄。でも最強になったら、ザマぁとかどうでも良くなってた

好きな言葉はタナボタ

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第2部

第27話 「お布団とノック」

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ビンタの夕べゆうべの翌日、マリカは昼過ぎになっても部屋から出てこなかった。 すっかり厭世えんせい的な気分になった彼女は、掛け布団を頭からかぶり世界を遮断しゃだんしていた。

(昨晩ミツキは戻ってこなかった... わたしは本当にオリエさんにミツキを取られちゃったの? ミツキなしじゃ、この先わたしは...)

マリカの武器は《水生成》とゲレニカから奪った拳銃。 個人の持つ戦闘力としては流刑地で有数だが、マリカという花の美しさを凌駕するだけのとげではない。 《水生成》と拳銃だけでは、男たちにマリカの肉体をあきらめさせるほどの脅威たりえないのだ。

                 ◇❖◇❖◇

部屋のドアをノックする音がして、マリカは布団の中でビクリとする。 今朝これまでにも何度かノックはあった。 マリカが部屋から出てこないのを不審に思った女使用人たちが様子をうかがいに来たのだ。 しかし、今回のノックは力強い。 明らかに男性のノックだ。

(ミツキが私から去ったのを知って、いよいよ男たちが私を襲いに来たの!?)

ノックからしばらくして声がする。

「マリカさん。 部屋から出てこないと聞きましたが、お体の調子でも?」

パグルの声だ。 マリカはいくらかホッとした。 実務責任者であるパグルとは接する機会が多いので、マリカはパグルをそれなりに信頼していた。

マリカは布団の中から返事をする。

「ほうっておいて頂戴ちょうだい。 気分が優れないの」

ドアの向こうから再びパグルの声。

「困りましたね。 大事な相談があるんですが」

「大事な相談って?」

「派閥の機密ですから、ここではちょっと...」

パグルの背後にはマリカを心配する使用人と護衛チームが勢ぞろい。 機密事項の相談に適した状況ではない。

「応接間で待っててくれる?」

マリカは布団から出ることにした。 今のマリカに派閥のことを気に掛ける余裕はなかったが、どのみち1日じゅう布団の中に引きこもってはいられない。 パグルの到来は丁度いいきっかけだった。

「承知しました」

パグルの声がして、部屋の前から複数の人が去る気配がする。

マリカはベッドから降りて身だしなみを整えると、引き出しに保管していた拳銃を取り出してズボンのお腹の前にギュッと差し込んだ。

最近マリカは拳銃を持ち歩いていなかったが、ミツキを失ったいま拳銃はマリカの命運を左右する極めて重要なアイテムである。 ただし、残弾数はわずか3発。 ゲレニカは予備の弾薬をどこかに貯えていたはずだが、家中を探しても見つからなかった。
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