お嬢様、流刑地に送られ婚約も破棄。でも最強になったら、ザマぁとかどうでも良くなってた

好きな言葉はタナボタ

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第2部

第30話 「オリエとヤマブキ」

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オリエのもとにボス連からハーブの詰め合わせが届いたのは夕刻だった。 オリエが催眠ハーブティーの使用を決意した日の夕刻にはもう材料がそろったわけだ。 ボス連がいかに「マリカの3ヶ条」に悩まされていたかがうかがい知れよう。

届いた詰め合わせハーブと自力で入手したハーブを使って、オリエは催眠ハーブティーを調合した。 あとは飲ませる相手の帰りを待つばかりだが、その人物がなかなか帰ってこない。

「遅いわねえミツキちゃん。 マリカの家に戻ったんじゃないでしょうね?」

マリカを避けるようミツキちゃんにもっと強く言い聞かせておくべきだった。 そう後悔していると、オリエの部屋のドアがガチャリと開いてミツキが戻って来た。

「ただいまー」

「お帰りなさい、ミツキちゃん!」

オリエは部屋に入って来たミツキに駆け寄り抱きしめ、しみじみと繰り返す。

「お帰りなさい」

そうしてミツキを抱きながらオリエは感慨にふける。

(「ただいま」は、自分の家に帰ったときに使う言葉。 だから、さっきの「ただいまー」はミツキちゃんが私の部屋を自分の家と思ってるってことなの)

うっとり目を閉じるオリエの左腕に、ミツキの右肩に乗っていたヤマブキ手乗りドラゴンがのっそりと移動してきた。 ヤマブキがオリエに移動するのはこれが初めて。 ヤマブキはオリエに慣れて来たらしい。 だが、しかし...

「やだっ!」

オリエは勢いよくヤマブキを腕から払い落とした。 ドラゴンの爪ドラゴン・クローが服の上からオリエの美肌に食い込んだのだ。

床に落ちたヤマブキは、ミツキも聞いたことのない恐ろしいボリュームでチーッチーッと盛大に鳴く。

「もうっ! 勘弁してよね!」

服の袖をまくって肌の被害状況を確認するオリエ。

ミツキは床に落ちたヤマブキに駆け寄り拾い上げると、オリエに向かって猛抗議。

「何てことするんだ!」

ヤマブキはミツキの手の上で小さな体を震わせているが、幸いにも身体を傷めてはいないようだった。 実際のところ、竜麟ドラゴン・スケールに包まれたヤマブキのボディーは婦女子ふじょしに腕から払い落とされた程度ではダメージを受けない。

ミツキに怒られたオリエは反射的に言い返そうとした。 悪いのはそのドラゴンよ! お肌に傷が付いちゃうじゃない! でも、思ったままのことを言うとミツキが出て行ってしまう。 だからオリエはぐっとこらえた。

「ごめんなさい。 そのドラゴンがいきなり私の腕にしがみついてきたから」

しかしミツキの怒りは収まらない。

「二度とこんなことをするな!」

オリエはミツキがヤマブキに注ぐ愛情を過小評価していたのだ。 普段ミツキがヤマブキに接する態度がないから。

「本当にごめんなさい。 これからは気を付けます。 ドラゴンちゃんもゴメンね」

オリエが平身低頭へいしんていとうで謝ると、ようやくミツキは機嫌を直し始めた。

「このドラゴンにはヤマブキっていう名前があるんだ」 だから今後は名前で呼びたまえ。

「まあ、素敵な名前ね」 オリエはミツキにお世辞を言って、ヤマブキに再び謝る。「さっきはゴメンなさいね、ヤマブキちゃん。 突然だったから驚いたの」

ヤマブキに謝りながらオリエは決心する。

(ミツキちゃんの記憶をイジり終えたら、この手乗りドラゴンは捨ててやるわ。 これまでもミツキちゃんと抱き合うたんびに間に挟まって邪魔だったの)
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