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第2部
第31話 「いい加減に飲んだらどう?」
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シェア・ハウスの台所で、オリエはお茶の入った湯呑みをミツキに差し出しながら尋ねる。
「ところでミツキちゃん。 帰りが遅かったけど、寄り道でもしていたの?」
言うまでもなく、オリエがミツキに差し出すお茶こそが催眠ハーブティーだ。 催眠ハーブティーは淹れてから時間が経つと効果を失うため、淹れたてを飲まなせなくてはならない。 淹れたてかどうかの目安はお茶の熱さ。 お茶が冷めれば効果を失うと考えて差し支えない。
ミツキはハーブティーが入った湯呑みを受け取りながら答える。
「まあね」
今日ミツキは仕事が終わってから2ヶ所に寄り道をした。 ダンゴムシ天国とマリカの家だ。
「マリカさんの家に行ったんじゃないでしょうね?」
責めるように尋ねるオリエ。 だが彼女の関心はミツキの回答よりも彼が手にする湯呑みにある。 さあ早く。 そのハーブティーが冷めないうちに飲んでちょうだい。 マリカのことはぜんぶ忘れて、私と人生をやり直すの。
「外から眺めただけだよ」
そう言ってミツキはハーブティーの匂いを嗅いだが飲みはせず、湯呑みをテーブルの上に置いた。 彼はちょっとした猫舌だった。 熱い食べ物はOKだが、熱い飲み物はNGだ。
「だめよミツキちゃん!」
湯呑みをテーブルに戻さないで! 「うっかりマリカさんに出会っちゃったらどうするのよ。 せっかくの冷却期間が台無しになっちゃう」 冷める前に早く飲みなさい。 「あなた本当にマリカさんと仲直りする気があるの?」
オリエに叱られてミツキはションボリと下を向いた。
「あるょ?」
「それなら! 二度とマリカさんに会いに行っちゃダメ。 それから」オリエはさりげなくもなく付け足す。「いい加減にそのお茶を飲んだらどう? 冷めてしまうわ」
「冷めるのを待ってるんだよ」
ミツキの意向を知ってオリエは悲鳴を上げる。
「そんなのダメよ!」
オリエの強い調子にミツキは少し驚いた。
「どうして?」
「だって... 熱いほうが美味しいじゃない。 あなたには熱々を飲んで欲しいの。 お願い」 オリエは胸の前で祈るように両手を組み懇願する。「ミツキちゃんが私を愛してくれているのなら、そのお茶が熱いうちに飲んでちょうだい」
ミツキにお茶を飲ませようと焦るオリエは言動のところどころに不審な点が生じてしまっている。 果たしてミツキはその不審点に気付けるだろうか? はたまた催眠ティーを熱々のうちに飲んでしまうのか!?
「ところでミツキちゃん。 帰りが遅かったけど、寄り道でもしていたの?」
言うまでもなく、オリエがミツキに差し出すお茶こそが催眠ハーブティーだ。 催眠ハーブティーは淹れてから時間が経つと効果を失うため、淹れたてを飲まなせなくてはならない。 淹れたてかどうかの目安はお茶の熱さ。 お茶が冷めれば効果を失うと考えて差し支えない。
ミツキはハーブティーが入った湯呑みを受け取りながら答える。
「まあね」
今日ミツキは仕事が終わってから2ヶ所に寄り道をした。 ダンゴムシ天国とマリカの家だ。
「マリカさんの家に行ったんじゃないでしょうね?」
責めるように尋ねるオリエ。 だが彼女の関心はミツキの回答よりも彼が手にする湯呑みにある。 さあ早く。 そのハーブティーが冷めないうちに飲んでちょうだい。 マリカのことはぜんぶ忘れて、私と人生をやり直すの。
「外から眺めただけだよ」
そう言ってミツキはハーブティーの匂いを嗅いだが飲みはせず、湯呑みをテーブルの上に置いた。 彼はちょっとした猫舌だった。 熱い食べ物はOKだが、熱い飲み物はNGだ。
「だめよミツキちゃん!」
湯呑みをテーブルに戻さないで! 「うっかりマリカさんに出会っちゃったらどうするのよ。 せっかくの冷却期間が台無しになっちゃう」 冷める前に早く飲みなさい。 「あなた本当にマリカさんと仲直りする気があるの?」
オリエに叱られてミツキはションボリと下を向いた。
「あるょ?」
「それなら! 二度とマリカさんに会いに行っちゃダメ。 それから」オリエはさりげなくもなく付け足す。「いい加減にそのお茶を飲んだらどう? 冷めてしまうわ」
「冷めるのを待ってるんだよ」
ミツキの意向を知ってオリエは悲鳴を上げる。
「そんなのダメよ!」
オリエの強い調子にミツキは少し驚いた。
「どうして?」
「だって... 熱いほうが美味しいじゃない。 あなたには熱々を飲んで欲しいの。 お願い」 オリエは胸の前で祈るように両手を組み懇願する。「ミツキちゃんが私を愛してくれているのなら、そのお茶が熱いうちに飲んでちょうだい」
ミツキにお茶を飲ませようと焦るオリエは言動のところどころに不審な点が生じてしまっている。 果たしてミツキはその不審点に気付けるだろうか? はたまた催眠ティーを熱々のうちに飲んでしまうのか!?
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