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第2部
第37話 「暴行」
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「ぐっ」
小さく呻き声をあげて床に倒れ伏すマリカ。 彼女の左頬はオリエの手に付いていたオリエの血で汚れ、唇からはマリカ自身の血が流れ出ている。 おまけに鼻血まで垂れ始め、マリカの顔は血だらけだ。
「よくも私の顔をっ!」
強烈なビンタに朦朧とするマリカの腹をオリエは力任せに蹴りつけた。
「うえっ」
マリカの口から声が漏れるが、オリエの怒りは収まらず、蹴りをさらにもう一発。 マリカが腹を抱えてうずくまったところでミツキからストップがかかった。
「やめなよ、オリエ。 もう十分だろ」
ミツキの感覚では、オリエがマリカを平手打ちしたのは頬を銃弾で傷つけられた仕返しとして妥当だった。 その後にお腹を蹴ったのも、まあ仕返しの範囲内。 でも、これ以上は仕返しの範囲を超えている。 その可愛い子は、すっかり戦意を無くしてるじゃないか。
オリエはミツキの声に反応してチラリと彼を見たが何も言わず、床にうずくまるマリカに向き直って暴行を再開する。
「このっ、このっ、よくもっ、私のっ、顔を!」
オリエはマリカを蹴り続ける。 頬から流れ出た血が彼女の肩に落ち、青色のオシャレ服に赤い染みを作るのにも構わずに。
「やめろって言ってるだろ!」
暴行シーンに耐えかねてミツキが金切り声を上げた。 催眠ハーブティーはミツキの記憶を改変したが、彼の感性までは変えていない。 ミツキは女性が暴力を振るわれるのを見たくなかった。
ミツキが叫んだのとほぼ同時に、オリエの部屋のドアがメキメキっと破壊音を立てて開く。 室内の騒ぎが気になって仕方なかったジュニアが、とうとうドアを壊して入って来たのだ。
部屋に押し入って来たジュニアは、オリエを押しのけるようにして床にうずくまるマリカに駆け寄る。
「マリカ!」
激情を発散し終えていたオリエはジュニアに大人しく場を譲り、懐からハンカチを取り出して右頬に当てた。 痛みに顔をしかめるオリエにジュニアが吠える。
「テメエ、オレの女に何してくれてんだ!」
咆哮とも呼べる凄まじい剣幕だったが、オリエはそれをシレっと受け流す。
「その女が悪いのよ。 見てみなさい私の頬を。 その女に銃で撃たれたの」
オリエの言い分を認めたジュニアは何も言い返せず、マリカを床から立たせながらオリエに謝る。
「悪かったな」
マリカの不始末は自分の不始末というわけだ。 そのマリカは意識も怪しい様子でグッタリとジュニアの腕に抱かれている。
毒々しい目つきでマリカを見ていたオリエが言う。
「そういえばさあ、あんた《治癒》が使えるのよね? 私の顔の傷を治しなさい」
オリエを見返すマリカの目には怯えの色。 さっきの暴行でマリカはオリエに対する恐怖心を植え付けられていた。
「早くしな!」
オリエに怒鳴りつけられて、マリカは自分の怪我もそのままに、オリエの傷を治すため《治癒》の呪文を唱える。
「ワーラワン・レストース... メリトース・ダビノス」
《治癒》の呪文が発動し、オリエの頬が白く淡い光に包まれる。 神秘的な魔法が生み出す癒しの光だ。 ミツキもジュニアもエライナも、これまでエリカの《治癒》に癒された者はみな、マリカの《治癒》に愛を感じマリカを愛するようになった。
だというのに...
マリカの《治癒》に癒されるオリエがマリカを見る目に、残忍な光が浮かび始める。 《治癒》を通して流れ込むマリカの感情に反応しているのだ。 いまマリカの心にあるのはオリエに対する慈愛ではなく怯えと恐怖。 それがオリエの加虐心を掻き立てていた。
《治癒》の光が収まるころ、オリエがマリカを見る目は嫌な光を帯びていた。 それはマリカを虐める気の利いた方法は無いかと思案する目だった。
小さく呻き声をあげて床に倒れ伏すマリカ。 彼女の左頬はオリエの手に付いていたオリエの血で汚れ、唇からはマリカ自身の血が流れ出ている。 おまけに鼻血まで垂れ始め、マリカの顔は血だらけだ。
「よくも私の顔をっ!」
強烈なビンタに朦朧とするマリカの腹をオリエは力任せに蹴りつけた。
「うえっ」
マリカの口から声が漏れるが、オリエの怒りは収まらず、蹴りをさらにもう一発。 マリカが腹を抱えてうずくまったところでミツキからストップがかかった。
「やめなよ、オリエ。 もう十分だろ」
ミツキの感覚では、オリエがマリカを平手打ちしたのは頬を銃弾で傷つけられた仕返しとして妥当だった。 その後にお腹を蹴ったのも、まあ仕返しの範囲内。 でも、これ以上は仕返しの範囲を超えている。 その可愛い子は、すっかり戦意を無くしてるじゃないか。
オリエはミツキの声に反応してチラリと彼を見たが何も言わず、床にうずくまるマリカに向き直って暴行を再開する。
「このっ、このっ、よくもっ、私のっ、顔を!」
オリエはマリカを蹴り続ける。 頬から流れ出た血が彼女の肩に落ち、青色のオシャレ服に赤い染みを作るのにも構わずに。
「やめろって言ってるだろ!」
暴行シーンに耐えかねてミツキが金切り声を上げた。 催眠ハーブティーはミツキの記憶を改変したが、彼の感性までは変えていない。 ミツキは女性が暴力を振るわれるのを見たくなかった。
ミツキが叫んだのとほぼ同時に、オリエの部屋のドアがメキメキっと破壊音を立てて開く。 室内の騒ぎが気になって仕方なかったジュニアが、とうとうドアを壊して入って来たのだ。
部屋に押し入って来たジュニアは、オリエを押しのけるようにして床にうずくまるマリカに駆け寄る。
「マリカ!」
激情を発散し終えていたオリエはジュニアに大人しく場を譲り、懐からハンカチを取り出して右頬に当てた。 痛みに顔をしかめるオリエにジュニアが吠える。
「テメエ、オレの女に何してくれてんだ!」
咆哮とも呼べる凄まじい剣幕だったが、オリエはそれをシレっと受け流す。
「その女が悪いのよ。 見てみなさい私の頬を。 その女に銃で撃たれたの」
オリエの言い分を認めたジュニアは何も言い返せず、マリカを床から立たせながらオリエに謝る。
「悪かったな」
マリカの不始末は自分の不始末というわけだ。 そのマリカは意識も怪しい様子でグッタリとジュニアの腕に抱かれている。
毒々しい目つきでマリカを見ていたオリエが言う。
「そういえばさあ、あんた《治癒》が使えるのよね? 私の顔の傷を治しなさい」
オリエを見返すマリカの目には怯えの色。 さっきの暴行でマリカはオリエに対する恐怖心を植え付けられていた。
「早くしな!」
オリエに怒鳴りつけられて、マリカは自分の怪我もそのままに、オリエの傷を治すため《治癒》の呪文を唱える。
「ワーラワン・レストース... メリトース・ダビノス」
《治癒》の呪文が発動し、オリエの頬が白く淡い光に包まれる。 神秘的な魔法が生み出す癒しの光だ。 ミツキもジュニアもエライナも、これまでエリカの《治癒》に癒された者はみな、マリカの《治癒》に愛を感じマリカを愛するようになった。
だというのに...
マリカの《治癒》に癒されるオリエがマリカを見る目に、残忍な光が浮かび始める。 《治癒》を通して流れ込むマリカの感情に反応しているのだ。 いまマリカの心にあるのはオリエに対する慈愛ではなく怯えと恐怖。 それがオリエの加虐心を掻き立てていた。
《治癒》の光が収まるころ、オリエがマリカを見る目は嫌な光を帯びていた。 それはマリカを虐める気の利いた方法は無いかと思案する目だった。
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