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第2部
第40話 「お願いのポーズ〈改〉」
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ジュニアと自分を《治癒》で癒したマリカ。 彼女の頭脳は今、活路を求めて活動を開始していた。 《治癒》で疲労が取れてリフレッシュしたためもあるが、マリカを忘れオリエを恋人と信じ込んでいるはずのミツキがマリカを助けてくれたのが大きい。
(ミツキが何が何でもオリエさんの味方ってわけじゃないなら、今の状況を切り抜けられるかも。 とりあえず大事なのは、ミツキにスピード・プリンセスを維持してもらうこと)
ミツキと2人きりで加速中の今ならオリエに邪魔されずミツキと話ができる。 何を話すかはさておき、とにかくスピード・プリンセス維持の要請が急務。 マリカは自分の両手にミツキの右手を取り、それを自分の胸元に引き寄せた。
マリカの新技「お願いのポーズ〈改〉」が誕生した瞬間である。 通常の「お願いのポーズ」でマリカは自分の両手を胸元に組んでミツキにお願いをするが、〈改〉ではミツキの手を握った状態で両手を胸元で組む。
〈改〉はマリカがスピード・プリンセスが解けるのを防ごうと無意識のうちに編み出した技だが、威力においても通常の「お願いのポーズ」を優に上回る。 スキンシップという重要な要素が ―マリカの意図しない偶然の産物として― 追加されたためである。
「お願いのポーズ〈改〉」を発動しつつ、マリカはミツキの瞳を見つめて一生懸命お願いする。
「お願いミツキ、加速を解かずに私の話を聞いてちょうだい」
マリカにお願いされて、ミツキの可愛い鼻の穴から勢いよく息が漏れる。 フンっ!
「なんだって聞いてやるさ!」 ぜんぶ俺に任せとけ!
マリカの「お願い」にミツキは高ぶっていた。 右手をマリカの両手にしっかりと、かつ優しく包み込まれ、マリカにひたむきな目でお願いされたのだ。 これで高ぶらない男はいない。
「ありがとうミツキ」
ミツキからスピード・プリンセス延長の確約を得て、マリカは思考を開始する。
(どれだけ言葉を尽くしてもミツキが私のことを思い出すとは限らない。 だから改めてミツキと仲良くなるべき。 そう、新たにミツキを口説くつもりで。
(ミツキの性格は変わってないようだから、ミツキを知り尽くし、ミツキにベタ惚れされてたと言われる私なら今この場でミツキを口説けるはず...)
ひたむきな目でマリカの顔を飽くことなく見つめ続けるミツキを前に、マリカはさらに考える。
(この場面で求められるのは、記憶の改変を乗り越えて確実にミツキの心を射止める言葉。 何か、何か無いかしら? ミツキにアピールするものが。 ミツキの心をオリエさんから引き離し私の味方に付ける決定的な材料...)
そうしてマリカが思い至ったのは、ミツキのクイックリングとしての使命だった。
(そうだ! ミツキの子供を産めるのは私だけ!)
気が急くマリカは口早に言う。
「聞いてちょうだいミツキ。 私は朔生まれ。 あなたの子供を産めるの」
それを聞いたミツキの眉がピクリと跳ね上がる。
「君だったのか!」
マリカの予想と違う反応だ。
「どういうこと?」
「ずっとモヤモヤしてたんだよ。 朔生まれの愛しい女性が身近にいたはずだって。 オリエじゃないはずだって」
「まあ、そうだったの」 愛しいだなんて。 ミツキったら。
「マリカがその朔生まれの女性だったんだね。 すると、俺に《治癒》してくれたのもマリカ?」
「あなたが顔役に腕の肉を切り取られたときのことかしら?」
「やっぱりか。 じゃあ、俺に噛みついたのもマリカだったんだ!」
歓喜の声を上げながら、ミツキはマリカに抱き着いて来た。
「愛してるよマリカ!」
「あなたは噛みついてきた女性を愛するのかしら?」
「そんなわけないだろ」
「じゃあ、どうして...」
「マリカの《治癒》だよ」
「《治癒》?」
「愛だよ愛。 そんなことより、俺は記憶をイジられてるの? 俺はトオルじゃなくてミツキなの?」
(ミツキが何が何でもオリエさんの味方ってわけじゃないなら、今の状況を切り抜けられるかも。 とりあえず大事なのは、ミツキにスピード・プリンセスを維持してもらうこと)
ミツキと2人きりで加速中の今ならオリエに邪魔されずミツキと話ができる。 何を話すかはさておき、とにかくスピード・プリンセス維持の要請が急務。 マリカは自分の両手にミツキの右手を取り、それを自分の胸元に引き寄せた。
マリカの新技「お願いのポーズ〈改〉」が誕生した瞬間である。 通常の「お願いのポーズ」でマリカは自分の両手を胸元に組んでミツキにお願いをするが、〈改〉ではミツキの手を握った状態で両手を胸元で組む。
〈改〉はマリカがスピード・プリンセスが解けるのを防ごうと無意識のうちに編み出した技だが、威力においても通常の「お願いのポーズ」を優に上回る。 スキンシップという重要な要素が ―マリカの意図しない偶然の産物として― 追加されたためである。
「お願いのポーズ〈改〉」を発動しつつ、マリカはミツキの瞳を見つめて一生懸命お願いする。
「お願いミツキ、加速を解かずに私の話を聞いてちょうだい」
マリカにお願いされて、ミツキの可愛い鼻の穴から勢いよく息が漏れる。 フンっ!
「なんだって聞いてやるさ!」 ぜんぶ俺に任せとけ!
マリカの「お願い」にミツキは高ぶっていた。 右手をマリカの両手にしっかりと、かつ優しく包み込まれ、マリカにひたむきな目でお願いされたのだ。 これで高ぶらない男はいない。
「ありがとうミツキ」
ミツキからスピード・プリンセス延長の確約を得て、マリカは思考を開始する。
(どれだけ言葉を尽くしてもミツキが私のことを思い出すとは限らない。 だから改めてミツキと仲良くなるべき。 そう、新たにミツキを口説くつもりで。
(ミツキの性格は変わってないようだから、ミツキを知り尽くし、ミツキにベタ惚れされてたと言われる私なら今この場でミツキを口説けるはず...)
ひたむきな目でマリカの顔を飽くことなく見つめ続けるミツキを前に、マリカはさらに考える。
(この場面で求められるのは、記憶の改変を乗り越えて確実にミツキの心を射止める言葉。 何か、何か無いかしら? ミツキにアピールするものが。 ミツキの心をオリエさんから引き離し私の味方に付ける決定的な材料...)
そうしてマリカが思い至ったのは、ミツキのクイックリングとしての使命だった。
(そうだ! ミツキの子供を産めるのは私だけ!)
気が急くマリカは口早に言う。
「聞いてちょうだいミツキ。 私は朔生まれ。 あなたの子供を産めるの」
それを聞いたミツキの眉がピクリと跳ね上がる。
「君だったのか!」
マリカの予想と違う反応だ。
「どういうこと?」
「ずっとモヤモヤしてたんだよ。 朔生まれの愛しい女性が身近にいたはずだって。 オリエじゃないはずだって」
「まあ、そうだったの」 愛しいだなんて。 ミツキったら。
「マリカがその朔生まれの女性だったんだね。 すると、俺に《治癒》してくれたのもマリカ?」
「あなたが顔役に腕の肉を切り取られたときのことかしら?」
「やっぱりか。 じゃあ、俺に噛みついたのもマリカだったんだ!」
歓喜の声を上げながら、ミツキはマリカに抱き着いて来た。
「愛してるよマリカ!」
「あなたは噛みついてきた女性を愛するのかしら?」
「そんなわけないだろ」
「じゃあ、どうして...」
「マリカの《治癒》だよ」
「《治癒》?」
「愛だよ愛。 そんなことより、俺は記憶をイジられてるの? 俺はトオルじゃなくてミツキなの?」
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