大天使の娘です。ある日人間界に落ちてしまいました。

待っていて ～カリンside～

泉へ向かって慌てて駆け出していく幼なじみを見送って、私はシンに呆れまじりの視線を向けた。

「ったく。シンってホント、ヘタレよねえ・・・」
「う・・・」

幼なじみの3人は、私から見ても美形だ、それも超がつく。
カイはそそっかしくて擦り傷が絶えないけど、顔立ちは整っていて、なんというか、野性味あふれるイケメンってことで女の子から大人気。
シンはクールで頭がいいけど、幼なじみの私達以外には辛らつに当たって、心を許さない。
ついたあだ名は「氷の王子様」。
ま、私からすれば笑いのネタにしかならないけど。
カイは子どもっぽくて異性として考えることなんてできないし、シンにはそもそも昔から好きな人がいる。

「エリンが他の誰かに横取りされる前に、さっさと告白しなさいよね、このヘタレが。」

エリンは銀色の髪に、金色の瞳が神秘的な美少女。
性格もおだやかで優しいから、天界中の男の子たちの憧れの的。
想いを寄せる男の子も少なくないんだけど、シンやエル様が牽制してるから今のところ告白するような勇者もいない。
シンはエリンに好意を寄せている。
初恋をこじらせているシンだけど、根はやさしいし、エリンのことをちゃんと分かってあげている。
だから、シンならエリンの相手として認めてあげてもいいと思ってるのに。

「べ、別に僕はまだ、告白なんて・・・第一、エリンが戸惑うだけだ。」

シンの好意は結構バレバレなのに・・・

「シンも大変だよなー。何せ、相手があのエリンだもんな。」

エリンが鈍いのだ、ひたすら鈍い。
見ていてもどかしくなるのだが、ここは見守るしかない。
そう思っていたら、遠くから悲鳴が聞こえた。

「エリン！？」

即座に立ち上がって神力を練り上げる。
カイもシンもとっさに反応していて、パアッと天使特有の翼が三対並んだ。
天使は神力を使うと翼を出して飛ぶことができるのだ。
翼を使うと足を使うよりもずっと早く移動できる。
そうして全速力で泉の方へ飛んでいった私達は、信じられないものを目にした。

「何、これ・・・」

自分の声が震えているのが分かる。

「地面が、割れてる・・・？」

のどかだった野原の一角が、大きく割れていて、暗い闇が顔を覗かせていた。

「まさか・・・エリン！？」

割れ目に向かおうとする私とカイ。

「待て！」

そんな私達を止めたのは、シンだった。
なぜ止めるのかと怒鳴ろうとしたとき、シンの顔色の悪さに気づいた。
真っ青な顔をして、唇をかみしめている。
ああ、シンも辛いんだ・・・
そう、だよね・・・エリンがいなくなって、シンが平気なはず、ないのに。

「まだ、エリンがここから落ちたと決まったわけじゃない。エル様に、会わないと。」
「あ・・・」

シンの言葉に、自分が今、しなければならないことに気づく。
そうだ、感情に身を任せちゃ、ダメだ。
頷いて、3人でエル様と連絡をとるために翼をはばたかせた。

待っていて、エリン。
絶対絶対、助けるからね。