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ここはどこですか
しおりを挟むトントントン・・・
ドアがノックされる音。
あ、カリンたちでしょうか。
私、寝坊してしまったようです。
早く、扉を開けないと・・・
「はい、今、開けますね・・・」
重いまぶたを持ち上げて、ノロノロと身を起こす。
「・・・え?」
見覚えのない小さなベッドに、簡素な部屋。
私の部屋ではありません。
トントン・・・
またドアがノックされて、私はハッとしました。
もしかすると、父さまやカリンたちかもしれません。
慌てて部屋を横切り、ドアを開けます。
「父さま?カリン?」
名を呼びながら、外の様子を伺うと、そこには見知らぬ女の人が立っていました。
「ああ、気がついたのね、よかったわ。」
やわらかに笑うその女性は優し気で、悪い人ではなさそうです。
でも、なぜか胸がざわつくのです。
何かが違います、何かが・・・
もやもやと正体のつかめない違和感を感じつつ、私は疑問を口にしました。
「あの・・・ここはどこですか?」
父さまたちは、一体どこにいるのでしょう。
「ここは神殿よ。あなたはこの神殿の前で倒れていたの。」
「しん、でん・・・?」
それは、何ですか・・・?
聞き返そうとした時、頭の中に記憶が蘇りました。
そうです、私、ピクニックの途中で地面が割れて・・・
暗闇の中をどこまでも落ちていったのです。
翼を出そうにも、制御装置であるペンダントをかけていたので神力を使えず。
「まさか、ここ・・・」
人間界!?
さっき感じた違和感の正体は、これだったのです。
この女の人は、天使じゃありません・・・
人間です!
貪欲で、傲慢で、自分勝手。
天界で噂されていた人間の性格を思い出し、恐怖で胸が冷たくなりました。
「名前と年を教えてくれるかしら。」
突然身を固くした私をどう思ったのか、女の人はいたわるようにポンポンと背中をたたいてきました。
「エリン、といいます。14歳です・・・」
かすれた声がでて、動揺します。
天使だと、知られてはいけません。
なんとなく、そう直感しました。
「そう、エリンね。私はこの神殿に勤める神官の一人、ミーシャよ。見たところ身よりもなさそうだし、この神殿の前に倒れていたのも神のお導き。ここで神官見習いの一人として暮らすといいわ。」
私が、ここで暮らす・・・?
本当は、今すぐにでも天界に帰りたいです。
でも、方法が分かりません。
なら、帰れるようになるまで、ここで暮らした方がいいのかもしれません。
それに、人間とはいえ、ミーシャさんは悪い人ではなさそうです。
「よろしく、お願いします。」
不安を追い払うようにギュッと拳を握りしめ、私は深々と頭を下げました。
父さま、カリン、シン、カイ・・・
待っていてください、必ず帰ります。
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