大天使の娘です。ある日人間界に落ちてしまいました。

気づいたことがあります

ミーシャさんはその後、私に神殿のことを一通り説明してくれました。
神殿は、大きな町に1つずつ置かれていて、この神殿もまた、ラーンタウンという大きな町に置かれているものらしいです。
ここには神官が３人と、神官見習いが20人ほどいるようです。

神殿とは、神様に祈りを捧げる場所。
私達の朝は早く、朝の祈りから始まります。それから、質素な朝食をとり、神官見習いが神殿を掃除します。
そしてそれが終わると、町の人がやってきます。
神官が町の人にお説教をして、私達もそれを聞きます。
あと、歌ったりもします。
神様に捧げる歌を、「讃美歌」というそうです。
歌うのはとても気持ちよくて、好きです。
空いた時間には聖書を読んだり、勉強をするのです。
算術などは既に天界で学んだことですが、歴史は天使のものとはまるきり違うので、とても新鮮です。

「エリンー！ミーシャ様があなたを呼んでるわよ。」
「あ、リリー。どこに行けばいいんですか？」

新しい生活にも慣れてきて、１つ、気づいたことがあります。
人間は、みんながみんな、悪い人ではない、ということです。

「聖堂だって。神官様が3人共そろってたわ。一体どうしたんでしょうね。」

リリーは私の新しい友達です。
神殿での生活に戸惑っていた私に、優しくいろんなことを教えてくれました。

「とりあえず、行ってきますね。教えてくれて、ありがとうございました。」
「どういたしまして、行ってらっしゃい。」

手を振ってリリーと別れ、聖堂に向かいました。
ここにいる人たちは、みんな優しくて親切です。
一体なぜ、人間は貪欲で傲慢、自分勝手な種族だなんていう噂があるのか不思議に思うくらいです。

この神殿は居心地が良くて、素敵な場所です。
でも・・・やっぱり、私は天界に早く帰りたいのです。
どんなに素敵な場所でも、天界とは違います。
父さまもいませんし、カリンたちもいません。
早く、みんなに会いたいです。
・・・何より、私が人間界に落ちてしまった後のみんなのことを考えると、胸がギュウッと締め付けられるように痛んで、どうしようもない気持ちになります。
きっと、みんな心配しています。
特に、父さま。
あの家で1人っきりになってしまって、今どんな気持ちなのでしょうか。
元気、でしょうか・・・
・・・やっぱり、早く帰りたいです。

そう思うのに、まだ天界に帰るための方法の手がかりさえ手に入れられていない自分が悔しいです。

まだ何も行動できていない自分が、もどかしいです。