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やらかしました
しおりを挟むああ・・・なぜこうなってしまったんでしょうか・・・
目の前にいる同い年くらいの少年を見つめながら、私は回想という名の現実逃避に走ります。
「俺と共に城に来い。」
金の髪に碧の瞳、整った顔立ち。
まさにこれぞ王子様といった男の人が私を引き寄せたまま放しません。
ああ、本当に、どうしてこうなったのでしょう・・・
***
神力とは、神が天使に与えた神様の力に一部を差します。
天使は神力をつかって飛ぶこと、守ること、癒すことができます。
守護の力や、治癒の力が、神力なのです。
天使に何かを傷つけることはできません。
ただひたすらに守る。
それが天使の特徴です。
もちろん私も例にもれず、恐怖から神力の暴走なんてことをしてしまいましたが、その力は誰も傷つけませんでした。
ただ私を男たちから守り、彼らを拘束しただけ。
「この人たち・・・どうすればいいんでしょうか。」
「放っておけばいい。」
「ヒャアッ!?」
ぽつりとこぼした独り言に返事が返ってきて、私は文字通り飛び上がりました。
・・・翼を出して。
「・・・あ。」
やらかしました。
天使だって、バレちゃいます。
「っ、ちょっと待て!」
「え?あっ・・・!」
焦ってそのまま逃げようとした私の腰を、彼が捕まえました。
そのまま引き寄せられて、私は逃げるすべを失ってしまいました。
そうして冒頭の状況に至るわけです。
***
「と、とりあえず、放してください。」
「嫌だ。」
「い、嫌って・・・」
「だって、放したらお前は逃げてしまうだろう。」
当たりです、逃げます。
そう口に出すわけにもいかず、私は今困っています。
父さま以外の男の人と、こんなにくっついたこと、ありません。
「うう・・・そもそもなんであなた方、ここにいたんですか。」
そう、あなた方、です。
この人は1人じゃなかったんです。
いきなり抱きしめられた後、木の陰草の陰からゾロゾロと騎士のような人たちがでてきたのは軽く恐怖でした。
そのまま私をさらおうとした男2人を捕縛してくれたのは嬉しかったのですが。
「ここを人さらいが通っていると聞いてな。ここは王都からも近いし、見過ごせなかったので少し張っていたのだが、案の定すぐにお前を乗せた荷車がやって来たんだ。まあ、俺たちが出る間もなかったが。」
ちらりと視線を向けられて、私は条件反射で下を向いた。
ああ、本当にどうしましょう。
絶対これ、私が天使だとばれていますよね。
「お前の正体はわかっている。」
ほら、やっぱり!
やっぱりバレてます!
今から言われるんです、きっと。
お前は・・・
「お前は、聖女だろう。」
そう、聖女だろうって・・・え?
「聖女・・・?」
予想外のことを言われて、私はポカンとしてしまいました。
えっと、聖女って、奇跡の人のことですよね?
私、聖女になったつもりはないんですが・・・
「い、いえ、私は・・・」
「ごまかしても無駄だ、ここまで聖女の力を見せられたらもう聖女だということははっきりしている。」
聖女じゃありません、と言おうとしたのですが、きっぱり否定されました。
本当に、聖女ではないのに・・・
でもここで否定して、じゃあ何だ、と聞かれても困りますし・・・
ここは、肯定しておいた方がいいのでしょうか。
いやでも、聖女は噂を聞く限りかなり珍しい存在。
ここは否定も肯定もしない方がいい気がします。
「えっと・・・わかりません。」
とりあえず、知りませんで通します!
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