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一難去ってまた一難、です

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「そもそもあなた、誰ですか・・・?」

相手の勢いが強くて思わず流されそうになりましたが、相手は初対面。
体を拘束してくる初対面の男・・・つまり、不審者です!
ここは冷静に逃げ道を探らなければ・・・
しかし先程と違い、この男の仲間は多いです。
しかも多分、戦いの専門家の騎士。
・・・あれ?騎士ってことは、悪い人じゃ、ないんですっけ?

「俺を知らないのか?では改めて、この国の第2王子、レオン・ジュセ・エルファランドだ。以後お見知りおきを、聖女。」
「第2、王子・・・え?」

えっと、王子って、あれですよね?
この国、エルファランドの王様の、息子・・・

「わわわわわわわわわわわ~~~~!?」

すごく偉い人、です!
慌てすぎて言葉にならない声がでます。
天界と違って、人間界には身分があります。
王族は、その身分の中で一番偉い人たち・・・
逆らえば、首を切られることもあるそうです。
まずい、まずいです。
一難去ってまた一難、です。

「す、すみません!そのように偉い人だとは露知らず・・・えっと。」
「別に謝罪は不要だ。お前は聖女だから、王族と同じくらい強い権力を持っている。」

聖女って、王族と同じ扱いなんですか・・・
待って下さい、じゃあ私が聖女ではないと知られてしまったら、私は打ち首・・・?
ゴクンと唾を飲み込みます。
ここで死ぬわけには、いきません。
先程聖女であるか分からないと言った以上、自分が聖女であるとは言わずに、それでいて周囲に私が聖女だと思い込ませなくては。
まあ、今のところこの王子様は私が聖女だと信じ切っているようなので一安心、ですね。

「とりあえず、お前は俺と共に王都にある城に来なければいけない。」
「えっと、それは、なぜ、でしょうか。」

なぜ決定事項のように私が城に行くなんて決まっているのでしょう・・・
百歩譲って聖女だと思われている以上、神殿行きだと思うのですが。
そう思って首を傾げると、王子様は不思議そうに私を見ました。

「なぜって、聖女は王族預りになるから、城で暮らすに決まってるだろう。そんなことも知らないのか?聖女は随分と自分のことに関して疎いな。」
「え・・・王族預り?」

王子様に聞いた所、確かに聖女は神殿内の地位の1つだが、神殿は遠い昔に王族に永遠の忠誠を誓っており、それ以降、現れた聖女は王族と国の安寧を願うために城で暮らすことになったそうです。
王族と並ぶ強い権力を持って。
つまり私も、城で暮らし、王族と国の安寧を願い、祈るそうです。

「よし、分かったようなら、さっさと城に行くぞ。きっと皆驚き、そして喜ぶ。」

不遜に微笑んだ王子様は、私を抱き上げたまま、スタスタと王家の紋章が施された豪華な馬車に向かって歩き始めました。

「えっ、ちょっ、お、お城ですか!?待って下さい!王子様!」
「レオンでいい。」

あまりの急展開に思わず声を上げましたが、王子様・・・ではなくレオン様は全く聞いてくれず、マイペースに呼び名の変更を要求してきました。

人間界に落ちてから1年。
私、どうやらお城に行くみたいです・・・
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