5 / 9
5
しおりを挟む
……本当はミキねぇに台所を使わすのは、避けたいところだった。
不器用すぎるミキねぇの料理する姿は、見てて不安になってくる。
火傷するんじゃないか、包丁で指を切ってしまうんじゃないか……見てるこっちが怖いくらい危なっかしいのだ。
だからこの同居生活でも、私が殆ど料理を作っていた。
ーーそれでも、たまにはミキねぇに甘えるのも悪くないかも。
キッチンで作業する音が聞こえ始めると、私はそう思えてきた。
私はその音を聞きながら、ゆっくりと暗い闇へ落ちていった。
私は洋服を脱ぎ、それを洗濯機に放り込むと、浴室へ向かうために後ろを振り返った。
その途中、洗面所に誂えらた鏡が目に入った。
私はそこに映る自分の姿にギョッとした。
私の全身はまるで蓮の実ーー確か花托と言ったかーーが縫い付けられたように、小さなぶつぶつの穴が無数に開いていた。
私は鏡から一歩遠ざかり、恐怖に髪をかきむしるように頭を押さえた。
ずるっ。
私は自分の髪の毛の、異常な程の手応えのなさに、思わず手を離した。
そしてその掌を見下ろす。
無数の穴の開く掌には、真っ黒い私の髪の毛が大量に絡んでいた。
私は再び鏡に目を向ける。
髪は右半分が抜けていて、その頭皮の毛穴がもれなく花托になっていた。
はらり。
残った髪の毛が少しずつ落ちていく。
その下にも同様のものがくっついている。
私はついに丸坊主になった。
全身には相変わらず花托が焼きついている。
私は気持ち悪さを覚えながら、それ以上にこのグロテスクな物体を見つめていたい欲求に苛まれた。
ただ鏡に映る、気色の悪い物の前で硬直していた……。
不器用すぎるミキねぇの料理する姿は、見てて不安になってくる。
火傷するんじゃないか、包丁で指を切ってしまうんじゃないか……見てるこっちが怖いくらい危なっかしいのだ。
だからこの同居生活でも、私が殆ど料理を作っていた。
ーーそれでも、たまにはミキねぇに甘えるのも悪くないかも。
キッチンで作業する音が聞こえ始めると、私はそう思えてきた。
私はその音を聞きながら、ゆっくりと暗い闇へ落ちていった。
私は洋服を脱ぎ、それを洗濯機に放り込むと、浴室へ向かうために後ろを振り返った。
その途中、洗面所に誂えらた鏡が目に入った。
私はそこに映る自分の姿にギョッとした。
私の全身はまるで蓮の実ーー確か花托と言ったかーーが縫い付けられたように、小さなぶつぶつの穴が無数に開いていた。
私は鏡から一歩遠ざかり、恐怖に髪をかきむしるように頭を押さえた。
ずるっ。
私は自分の髪の毛の、異常な程の手応えのなさに、思わず手を離した。
そしてその掌を見下ろす。
無数の穴の開く掌には、真っ黒い私の髪の毛が大量に絡んでいた。
私は再び鏡に目を向ける。
髪は右半分が抜けていて、その頭皮の毛穴がもれなく花托になっていた。
はらり。
残った髪の毛が少しずつ落ちていく。
その下にも同様のものがくっついている。
私はついに丸坊主になった。
全身には相変わらず花托が焼きついている。
私は気持ち悪さを覚えながら、それ以上にこのグロテスクな物体を見つめていたい欲求に苛まれた。
ただ鏡に映る、気色の悪い物の前で硬直していた……。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
0
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる