車輪になった妹

奈波実璃

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私は小学校から高校までを、徒歩で通える地元の学校に進学していった。
大学は実家から敢えて離れた場所にあるところを受験して、寮に入った。
旅行にも殆ど行ったことがない。
修学旅行でさえ、両親から電車に乗るなら行くなと言われた。
幸いにも、高校の修学旅行は現地に飛行機で向かい観光バスでの移動が主だったし、班別行動の時はそんな我が家の不可思議な事情を鑑みたクラスメイトが、電車に乗らない日程を組んでくれたけれど。

それ故に私が電車に乗った回数は、人生で数える程度だった。
しかし就職先は、どうしても電車に乗らなければならない。
両親はご覧のように電車を忌避しており、私もその気持ちはよく分かっていた。
だから出来るだけ電車を使わず通える就職先を探したけれど、この御時世、選択肢は少ない。
仕方なく私は電車で20分程かかる会社に就職した。


私は、妹を死なせたあの電車に乗るのだ。
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