車輪になった妹

奈波実璃

文字の大きさ
2 / 7

しおりを挟む
私の五歳下の妹・未知子は、二歳にして小児癌を患った。
お医者様曰く、小児癌は決して治らない病気ではないらしいけど、私達一家においては涙を堪え続ける日々が続いた。
未知子自身も、辛い治療に耐えなければならず、我が家は常に暗雲立ち込めるといった風だった。
私も夜遅くまで話し込み、時に涙を流す両親を毎日のように見てきたし、たまに未知子を見舞ってはほんの少し前まで走り回っていた未知子が治療の副作用でぐったりしている様子に幼心を痛めていた。
何時かに聞いた、副作用の辛さにより発せられた擘くような泣き声叫び声は、今でも私の耳に残っている。

そんな未知子の苦しみを和らげようと、私は彼女に沢山の贈り物をした。
贈り物といっても、殆ど私の、そして未知子がいずれ読む予定であった本を運ぶというものだった。
毎日家で未知子の喜びそうな本を選び、両親に連れられて病院へ行くのだ。
未知子はそんな私を見るたび、はしゃぎながら迎えてくれた。
私も嬉しくなって、未知子に読み聞かせたりもした。
未知子は私を通して、世界を知った。
『パンダに会いたい』
『アメリカに行きたい』
『大きな船に乗りたい』
『お腹いっぱいホットケーキが食べたい』
未知子の『やりたい』は日増しに増えていった。
今にして思えば、それが彼女にとっていいことだったかは分からない。
彼女の外の世界に対する思いを、ただ募らせさせただけだったのではないか。
けれど私はただ、未知子を笑顔にしたい。
その一心で彼女に寄り添っていたのだ。

しかしそんな日々も、無事に終わりを告げた。
未知子や両親の艱難辛苦も遂には報われたのだ。
未知子の五歳の誕生日が少し過ぎた頃に、彼女の癌治療が終わった。
両親の涙を浮かべた笑みと、未知子の無垢な笑顔は束の間の私の救いになった 。

本当に、それは束の間だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?

つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。 平民の我が家でいいのですか? 疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。 義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。 学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。 必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。 勉強嫌いの義妹。 この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。 両親に駄々をこねているようです。 私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。 しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。 なろう、カクヨム、にも公開中。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

姉妹差別の末路

京佳
ファンタジー
粗末に扱われる姉と蝶よ花よと大切に愛される妹。同じ親から産まれたのにまるで真逆の姉妹。見捨てられた姉はひとり静かに家を出た。妹が不治の病?私がドナーに適応?喜んでお断り致します! 妹嫌悪。ゆるゆる設定 ※初期に書いた物を手直し再投稿&その後も追記済

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

【完結】精霊に選ばれなかった私は…

まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。 しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。 選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。 選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。 貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…? ☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。

わたくしがお父様に疎まれている?いいえ、目に入れても痛くない程溺愛されております。

織り子
ファンタジー
王国貴族院の卒業記念パーティーの場で、大公家の令嬢ルクレツィア・アーヴェントは王太子エドワードから突然の婚約破棄を告げられる。 父であるアーヴェント大公に疎まれている―― 噂を知った王太子は、彼女を公衆の面前で侮辱する。

処理中です...