深淵の教会にて

奈波実璃

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第四章~闇の中で聞いた音~

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高橋は布団から飛び起きた。
 自分でも驚く程に勢いよく。
 そしてさらに驚くことに、初冬の寒々とした部屋で眠っていたというのに、大量の寝汗をかいていた。

 窓から空を見上げた。
 空はいまだ光り一つ見えない濃紺を湛えている。

『……とう……さ……なぜ……か……を……』
 先ほどまで聞こえていた音が脳内で反響する。

 ……あれは本当に『聞こえていた』ものなのか?
 ふと、そんな疑問が浮かぶ。
 あの叫び声には覚えがあったのだ。
(そんなはずは……いや、しかし……)
 高橋の額に一筋汗が流れた。

 ふと、居間で寝ている神父と名乗る男の存在を思い出した。
(もしかしたら、ヤツも聞いていたかもしれぬ……)
 もしも幻聴でなければ、あの男も聞いていたかもしれない。

 高橋は些細な望みを胸に布団から起き上がると、足音を忍ばせて居間へ向かった。
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