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第2章 いざ異世界
1、オミの国
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ざわつく喧騒に顔をあげた百花は、一瞬自分の目を疑った。
(なに、ここーー!? わたしの部屋じゃない!!)
どこか異国の酒場。そういう表現がちょうど良いような賑やかな場所だった。カウンターには体格の良い男性が並んで座って、ジョッキを楽しそうに傾けている。いくつかあるテーブルも満席で、その間をウエイトレスが忙しそうに働いていた。
「ーーー!」
立ちすくむ百花に気づいて、店の奥からエプロン姿のふくよかな女性が出て来た。栗色の髪の毛を頭のてっぺんでお団子に結んでおり、瞳の色は緑色。年齢は四十代後半といったところだろうか。何かしら話しかけられているのはわかるのだが、何て言っているのかまるでわからない。
これと似たことがかつてもあったことを思い出す。
(もしかして、ここってカイリの世界!?)
確か、オミの国というはずだ。
あわててあたりを見渡すが、カイリらしき人物はいない。そうこうしているうちに女性が百花の目の前に来て、また何かを話しかけた。
「あ、あのわたし、言葉わからなくて……」
しどろもどろにジェスチャーする百花を見て、女性は顎に手をあてて考えるそぶりをする。その後で何かを思いついたかのか、百花に笑いかけて手のひらを出すよう促した。
言われるまま両手の平を女性に見せると、彼女は何事かつぶやきながら指で百花の手のひらをなぞる。その軌跡が一瞬だけ淡く光り、これはきっと魔法だと直感した。
「どうだい?」
「!」
光の名残りを見つめていた百花は、鮮明な言葉に勢いよく顔を上げた。
女性は笑顔で「わかるだろう?」と百花にたずねる。
「はい! 全然言葉がわからなかったから、助かりました!」
「だろうね。だってアンタ、異界渡りしてきたんだろ?」
「や、やっぱり……?!」
(そう……だよね。カイリがわたしの世界に来たのとは逆のことが、起こったんだ)
女性はふくよかな体をゆらして「詳しい話は奥でしようか。ついておいで」と体をひるがえした。
案内されたのは店の奥にある個室。六畳くらいの空間の真ん中に丸テーブルと椅子が四脚置いてある。それ以外の家具は何もなく、窓も小窓があるだけという簡素な部屋だった。ただ壁には世界地図が貼ってあり、一見しただけで百花の知っている世界地図とは違うのがわかった。
「とりあえずその格好じゃ寒いだろうから、これ使いな」
深緑色のブランケットを渡され、確かにここは肌寒いと百花は身震いした。百花がボーダーの長袖カットソー1枚なのに対して、そういえば店内にいる人たちは皆セーターやベストを着込んでいた。きっとこちらの今の季節は冬なんだろう。
「今ちょうど店が混む時間帯でね。しばらくここで待っててくれるかい? 落ち着いたら戻って来るから」
店内の喧騒を気にしながらせわしなく出ようとする女性に、これだけはと百花は追いすがった。
「あの! このあたりにカイリって男の人いますか!? 見た目は少年で、でも十八歳で……」
「カイリ?」
「そう! えーと、背はこれくらいで、髪は黒くてふわっとしてて、目が青くて……」
女性は百花の説明に目を細めて考える仕草をした後で「……そうだね、多分知ってるよ」とうなずく。
「異界渡りしてきたのに、カイリを知ってるなんて、どういうことだろうねぇ」
おっとりと呟き、さらに女性は考えを深めようとしていたが「オウル! そろそろ来てー!」という扉の向こうからの声にハッとしたようだった。呼んでいるのはウエイトレスだろう。
「あぁ、ごめんよ。行かないと。あたしはオウルっていうんだ。あんたも何がなんだかわからないとは思うけど、いい子にまってるんだよ」
人好きのする笑顔で言い置いて、女性──オウルは出ていった。
(カイリを知ってる人がいた! じゃあやっぱりここはオミの国なんだ……)
まさかカイリと同じことが自分の身の上に起こるとは思わなかった。百花の身にも『ニアの気まぐれ』が降りかかったということなのだろうか。
とにかく詳しいことは、オウルが戻ってこないと始まらない。
けれど、カイリに二年ぶりに会えるかもしれないと思うと、百花の興奮状態はいつまでもさめなかった。
◆
その後、ドアの向こうのざわめきが落ち着いてきたなと思った頃合いで、再びオウルがやってきた。暖かいお茶を百花に差し出し「まあ飲みながら話そうか」と腰を落ち着ける。そして、オウルは百花がいるこの場所について教えてくれた。
ここは百花が予想した通りオミの国だった。百花の部屋とつながったこの酒場は、オミの国の首都ハイネの街はずれに位置していて、このオウルが女主人を勤めているそうだ。
魔法が当たり前のように人々の暮らしに根付き、北方の国境付近では現在帝国と交戦中。
カイリが話していた通りの世界だった。
「そうかい、カイリが異界渡りをねぇ……」
百花の話を聞いても、オウルはそれを作り話だとは否定しなかった。そのまま全てを受け入れて「あんたも大変だったねぇ」といたわりの眼差しを向けてくれる。あたたかな情に包まれて、百花は泣きたくなった。
自分が初めてカイリの告白を聞いた時を思い出す。異世界の話全てが嘘だとまでは思わなかったけれど、信じ切れるわけでもなかった。
けれど目の前にいるオウルは、百花の話をすべて鵜呑みにしてくれているようだ。
「全部信じてくれるんですか?」
おずおずとたずねると、オウルは「ああ」とこともなげにうなずく。
「あんたに魔力がないのは店に入った時にすぐわかったよ。あたしはこれでも昔は国お抱えの魔導師として活躍していた頃があったから、人が発する魔力には敏感なのさ。この世界で魔力がゼロの人間なんていない。それにその格好。そんな珍しい洋服見たことないよ。まあそういう色々なことを総合すると、あんたは別のどこかから来たってことになるだろう?」
オウルは目を細めて百花を眺めた。ボーダーのカットソーにスキニージーンズ姿の百花は、珍しさ全開だそうだ。
聞けば、こちらの洋服は無地のものばかりで、デニム素材もないし、身体にフィットするようなシルエットの洋服もない。確かに店にいる人たちは皆だぼっとしたズボンを履いていた。カイリもそういえばあんな感じのズボンだった気がする。
「異界渡りは、いくつかの例が記録として残されているんだ。今度取り寄せて読み込んでみるよ。あたしもさらっとしか知らないからね。──あとカイリだけど、今ちょうど国境に行ってるんだ。馬でも七日かかる場所だし、ついこの間出立したばかりだから、しばらくはこっちには戻らない」
「そ、そうなんですか……」
百花はがくりと肩を落とした。
オウルがカイリと知り合いだったから、きっとすぐに会わせてもらえるだろうとどこかで期待していた。
(そう甘くないってことか……)
「……あれ、でも国境って、さっき交戦中って言ってたところですよね。ていうことはカイリも戦ってるってことですか!?」
まさか、せっかく百花がこっちに来たというのに、カイリ自身が戦死なんてことがあったら……。
(そんなことがあったら、もうどうしたらいいかわからないよ!!)
焦り出した百花をオウルは微笑んで制した。
「大丈夫。カイリは兵士と言ってもちょっと特殊でね。前線に出る歩兵じゃないんだ。今回は主に偵察任務だって話だから、そう命の危険はないと思うよ。安心しな」
「十分危険そうな気がするんですけど……」
戦争を経験したことのない百花には、その任務の危険度がまるで想像できない。偵察ってことは影からそっと伺って終わるようなものなんだろうか。そこで敵に見つかったりしたら、戦闘になったりしてーー!?
(だめだ! 心配しはじめるとキリがない!)
今こうしてうだうだしていたって、何の役にもたたない。必死に言い聞かせて、無理やりに百花は意識を切り替えることにした。
「あの、オウルさん」
「オウルでいいよ。堅苦しいのは苦手だから」
「あ、はい。じゃあ……オウル。わたし、カイリに会いたいんです。その国境の任務が無事に終わったとして、カイリがこっちに帰ってきた時、どうすれば会えるんでしょう?」
百花の表情に何かの意味を感じ取ったのか、オウルは優しく微笑んだ。
「会えるさ。あの子は任務が終わったらいつもここに来るからね」
「!! そうなんだ!!」
だとしたら、百花のとるべき道は一つしかない。
「お願いします! わたしをここにおいてください! お店の手伝いとか、家事とか、できること何でも手伝いますから!」
勢いよく頭をさげると、オウルは「もちろんさ」とのんびりした声で答えた。
「そのつもりだったよ。こういう縁は大体何かの意味があるから大事にしないとね。店の二階に空き部屋があるから、そこを使うといいよ」
「ありがとうございます! よろしくお願いします!」
立ち上がって再度頭を下げる。トントン拍子で衣食住が確保できた幸運に、胸がふるえる。
(カイリ……無事に帰って来てね! それまでにわたし、この国に慣れてみせるから!)
固い決意とともに、百花のオミの国での暮らしが始まったのだった。
(なに、ここーー!? わたしの部屋じゃない!!)
どこか異国の酒場。そういう表現がちょうど良いような賑やかな場所だった。カウンターには体格の良い男性が並んで座って、ジョッキを楽しそうに傾けている。いくつかあるテーブルも満席で、その間をウエイトレスが忙しそうに働いていた。
「ーーー!」
立ちすくむ百花に気づいて、店の奥からエプロン姿のふくよかな女性が出て来た。栗色の髪の毛を頭のてっぺんでお団子に結んでおり、瞳の色は緑色。年齢は四十代後半といったところだろうか。何かしら話しかけられているのはわかるのだが、何て言っているのかまるでわからない。
これと似たことがかつてもあったことを思い出す。
(もしかして、ここってカイリの世界!?)
確か、オミの国というはずだ。
あわててあたりを見渡すが、カイリらしき人物はいない。そうこうしているうちに女性が百花の目の前に来て、また何かを話しかけた。
「あ、あのわたし、言葉わからなくて……」
しどろもどろにジェスチャーする百花を見て、女性は顎に手をあてて考えるそぶりをする。その後で何かを思いついたかのか、百花に笑いかけて手のひらを出すよう促した。
言われるまま両手の平を女性に見せると、彼女は何事かつぶやきながら指で百花の手のひらをなぞる。その軌跡が一瞬だけ淡く光り、これはきっと魔法だと直感した。
「どうだい?」
「!」
光の名残りを見つめていた百花は、鮮明な言葉に勢いよく顔を上げた。
女性は笑顔で「わかるだろう?」と百花にたずねる。
「はい! 全然言葉がわからなかったから、助かりました!」
「だろうね。だってアンタ、異界渡りしてきたんだろ?」
「や、やっぱり……?!」
(そう……だよね。カイリがわたしの世界に来たのとは逆のことが、起こったんだ)
女性はふくよかな体をゆらして「詳しい話は奥でしようか。ついておいで」と体をひるがえした。
案内されたのは店の奥にある個室。六畳くらいの空間の真ん中に丸テーブルと椅子が四脚置いてある。それ以外の家具は何もなく、窓も小窓があるだけという簡素な部屋だった。ただ壁には世界地図が貼ってあり、一見しただけで百花の知っている世界地図とは違うのがわかった。
「とりあえずその格好じゃ寒いだろうから、これ使いな」
深緑色のブランケットを渡され、確かにここは肌寒いと百花は身震いした。百花がボーダーの長袖カットソー1枚なのに対して、そういえば店内にいる人たちは皆セーターやベストを着込んでいた。きっとこちらの今の季節は冬なんだろう。
「今ちょうど店が混む時間帯でね。しばらくここで待っててくれるかい? 落ち着いたら戻って来るから」
店内の喧騒を気にしながらせわしなく出ようとする女性に、これだけはと百花は追いすがった。
「あの! このあたりにカイリって男の人いますか!? 見た目は少年で、でも十八歳で……」
「カイリ?」
「そう! えーと、背はこれくらいで、髪は黒くてふわっとしてて、目が青くて……」
女性は百花の説明に目を細めて考える仕草をした後で「……そうだね、多分知ってるよ」とうなずく。
「異界渡りしてきたのに、カイリを知ってるなんて、どういうことだろうねぇ」
おっとりと呟き、さらに女性は考えを深めようとしていたが「オウル! そろそろ来てー!」という扉の向こうからの声にハッとしたようだった。呼んでいるのはウエイトレスだろう。
「あぁ、ごめんよ。行かないと。あたしはオウルっていうんだ。あんたも何がなんだかわからないとは思うけど、いい子にまってるんだよ」
人好きのする笑顔で言い置いて、女性──オウルは出ていった。
(カイリを知ってる人がいた! じゃあやっぱりここはオミの国なんだ……)
まさかカイリと同じことが自分の身の上に起こるとは思わなかった。百花の身にも『ニアの気まぐれ』が降りかかったということなのだろうか。
とにかく詳しいことは、オウルが戻ってこないと始まらない。
けれど、カイリに二年ぶりに会えるかもしれないと思うと、百花の興奮状態はいつまでもさめなかった。
◆
その後、ドアの向こうのざわめきが落ち着いてきたなと思った頃合いで、再びオウルがやってきた。暖かいお茶を百花に差し出し「まあ飲みながら話そうか」と腰を落ち着ける。そして、オウルは百花がいるこの場所について教えてくれた。
ここは百花が予想した通りオミの国だった。百花の部屋とつながったこの酒場は、オミの国の首都ハイネの街はずれに位置していて、このオウルが女主人を勤めているそうだ。
魔法が当たり前のように人々の暮らしに根付き、北方の国境付近では現在帝国と交戦中。
カイリが話していた通りの世界だった。
「そうかい、カイリが異界渡りをねぇ……」
百花の話を聞いても、オウルはそれを作り話だとは否定しなかった。そのまま全てを受け入れて「あんたも大変だったねぇ」といたわりの眼差しを向けてくれる。あたたかな情に包まれて、百花は泣きたくなった。
自分が初めてカイリの告白を聞いた時を思い出す。異世界の話全てが嘘だとまでは思わなかったけれど、信じ切れるわけでもなかった。
けれど目の前にいるオウルは、百花の話をすべて鵜呑みにしてくれているようだ。
「全部信じてくれるんですか?」
おずおずとたずねると、オウルは「ああ」とこともなげにうなずく。
「あんたに魔力がないのは店に入った時にすぐわかったよ。あたしはこれでも昔は国お抱えの魔導師として活躍していた頃があったから、人が発する魔力には敏感なのさ。この世界で魔力がゼロの人間なんていない。それにその格好。そんな珍しい洋服見たことないよ。まあそういう色々なことを総合すると、あんたは別のどこかから来たってことになるだろう?」
オウルは目を細めて百花を眺めた。ボーダーのカットソーにスキニージーンズ姿の百花は、珍しさ全開だそうだ。
聞けば、こちらの洋服は無地のものばかりで、デニム素材もないし、身体にフィットするようなシルエットの洋服もない。確かに店にいる人たちは皆だぼっとしたズボンを履いていた。カイリもそういえばあんな感じのズボンだった気がする。
「異界渡りは、いくつかの例が記録として残されているんだ。今度取り寄せて読み込んでみるよ。あたしもさらっとしか知らないからね。──あとカイリだけど、今ちょうど国境に行ってるんだ。馬でも七日かかる場所だし、ついこの間出立したばかりだから、しばらくはこっちには戻らない」
「そ、そうなんですか……」
百花はがくりと肩を落とした。
オウルがカイリと知り合いだったから、きっとすぐに会わせてもらえるだろうとどこかで期待していた。
(そう甘くないってことか……)
「……あれ、でも国境って、さっき交戦中って言ってたところですよね。ていうことはカイリも戦ってるってことですか!?」
まさか、せっかく百花がこっちに来たというのに、カイリ自身が戦死なんてことがあったら……。
(そんなことがあったら、もうどうしたらいいかわからないよ!!)
焦り出した百花をオウルは微笑んで制した。
「大丈夫。カイリは兵士と言ってもちょっと特殊でね。前線に出る歩兵じゃないんだ。今回は主に偵察任務だって話だから、そう命の危険はないと思うよ。安心しな」
「十分危険そうな気がするんですけど……」
戦争を経験したことのない百花には、その任務の危険度がまるで想像できない。偵察ってことは影からそっと伺って終わるようなものなんだろうか。そこで敵に見つかったりしたら、戦闘になったりしてーー!?
(だめだ! 心配しはじめるとキリがない!)
今こうしてうだうだしていたって、何の役にもたたない。必死に言い聞かせて、無理やりに百花は意識を切り替えることにした。
「あの、オウルさん」
「オウルでいいよ。堅苦しいのは苦手だから」
「あ、はい。じゃあ……オウル。わたし、カイリに会いたいんです。その国境の任務が無事に終わったとして、カイリがこっちに帰ってきた時、どうすれば会えるんでしょう?」
百花の表情に何かの意味を感じ取ったのか、オウルは優しく微笑んだ。
「会えるさ。あの子は任務が終わったらいつもここに来るからね」
「!! そうなんだ!!」
だとしたら、百花のとるべき道は一つしかない。
「お願いします! わたしをここにおいてください! お店の手伝いとか、家事とか、できること何でも手伝いますから!」
勢いよく頭をさげると、オウルは「もちろんさ」とのんびりした声で答えた。
「そのつもりだったよ。こういう縁は大体何かの意味があるから大事にしないとね。店の二階に空き部屋があるから、そこを使うといいよ」
「ありがとうございます! よろしくお願いします!」
立ち上がって再度頭を下げる。トントン拍子で衣食住が確保できた幸運に、胸がふるえる。
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