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ナストとフラスト
5話【ナストとフラスト】
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「フ......フラスト様......っ」
植物学者が震える声で言い訳をする。
「あのですね。これにはワケがありまして。実はナスト様が――」
「話しているときくらい腰を振るのをやめろ」
「しっ、失礼いたしました。それで、ワケというのは――」
「ナストから体を離せ。お前もだ護衛」
「「は、はいぃっ……!!」」
植物学者と護衛のペニスから解放された。僕は仁王立ちしているフラスト様の元に駆け寄り、しがみついた。嫌がられるかと思ったが、フラスト様は僕の体を抱きしめ、変態二人から守るように背を向ける。
「すまない」
「えっ……」
フラスト様は小声でそう言ってから、顔だけ振り向き、植物学者たちに目を向けた。
「それで、事情があるなら聞こうか。一応な」
「は、はい! 実はですね――」
云々かんぬん。事情を聞いたフラスト様は、僕に声をかけた。
「こいつらの言ったことは本当か」
「は、はい……。ただ、淫紋を消すために、本当に精液が必要かどうかは知りません……」
「必要だ。それは俺も知っている」
「そう、なんですか……」
「なぜあいつらからはぐれた。護衛の元を離れるなと言っただろう」
「それは……あの二人に襲われたので……」
「逃げたのか」
「はい……」
「ではお前は悪くない」
フラスト様は変態二人を睨みつけた。彼らに僕の言ったことの真偽は確かめなかった。
「お前たちのことはヴァルアに報告しておく。楽しみにしておけ」
植物学者と護衛がヒッと息を呑む。
「そっ、それだけは……っ!! ば、罰はフラスト様がお出しください!! なんでもします!!」
「お願いします! お願いします!! どうかヴァルア様にだけは……!!」
どうやら、二人ともヴァルア様の敵に対する冷徹さを知っているようだ。
フラスト様は小さく笑い、冷たく言い放った。
「ヴァルアの本性を知っていながら、なぜこのようなことをした。こいつはヴァルアの最愛の者だぞ」
「そっ……それは……」
植物学者と護衛は口ごもったが、勢いに任せて叫んだ。
「だって、彼は男娼でしょう!?」
「男娼なんだから、それくらいいいじゃないですか!!」
ほーう、とフラスト様は声を漏らした。次の瞬間、力任せに振られた剣が地面に突き刺さった。
「「ヒッ」」
「こいつのことを男娼と呼んでいいのは俺だけだと、何度言えば分かる?」
恐怖心が極限になったのか、植物学者がボタボタと尿を地面に垂らした。
「お前たちには、くだらぬ噂など信じず敬意をもってナストに接するよう、何度も何度も言ってきたはずだが? こいつはすでにフィリッツ大公家の家族であると、伝えていたのを忘れたか?」
僕は目を見開いた。フラスト様、僕がいないところではそんなことを……
ふいにフラスト様が時計を見た。そして僕に優しく声をかける。
「まずいな。時間がない。……ナスト、選べ。腹に淫紋を刻んででもこれ以上誰にも触れさせずヴァルアの元へ戻るか。その淫紋を消すか。どちらにする」
「……」
「一応言っておく。淫紋が刻まれたとしても、ヴァルアのお前への愛は変わらん」
僕は唇を震わせ、ワッと泣き出してしまった。いろんな感情が頭の中をぐるぐると回る。
気色悪い淫魔と、同じくらい気色悪い変態二人に犯された屈辱。
ヴァルア様に嫌われてしまうのではないかという恐怖。
フラスト様に嫌われていなかったという安堵。
そして、フラスト様の優しさに感動してしまった。
フラスト様はぎこちなく僕の背中をさすり、もう一度時計を見た。
「ナスト……。悪いが時間が差し迫っている。どちらにするか決めてくれ」
「……フラスト様にお願いしたいです……」
「……」
「あの二人は絶対に嫌です。フラスト様がいいです。ごめんなさい。お願いします……」
やっぱり、淫紋を刻んだままヴァルア様の元に戻るのは嫌だ。これは淫魔に隷属する証だという。そんなものを一生体に刻み付け、夜を共に過ごすたびにヴァルア様に見せるのは、何がなんでも嫌だ。
「……分かった。俺であれば、耳は飛ばんだろう」
それはフラスト様なりの精いっぱいの冗談だった。
植物学者が震える声で言い訳をする。
「あのですね。これにはワケがありまして。実はナスト様が――」
「話しているときくらい腰を振るのをやめろ」
「しっ、失礼いたしました。それで、ワケというのは――」
「ナストから体を離せ。お前もだ護衛」
「「は、はいぃっ……!!」」
植物学者と護衛のペニスから解放された。僕は仁王立ちしているフラスト様の元に駆け寄り、しがみついた。嫌がられるかと思ったが、フラスト様は僕の体を抱きしめ、変態二人から守るように背を向ける。
「すまない」
「えっ……」
フラスト様は小声でそう言ってから、顔だけ振り向き、植物学者たちに目を向けた。
「それで、事情があるなら聞こうか。一応な」
「は、はい! 実はですね――」
云々かんぬん。事情を聞いたフラスト様は、僕に声をかけた。
「こいつらの言ったことは本当か」
「は、はい……。ただ、淫紋を消すために、本当に精液が必要かどうかは知りません……」
「必要だ。それは俺も知っている」
「そう、なんですか……」
「なぜあいつらからはぐれた。護衛の元を離れるなと言っただろう」
「それは……あの二人に襲われたので……」
「逃げたのか」
「はい……」
「ではお前は悪くない」
フラスト様は変態二人を睨みつけた。彼らに僕の言ったことの真偽は確かめなかった。
「お前たちのことはヴァルアに報告しておく。楽しみにしておけ」
植物学者と護衛がヒッと息を呑む。
「そっ、それだけは……っ!! ば、罰はフラスト様がお出しください!! なんでもします!!」
「お願いします! お願いします!! どうかヴァルア様にだけは……!!」
どうやら、二人ともヴァルア様の敵に対する冷徹さを知っているようだ。
フラスト様は小さく笑い、冷たく言い放った。
「ヴァルアの本性を知っていながら、なぜこのようなことをした。こいつはヴァルアの最愛の者だぞ」
「そっ……それは……」
植物学者と護衛は口ごもったが、勢いに任せて叫んだ。
「だって、彼は男娼でしょう!?」
「男娼なんだから、それくらいいいじゃないですか!!」
ほーう、とフラスト様は声を漏らした。次の瞬間、力任せに振られた剣が地面に突き刺さった。
「「ヒッ」」
「こいつのことを男娼と呼んでいいのは俺だけだと、何度言えば分かる?」
恐怖心が極限になったのか、植物学者がボタボタと尿を地面に垂らした。
「お前たちには、くだらぬ噂など信じず敬意をもってナストに接するよう、何度も何度も言ってきたはずだが? こいつはすでにフィリッツ大公家の家族であると、伝えていたのを忘れたか?」
僕は目を見開いた。フラスト様、僕がいないところではそんなことを……
ふいにフラスト様が時計を見た。そして僕に優しく声をかける。
「まずいな。時間がない。……ナスト、選べ。腹に淫紋を刻んででもこれ以上誰にも触れさせずヴァルアの元へ戻るか。その淫紋を消すか。どちらにする」
「……」
「一応言っておく。淫紋が刻まれたとしても、ヴァルアのお前への愛は変わらん」
僕は唇を震わせ、ワッと泣き出してしまった。いろんな感情が頭の中をぐるぐると回る。
気色悪い淫魔と、同じくらい気色悪い変態二人に犯された屈辱。
ヴァルア様に嫌われてしまうのではないかという恐怖。
フラスト様に嫌われていなかったという安堵。
そして、フラスト様の優しさに感動してしまった。
フラスト様はぎこちなく僕の背中をさすり、もう一度時計を見た。
「ナスト……。悪いが時間が差し迫っている。どちらにするか決めてくれ」
「……フラスト様にお願いしたいです……」
「……」
「あの二人は絶対に嫌です。フラスト様がいいです。ごめんなさい。お願いします……」
やっぱり、淫紋を刻んだままヴァルア様の元に戻るのは嫌だ。これは淫魔に隷属する証だという。そんなものを一生体に刻み付け、夜を共に過ごすたびにヴァルア様に見せるのは、何がなんでも嫌だ。
「……分かった。俺であれば、耳は飛ばんだろう」
それはフラスト様なりの精いっぱいの冗談だった。
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