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一年:二学期期末考査~二学期最終日
第二十話
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◆◆◆
(凪side)
鳴りやまない通知音。山ほどの着信履歴。
毎年冬になるといつも以上にこれが増える。
今まではこれで気分を紛らせていた部分もあった。誰かに求められていることに、どこか満たされていたんだ。
だからそんなに迷惑にも感じていなかったんだけど……。
今はちょっと、疎ましい。
昼休み、おなじみの友人たちとごはんを食べていたとき、友人Aに話をふられた。
「凪、最近お前ため息ばっか吐いてんな」
「えっ」
「なんかあった?」
まずい。心配されてんじゃん、俺。
「ごめんごめん! なんもねえから!」
「そうかー? そうは思えねえけど」
「えー? 考えすぎだって」
友人たちが顔を見合わせ、心配そうな表情を浮かべる。
「だって凪、お前最近ちょっと変だぞ?」
「変? なんで?」
「最近ちょっと付き合い悪いし。彼女も作らねえし……」
うっ……。確かにちょっと友だちとの付き合いサボッていたかも。
「……でも、彼女作らないのは別に変なことじゃなくない? だってお前らだっていないじゃん」
「うるせえわ!!」
友人Aが俺をゲシゲシ蹴りながら言った。
「お前だから変なんだよ! 入学してから今まで彼女途切れたことなかったのに!」
友人Bがそれに乗っかる。
「今でもお前と付き合いたいって言ってる女子いっぱいいるだろ~?」
「まあ……それは……そうだけど」
なーんか彼女作る気になれないんだよなあ……。
友人Aが俺に詰め寄った。
「もしかして、お前本命でもできた?」
「本命? 別にできてないけど」
「ほんとかあ?」
「ほんとほんと」
そのとき、ふと理玖の顔が思い浮かんだ。またよく分からないタイミングで出てきたな。
「あ、でも……。自分からキスしたいって思う子はできたよ」
「おっ?」
友人たちの興味度がぐんと高まったのを感じた。
「誰?」
「教えなーい」
理玖に口止めされてるからね。理玖が約束守ってくれているんだから、俺もちゃんと守らないと。
「付き合ってねえの?」
「付き合う? いや、そういうのじゃないし」
「どういうこと? だってお前、好きなんだろ?」
「え? んー?」
好き……? 好きだけど。
「好きなのと付き合うのって、なんか関係ある?」
「お前何言ってんの? 普通好きだから付き合うもんだろ……」
「そうなの?」
「お前今までどういう気持ちで付き合ってきたんだよ……」
「んー」
思い返すと、告白されて、別にいいかなーって思ったら付き合っていた。
好きとか嫌いとか、そんなこと考えたこともなかった。いけるかいけないかでしか判断していなかった。
「そういえば、俺ってどういう基準でいけるかいけないかを判断してたんだろ」
「好きかどうかなんじゃねえの……?」
「んー……。違うなあ……」
「うわぁ……」
そんなことじっくり考えたこともなかった。
よくよく考えてみれば、俺の判断基準は「その子とセックスできるかどうか」だったかもしれない。
あれ? その論理で言えば……なんで俺、理玖と付き合っていないんだろう。付き合っていないのに、どうしてあんなことしているんだろう。
「んー……? よく分かんなくなってきたぞ……」
「俺もお前のことがよく分かんなくなってきたぞ……」
どうやら友だちに引かれてしまったみたいだ。
「っていうか俺、別にその子と付き合いたいとか思ってないし……」
でも付き合っているみたいなことしているの、なんか変だなあ……。
「じゃあさ、その子が他の男と付き合っても別に構わないわけ?」
「えっ……」
友人Cの言葉に背筋が凍った。
「お前が好きになるってことは相当可愛いんだろ。モテるんじゃね?」
確かに理玖は可愛い。相当可愛い。
「お前がのろのろしてる間に他の男に取られるかもよ? それでもいいんだ?」
「……」
理玖が俺以外の男とキスしているところを想像してみた。それだけで腹が立って、唇がわなわなと震えた。
「え。嫌なんだけど」
「だったらさっさと付き合わねえと」
「そういうもん?」
そうなんだ。付き合うって、他人に取られないように、相手に首輪付けるようなことだったんだ。
「付き合う、ね……」
にしてもゆるゆるの首輪だな。「付き合う」なんてただの口約束だ。強制力なんてあってないようなもの。相手の気持ちひとつですぐに別れられるじゃん。自分で簡単に外せる首輪なんて、そんなのあんまり意味がないような気がする。
それだったらいっそ、俺以外の男を見るなって理玖に命令すれば――
……いや、いやいや……。さすがにそれはナシだよな。俺、何考えてんだろ。
わりと最低なこと考えていたよな、今。
あー。でも、そうしたいくらいには、理玖が他の男とキスしているところを見たくない。
「はあ……どうしたらいいんだろ」
こんな気持ちになったのははじめてだ。
誰でもいい。誰かに求められたい。俺を一番求めてくれる人なら、ほとんど誰だってよかった。
それなのに今の俺は、俺を求めている人たちに背を向けて、たった一人を求めている。
考え込んでいる俺を、友人Bが興味深そうに観察していた。
「お前でも片想いするんだな」
「これって片想い? 俺、今片想いしてんの?」
「そうなんじゃね? で、脈はあんの?」
「脈かー。なさそう」
理玖は俺の命令に従っているだけだろうからなあ……。
(あれ……?)
そう考えたとたん、心臓がきゅっと押しつぶされたみたいに苦しくなった。
(凪side)
鳴りやまない通知音。山ほどの着信履歴。
毎年冬になるといつも以上にこれが増える。
今まではこれで気分を紛らせていた部分もあった。誰かに求められていることに、どこか満たされていたんだ。
だからそんなに迷惑にも感じていなかったんだけど……。
今はちょっと、疎ましい。
昼休み、おなじみの友人たちとごはんを食べていたとき、友人Aに話をふられた。
「凪、最近お前ため息ばっか吐いてんな」
「えっ」
「なんかあった?」
まずい。心配されてんじゃん、俺。
「ごめんごめん! なんもねえから!」
「そうかー? そうは思えねえけど」
「えー? 考えすぎだって」
友人たちが顔を見合わせ、心配そうな表情を浮かべる。
「だって凪、お前最近ちょっと変だぞ?」
「変? なんで?」
「最近ちょっと付き合い悪いし。彼女も作らねえし……」
うっ……。確かにちょっと友だちとの付き合いサボッていたかも。
「……でも、彼女作らないのは別に変なことじゃなくない? だってお前らだっていないじゃん」
「うるせえわ!!」
友人Aが俺をゲシゲシ蹴りながら言った。
「お前だから変なんだよ! 入学してから今まで彼女途切れたことなかったのに!」
友人Bがそれに乗っかる。
「今でもお前と付き合いたいって言ってる女子いっぱいいるだろ~?」
「まあ……それは……そうだけど」
なーんか彼女作る気になれないんだよなあ……。
友人Aが俺に詰め寄った。
「もしかして、お前本命でもできた?」
「本命? 別にできてないけど」
「ほんとかあ?」
「ほんとほんと」
そのとき、ふと理玖の顔が思い浮かんだ。またよく分からないタイミングで出てきたな。
「あ、でも……。自分からキスしたいって思う子はできたよ」
「おっ?」
友人たちの興味度がぐんと高まったのを感じた。
「誰?」
「教えなーい」
理玖に口止めされてるからね。理玖が約束守ってくれているんだから、俺もちゃんと守らないと。
「付き合ってねえの?」
「付き合う? いや、そういうのじゃないし」
「どういうこと? だってお前、好きなんだろ?」
「え? んー?」
好き……? 好きだけど。
「好きなのと付き合うのって、なんか関係ある?」
「お前何言ってんの? 普通好きだから付き合うもんだろ……」
「そうなの?」
「お前今までどういう気持ちで付き合ってきたんだよ……」
「んー」
思い返すと、告白されて、別にいいかなーって思ったら付き合っていた。
好きとか嫌いとか、そんなこと考えたこともなかった。いけるかいけないかでしか判断していなかった。
「そういえば、俺ってどういう基準でいけるかいけないかを判断してたんだろ」
「好きかどうかなんじゃねえの……?」
「んー……。違うなあ……」
「うわぁ……」
そんなことじっくり考えたこともなかった。
よくよく考えてみれば、俺の判断基準は「その子とセックスできるかどうか」だったかもしれない。
あれ? その論理で言えば……なんで俺、理玖と付き合っていないんだろう。付き合っていないのに、どうしてあんなことしているんだろう。
「んー……? よく分かんなくなってきたぞ……」
「俺もお前のことがよく分かんなくなってきたぞ……」
どうやら友だちに引かれてしまったみたいだ。
「っていうか俺、別にその子と付き合いたいとか思ってないし……」
でも付き合っているみたいなことしているの、なんか変だなあ……。
「じゃあさ、その子が他の男と付き合っても別に構わないわけ?」
「えっ……」
友人Cの言葉に背筋が凍った。
「お前が好きになるってことは相当可愛いんだろ。モテるんじゃね?」
確かに理玖は可愛い。相当可愛い。
「お前がのろのろしてる間に他の男に取られるかもよ? それでもいいんだ?」
「……」
理玖が俺以外の男とキスしているところを想像してみた。それだけで腹が立って、唇がわなわなと震えた。
「え。嫌なんだけど」
「だったらさっさと付き合わねえと」
「そういうもん?」
そうなんだ。付き合うって、他人に取られないように、相手に首輪付けるようなことだったんだ。
「付き合う、ね……」
にしてもゆるゆるの首輪だな。「付き合う」なんてただの口約束だ。強制力なんてあってないようなもの。相手の気持ちひとつですぐに別れられるじゃん。自分で簡単に外せる首輪なんて、そんなのあんまり意味がないような気がする。
それだったらいっそ、俺以外の男を見るなって理玖に命令すれば――
……いや、いやいや……。さすがにそれはナシだよな。俺、何考えてんだろ。
わりと最低なこと考えていたよな、今。
あー。でも、そうしたいくらいには、理玖が他の男とキスしているところを見たくない。
「はあ……どうしたらいいんだろ」
こんな気持ちになったのははじめてだ。
誰でもいい。誰かに求められたい。俺を一番求めてくれる人なら、ほとんど誰だってよかった。
それなのに今の俺は、俺を求めている人たちに背を向けて、たった一人を求めている。
考え込んでいる俺を、友人Bが興味深そうに観察していた。
「お前でも片想いするんだな」
「これって片想い? 俺、今片想いしてんの?」
「そうなんじゃね? で、脈はあんの?」
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