23 / 72
一年:二学期期末考査~二学期最終日
第十九話
しおりを挟む
いらないと言ったのに、凪が看病のために俺のうちに来た。
そのときには熱が上がっていて、玄関のドアまで行くのすら結構しんどかった。
そんな俺を見て、凪は顔を青くする。
「ひどくなってんじゃん……」
「うん……。だからお前帰れ……」
「なんでだよ。なおさら看病しなきゃじゃん」
「移したくないから……」
「気にすんなって。理玖とは体の鍛え方が違うからさ」
「うるせえ……」
こんなことを言いながら、少し嬉しいと思っている自分がいた。
体調崩すとメンタルも弱るんだな。誰かがそばにいてくれるだけで安心する。
俺が寝ている間に、凪がレトルトのおかゆを用意してくれた。
「ごめんな。俺、料理全然できなくて……」
「いや、ありがたいよ……。俺一人だと何も食べてなかっただろうから」
俺がおかゆを受け取ろうとすると、凪がお盆をすっと引っ込めた。
「……ん?」
「俺が食べさせてやるから」
「いや、いい……。自分で食べれるから……」
「いいから」
「……」
こいつ、これがしたかっただけじゃないだろうな……。
凪はおかゆをスプーンにすくい、俺に差し出した。
「理玖、あーん」
「……」
「ほら、あーん」
「はあ……」
俺はいやいや口を開けた。するっとスプーンが入ってくる。あー、味覚おかしくなってるかも。おかゆの味なんも分かんねえ。
「あーん」
「……それ、毎回言うつもり?」
「うん。ほら、あーん」
「……」
おかゆを食べ終えた俺の口を、凪がウェットティッシュで拭いてくれる。まるで介護されているみたいだ。
ウェットティッシュで拭いたあとに、凪が俺の唇に指を添えた。くにくにといじっている。
「……」
何を物欲しそうな顔でこっちを見ているんだ、こいつは。なんでそんな切ない顔をしているんだ。
「……うー……」
「なんだよさっきから……」
「キスしたいよぉ……」
「ダメ。移るから」
俺はそう言って凪に背を向けた。
「……ありがとな。助かったよ」
「うん」
「だからもう帰って。まじで移したくないから」
「……」
「おーい。聞こえてる?」
「……キスさせてくれるら、帰る」
「はあ?」
「キスさせてくれないなら、朝まで看病する」
「お前なあ……」
なんてワガママなヤツなんだ。
「理玖はどっちがいい?」
どっちも嫌だわ。
「俺はどっちでもいいよ」
「……はあ」
俺は寝返りを打ち、手招きをした。一晩中ここにいさせるくらいなら、一回キスさせた方がマシだ。
凪の顔がぱっと明るくなり、俺の唇にそっとキスをした。
「……んっ、おい……舌は入れんな……」
「これしてくれないと帰らない」
「クソが……」
長い長いキスのあと、やっと凪が帰ってくれた。
全く。こんなんじゃ逆効果だよ、バカ。
一人でいるのが余計心細くなっちまったじゃんか。
◇◇◇
「……え?」
翌朝、俺は目を疑った。
帰ったはずの凪がまだここにいる。俺の手を握って、座った体勢のまま床で眠っていた。
「おい、凪」
「ん……?」
「お前、なんでここにいんの?」
「え……?」
「帰ったんじゃなかったの?」
「あはは……えーっと……。怒らない……?」
昨晩、凪は帰る間際に、俺んちの鍵をくすねたらしい。それでいったん帰ったふりをして、一時間後にこっそり家に戻って来たそうだ。
「……お前はアホなの?」
「あはは……」
「そんなとこで寝て、お前こそ風邪引くじゃん」
「だって……」
凪は唇を尖らせ、ふてくされた顔で言った。
「理玖が帰ってほしくなさそうな顔してたから」
「なっ……」
「口では帰れーって言ってんのに、顔には帰らないで―って書いてあったじゃん」
「そ、そんなわけっ……」
「だから一回帰ったふりして、戻ってきたんだ。それでどっちの理玖のお願いも聞けただろ?」
「……」
なんだこいつ。
俺をどろどろに甘やしてどうするつもりなんだ。
この瞬間、なにかを踏み外してしまいそうになってヒヤッとした。
そのときには熱が上がっていて、玄関のドアまで行くのすら結構しんどかった。
そんな俺を見て、凪は顔を青くする。
「ひどくなってんじゃん……」
「うん……。だからお前帰れ……」
「なんでだよ。なおさら看病しなきゃじゃん」
「移したくないから……」
「気にすんなって。理玖とは体の鍛え方が違うからさ」
「うるせえ……」
こんなことを言いながら、少し嬉しいと思っている自分がいた。
体調崩すとメンタルも弱るんだな。誰かがそばにいてくれるだけで安心する。
俺が寝ている間に、凪がレトルトのおかゆを用意してくれた。
「ごめんな。俺、料理全然できなくて……」
「いや、ありがたいよ……。俺一人だと何も食べてなかっただろうから」
俺がおかゆを受け取ろうとすると、凪がお盆をすっと引っ込めた。
「……ん?」
「俺が食べさせてやるから」
「いや、いい……。自分で食べれるから……」
「いいから」
「……」
こいつ、これがしたかっただけじゃないだろうな……。
凪はおかゆをスプーンにすくい、俺に差し出した。
「理玖、あーん」
「……」
「ほら、あーん」
「はあ……」
俺はいやいや口を開けた。するっとスプーンが入ってくる。あー、味覚おかしくなってるかも。おかゆの味なんも分かんねえ。
「あーん」
「……それ、毎回言うつもり?」
「うん。ほら、あーん」
「……」
おかゆを食べ終えた俺の口を、凪がウェットティッシュで拭いてくれる。まるで介護されているみたいだ。
ウェットティッシュで拭いたあとに、凪が俺の唇に指を添えた。くにくにといじっている。
「……」
何を物欲しそうな顔でこっちを見ているんだ、こいつは。なんでそんな切ない顔をしているんだ。
「……うー……」
「なんだよさっきから……」
「キスしたいよぉ……」
「ダメ。移るから」
俺はそう言って凪に背を向けた。
「……ありがとな。助かったよ」
「うん」
「だからもう帰って。まじで移したくないから」
「……」
「おーい。聞こえてる?」
「……キスさせてくれるら、帰る」
「はあ?」
「キスさせてくれないなら、朝まで看病する」
「お前なあ……」
なんてワガママなヤツなんだ。
「理玖はどっちがいい?」
どっちも嫌だわ。
「俺はどっちでもいいよ」
「……はあ」
俺は寝返りを打ち、手招きをした。一晩中ここにいさせるくらいなら、一回キスさせた方がマシだ。
凪の顔がぱっと明るくなり、俺の唇にそっとキスをした。
「……んっ、おい……舌は入れんな……」
「これしてくれないと帰らない」
「クソが……」
長い長いキスのあと、やっと凪が帰ってくれた。
全く。こんなんじゃ逆効果だよ、バカ。
一人でいるのが余計心細くなっちまったじゃんか。
◇◇◇
「……え?」
翌朝、俺は目を疑った。
帰ったはずの凪がまだここにいる。俺の手を握って、座った体勢のまま床で眠っていた。
「おい、凪」
「ん……?」
「お前、なんでここにいんの?」
「え……?」
「帰ったんじゃなかったの?」
「あはは……えーっと……。怒らない……?」
昨晩、凪は帰る間際に、俺んちの鍵をくすねたらしい。それでいったん帰ったふりをして、一時間後にこっそり家に戻って来たそうだ。
「……お前はアホなの?」
「あはは……」
「そんなとこで寝て、お前こそ風邪引くじゃん」
「だって……」
凪は唇を尖らせ、ふてくされた顔で言った。
「理玖が帰ってほしくなさそうな顔してたから」
「なっ……」
「口では帰れーって言ってんのに、顔には帰らないで―って書いてあったじゃん」
「そ、そんなわけっ……」
「だから一回帰ったふりして、戻ってきたんだ。それでどっちの理玖のお願いも聞けただろ?」
「……」
なんだこいつ。
俺をどろどろに甘やしてどうするつもりなんだ。
この瞬間、なにかを踏み外してしまいそうになってヒヤッとした。
400
あなたにおすすめの小説
陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
まったり書いていきます。
2024.05.14
閲覧ありがとうございます。
午後4時に更新します。
よろしくお願いします。
栞、お気に入り嬉しいです。
いつもありがとうございます。
2024.05.29
閲覧ありがとうございます。
m(_ _)m
明日のおまけで完結します。
反応ありがとうございます。
とても嬉しいです。
明後日より新作が始まります。
良かったら覗いてみてください。
(^O^)
穏やかに生きたい(隠れ)夢魔の俺が、癖強イケメンたちに執着されてます。〜平穏な学園生活はどこにありますか?〜
春凪アラシ
BL
「平穏に生きたい」だけなのに、
癖強イケメンたちが俺を狙ってくるのは、なぜ!?
トラブルを避ける為、夢魔の血を隠して学園生活を送るフレン(2年)。
彼は見た目は天使、でも本人はごく平凡に過ごしたい穏健派。
なのに、登校初日から出会ったのは最凶の邪竜後輩(1年)!?
他にも幼馴染で完璧すぎる優等生騎士(3年)に、不良だけど面倒見のいい悪友ワーウルフ(同級生)まで……なぜか異種族イケメンたちが次々と接近してきて――
運命の2人を繋ぐ「刻印制度」なんて知らない!
恋愛感情もまだわからない!
それでも、騒がしい日々の中で、少しずつ何かが変わっていく。
個性バラバラな異種族イケメンたちに囲まれて、フレンの学園生活は今日も波乱の予感!?
甘くて可笑しい、そして時々執着も見え隠れする
愛され体質な主人公の青春ファンタジー学園BLラブコメディ!
月、水、金、日曜日更新予定!(番外編は更新とは別枠で不定期更新)
基本的にフレン視点、他キャラ視点の話はside〇〇って表記にしてます!
「これからも応援してます」と言おう思ったら誘拐された
あまさき
BL
国民的アイドル×リアコファン社会人
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
学生時代からずっと大好きな国民的アイドルのシャロンくん。デビューから一度たりともファンと直接交流してこなかった彼が、初めて握手会を開くことになったらしい。一名様限定の激レアチケットを手に入れてしまった僕は、感動の対面に胸を躍らせていると…
「あぁ、ずっと会いたかった俺の天使」
気付けば、僕の世界は180°変わってしまっていた。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
初めましてです。お手柔らかにお願いします。
ムーンライトノベルズさんにも掲載しております
ハイスペックストーカーに追われています
たかつきよしき
BL
祐樹は美少女顔負けの美貌で、朝の通勤ラッシュアワーを、女性専用車両に乗ることで回避していた。しかし、そんなことをしたバチなのか、ハイスペック男子の昌磨に一目惚れされて求愛をうける。男に告白されるなんて、冗談じゃねぇ!!と思ったが、この昌磨という男なかなかのハイスペック。利用できる!と、判断して、近づいたのが失敗の始まり。とある切っ掛けで、男だとバラしても昌磨の愛は諦めることを知らず、ハイスペックぶりをフルに活用して迫ってくる!!
と言うタイトル通りの内容。前半は笑ってもらえたらなぁと言う気持ちで、後半はシリアスにBLらしく萌えると感じて頂けるように書きました。
完結しました。
今日もBL営業カフェで働いています!?
卵丸
BL
ブラック企業の会社に嫌気がさして、退職した沢良宜 篤は給料が高い、男だけのカフェに面接を受けるが「腐男子ですか?」と聞かれて「腐男子ではない」と答えてしまい。改めて、説明文の「BLカフェ」と見てなかったので不採用と思っていたが次の日に採用通知が届き疑心暗鬼で初日バイトに向かうと、店長とBL営業をして腐女子のお客様を喜ばせて!?ノンケBL初心者のバイトと同性愛者の店長のノンケから始まるBLコメディ
※ 不定期更新です。
日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが
五右衛門
BL
月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。
しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──
借金のカタに同居したら、毎日甘く溺愛されてます
なの
BL
父親の残した借金を背負い、掛け持ちバイトで食いつなぐ毎日。
そんな俺の前に現れたのは──御曹司の男。
「借金は俺が肩代わりする。その代わり、今日からお前は俺のものだ」
脅すように言ってきたくせに、実際はやたらと優しいし、甘すぎる……!
高級スイーツを買ってきたり、風邪をひけば看病してくれたり、これって本当に借金返済のはずだったよな!?
借金から始まる強制同居は、いつしか恋へと変わっていく──。
冷酷な御曹司 × 借金持ち庶民の同居生活は、溺愛だらけで逃げ場なし!?
短編小説です。サクッと読んでいただけると嬉しいです。
無自覚両片想いの鈍感アイドルが、ラブラブになるまでの話
タタミ
BL
アイドルグループ・ORCAに属する一原優成はある日、リーダーの藤守高嶺から衝撃的な指摘を受ける。
「優成、お前明樹のこと好きだろ」
高嶺曰く、優成は同じグループの中城明樹に恋をしているらしい。
メンバー全員に指摘されても到底受け入れられない優成だったが、ひょんなことから明樹とキスしたことでドキドキが止まらなくなり──!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる