【完結】【R18BL】学年二位は、学年一位の命令を聞く

ちゃっぷす

文字の大きさ
33 / 72
一年:冬休み

第二十九話

しおりを挟む
 クリスマスのあとも、凪はほとんどの夜を俺の家で過ごした。
 さすがにここまで自分ちに帰らないと、心配になってくる。

 ある朝、ぼうっとベッドで寝ころんでいる凪に尋ねた。

「なあ。お前、年末どうすんの?」
「え? ここで過ごすけど」
「いや……。俺実家帰るし……」
「あっ……。そ、そっか……」

 本当は冬休みに入ってすぐ帰省するつもりだったんだが、こいつがいたのでギリギリまで引き延ばしていた。しかし昨晩親から連絡が入り、「いい加減帰って来なさい」とお叱りを受けたのだ。

「俺、今日か明日には実家帰るけど」
「そっかあ……。じゃあ、他の友だちんちにでも行こうかな……」

 いろんな意味で心臓が縮こまった。
 こいつ、意地でも家に帰らないつもりだ。家族とそんなに険悪な仲なの? なんで?
 それに……なに? 俺がいなかったら他の友だちんち行くんだ? 寝泊まりできればどこでもいいの?
 ……いや、ふたつめはおかしい。俺がムカつく道理はない。

「凪。嫌なら話さなくていいんだけどさ……」

 まだこいつとそこまで仲良くなかったとき、凪がポロッと家族についてこぼしたことがあった。
 そのときは「まだそこまでの仲じゃない」と思って踏み入らないようにしていた。他人さんの家庭の事情なんざ、そんなめんどくさいことをインプットしたくなかったしな。

 だが、今は……
 こいつのこと、もっと知りたいと思っている。

「そんな家族と仲良くないの?」
「あー……うん」

 凪は俺に背を向けたまま、覇気のない声で話し始めた。

「あんまり面白い話じゃないけど、聞く?」
「……うん」
「……今から言うこと、誰にも言うなよ?」
「言わないって。言う相手がいねえから」
「……俺の親、再婚しててさ」
「……」

 おっと……。思っていたより複雑そう。

「俺、母さんの連れ子だったんだ。それで、再婚相手との子どもが生まれてからは……さ」
「……」
「正直、俺って邪魔者じゃん?」
「そ、そんなこと……」
「はは。理玖は優しいな。でも、母さんも義父さんも、理玖ほど優しくなかった」

 凪は再婚相手からずっと疎まれていたらしい。実の母親も、再婚相手との子どもが生まれてからは、再婚相手と一緒に凪を邪魔者扱いするようになったとか。

 幼い凪は親の気を引きたくて、誰よりもなんでも頑張った。勉強も、スポーツも、それ以外のことも全て。

「……それが逆効果だったんだって、今なら分かる。だって気に食わないよな。可愛がってる子より、鬱陶しい連れ子の方が優秀なんてさ。それに俺、実の父さんに似て顔が良いからさ。家族以外の人たちにチヤホヤされんのは、いつも実の子よりも俺だった。それもまたムカついただろうなー」

 最後のほうは冗談っぽく言っていたが、本当にそうだったんだろうと思う。

「……だから、俺が家にいない方が、家族も俺も、しあわせなんだ」

 こいつが誰にでも愛想が良いことも、彼女をとっかえひっかえする理由も、ちょっと分かったような気がした。
 こいつは愛に……求められることに飢えているんだ。
 それと、愛というものをあまり理解できていないんだろう。……俺もそんなもの全然理解できていないだろうが。

「どう? 面白くなかっただろ?」
「そうだな。全然面白くなかった」
「はは。こんな話したの、理玖が初めて」

 そうだろうな。お前はこんなこと、誰にも話さないだろう。

「なんで俺には話した?」
「……」

 凪が振り返り、俺の顔をじっと見つめた。ほんの少し、泣きそうな顔をしているように見える。

「理玖は受け入れてくれると思ったから」
「……」
「こんな話聞いても、理玖なら今まで通り、俺と接してくれるだろ」
「おう」
「うん。だから話した」
「そっか」

 こんな話を聞いて、家に帰れなんてそんなこと、俺にはとてもじゃないが言えない。
 でも、そうなるとこいつは他の友だちの家に行くことになる。

 〝他の友だち〟が男か女かなんて重要なことじゃない。俺の経験上、こいつは男でもイケるタチだし。
 ……エロいことを抜きにしても、こいつが他のヤツを頼るのが気に食わないし。

「……俺の実家、来る?」
「えっ?」

 ……年末もこいつと一緒に過ごしたいし。

「うち来れば? うちのおせち料理美味いぞ」
「えっ……。えっと……。……え?」

 さすがに引かれたか……?
 年末に実家連れて帰るって、さすがにちょっとアレか……?

 前言撤回しようとしたが、その前に凪が口を開いた。

「い、いいの……?」

 思っていたと違う反応に、今度は俺が狼狽えた。

「いいのって……お前こそいいの……?」
「う、うん……。俺は……嬉しい……」
「そ、そう? じゃあ……一緒に帰るか?」
「ご家族に迷惑じゃない……?」
「全然。むしろ俺に友だちができたことに大喜びすると思う」

 しかも感じの良いイケメンだし。母さんと姉ちゃん興奮しすぎて死にそう。

 凪は頬を赤らめ、もじもじした。

「じゃ、じゃあ……お言葉に甘えたい……」
「……」

 おかしい。このタイミングでなんでちんこが反応した?
 泣きそうな顔でもじもじしている凪が可愛かったからか?
 不憫な凪への同情が極まって愛しさに変換されたからか?

 とにかく、どうしようもなく、俺は凪にキスしたくなった。だからしてしまった。

「ん……。理玖……?」
「……実家帰ったらこういうことできないから。行く前にしよ」
「……うん」

 久しぶりに、俺が上になった。
 この日の凪はいつも以上に受け身で可愛かった。声もいつもより甘くて、俺の名前をよく呼んだ。
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 まったり書いていきます。 2024.05.14 閲覧ありがとうございます。 午後4時に更新します。 よろしくお願いします。 栞、お気に入り嬉しいです。 いつもありがとうございます。 2024.05.29 閲覧ありがとうございます。 m(_ _)m 明日のおまけで完結します。 反応ありがとうございます。 とても嬉しいです。 明後日より新作が始まります。 良かったら覗いてみてください。 (^O^)

穏やかに生きたい(隠れ)夢魔の俺が、癖強イケメンたちに執着されてます。〜平穏な学園生活はどこにありますか?〜

春凪アラシ
BL
「平穏に生きたい」だけなのに、 癖強イケメンたちが俺を狙ってくるのは、なぜ!? トラブルを避ける為、夢魔の血を隠して学園生活を送るフレン(2年)。 彼は見た目は天使、でも本人はごく平凡に過ごしたい穏健派。
なのに、登校初日から出会ったのは最凶の邪竜後輩(1年)!? 
他にも幼馴染で完璧すぎる優等生騎士(3年)に、不良だけど面倒見のいい悪友ワーウルフ(同級生)まで……なぜか異種族イケメンたちが次々と接近してきて―― 運命の2人を繋ぐ「刻印制度」なんて知らない! 恋愛感情もまだわからない! 
それでも、騒がしい日々の中で、少しずつ何かが変わっていく。 個性バラバラな異種族イケメンたちに囲まれて、フレンの学園生活は今日も波乱の予感!? 
甘くて可笑しい、そして時々執着も見え隠れする 愛され体質な主人公の青春ファンタジー学園BLラブコメディ! 月、水、金、日曜日更新予定!(番外編は更新とは別枠で不定期更新) 基本的にフレン視点、他キャラ視点の話はside〇〇って表記にしてます!

「これからも応援してます」と言おう思ったら誘拐された

あまさき
BL
国民的アイドル×リアコファン社会人 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ 学生時代からずっと大好きな国民的アイドルのシャロンくん。デビューから一度たりともファンと直接交流してこなかった彼が、初めて握手会を開くことになったらしい。一名様限定の激レアチケットを手に入れてしまった僕は、感動の対面に胸を躍らせていると… 「あぁ、ずっと会いたかった俺の天使」 気付けば、僕の世界は180°変わってしまっていた。 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ 初めましてです。お手柔らかにお願いします。 ムーンライトノベルズさんにも掲載しております

ハイスペックストーカーに追われています

たかつきよしき
BL
祐樹は美少女顔負けの美貌で、朝の通勤ラッシュアワーを、女性専用車両に乗ることで回避していた。しかし、そんなことをしたバチなのか、ハイスペック男子の昌磨に一目惚れされて求愛をうける。男に告白されるなんて、冗談じゃねぇ!!と思ったが、この昌磨という男なかなかのハイスペック。利用できる!と、判断して、近づいたのが失敗の始まり。とある切っ掛けで、男だとバラしても昌磨の愛は諦めることを知らず、ハイスペックぶりをフルに活用して迫ってくる!! と言うタイトル通りの内容。前半は笑ってもらえたらなぁと言う気持ちで、後半はシリアスにBLらしく萌えると感じて頂けるように書きました。 完結しました。

今日もBL営業カフェで働いています!?

卵丸
BL
ブラック企業の会社に嫌気がさして、退職した沢良宜 篤は給料が高い、男だけのカフェに面接を受けるが「腐男子ですか?」と聞かれて「腐男子ではない」と答えてしまい。改めて、説明文の「BLカフェ」と見てなかったので不採用と思っていたが次の日に採用通知が届き疑心暗鬼で初日バイトに向かうと、店長とBL営業をして腐女子のお客様を喜ばせて!?ノンケBL初心者のバイトと同性愛者の店長のノンケから始まるBLコメディ ※ 不定期更新です。

日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが

五右衛門
BL
 月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。  しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──

借金のカタに同居したら、毎日甘く溺愛されてます

なの
BL
父親の残した借金を背負い、掛け持ちバイトで食いつなぐ毎日。 そんな俺の前に現れたのは──御曹司の男。 「借金は俺が肩代わりする。その代わり、今日からお前は俺のものだ」 脅すように言ってきたくせに、実際はやたらと優しいし、甘すぎる……! 高級スイーツを買ってきたり、風邪をひけば看病してくれたり、これって本当に借金返済のはずだったよな!? 借金から始まる強制同居は、いつしか恋へと変わっていく──。 冷酷な御曹司 × 借金持ち庶民の同居生活は、溺愛だらけで逃げ場なし!? 短編小説です。サクッと読んでいただけると嬉しいです。

無自覚両片想いの鈍感アイドルが、ラブラブになるまでの話

タタミ
BL
アイドルグループ・ORCAに属する一原優成はある日、リーダーの藤守高嶺から衝撃的な指摘を受ける。 「優成、お前明樹のこと好きだろ」 高嶺曰く、優成は同じグループの中城明樹に恋をしているらしい。 メンバー全員に指摘されても到底受け入れられない優成だったが、ひょんなことから明樹とキスしたことでドキドキが止まらなくなり──!?

処理中です...