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一年:冬休み
第二十九話
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クリスマスのあとも、凪はほとんどの夜を俺の家で過ごした。
さすがにここまで自分ちに帰らないと、心配になってくる。
ある朝、ぼうっとベッドで寝ころんでいる凪に尋ねた。
「なあ。お前、年末どうすんの?」
「え? ここで過ごすけど」
「いや……。俺実家帰るし……」
「あっ……。そ、そっか……」
本当は冬休みに入ってすぐ帰省するつもりだったんだが、こいつがいたのでギリギリまで引き延ばしていた。しかし昨晩親から連絡が入り、「いい加減帰って来なさい」とお叱りを受けたのだ。
「俺、今日か明日には実家帰るけど」
「そっかあ……。じゃあ、他の友だちんちにでも行こうかな……」
いろんな意味で心臓が縮こまった。
こいつ、意地でも家に帰らないつもりだ。家族とそんなに険悪な仲なの? なんで?
それに……なに? 俺がいなかったら他の友だちんち行くんだ? 寝泊まりできればどこでもいいの?
……いや、ふたつめはおかしい。俺がムカつく道理はない。
「凪。嫌なら話さなくていいんだけどさ……」
まだこいつとそこまで仲良くなかったとき、凪がポロッと家族についてこぼしたことがあった。
そのときは「まだそこまでの仲じゃない」と思って踏み入らないようにしていた。他人さんの家庭の事情なんざ、そんなめんどくさいことをインプットしたくなかったしな。
だが、今は……
こいつのこと、もっと知りたいと思っている。
「そんな家族と仲良くないの?」
「あー……うん」
凪は俺に背を向けたまま、覇気のない声で話し始めた。
「あんまり面白い話じゃないけど、聞く?」
「……うん」
「……今から言うこと、誰にも言うなよ?」
「言わないって。言う相手がいねえから」
「……俺の親、再婚しててさ」
「……」
おっと……。思っていたより複雑そう。
「俺、母さんの連れ子だったんだ。それで、再婚相手との子どもが生まれてからは……さ」
「……」
「正直、俺って邪魔者じゃん?」
「そ、そんなこと……」
「はは。理玖は優しいな。でも、母さんも義父さんも、理玖ほど優しくなかった」
凪は再婚相手からずっと疎まれていたらしい。実の母親も、再婚相手との子どもが生まれてからは、再婚相手と一緒に凪を邪魔者扱いするようになったとか。
幼い凪は親の気を引きたくて、誰よりもなんでも頑張った。勉強も、スポーツも、それ以外のことも全て。
「……それが逆効果だったんだって、今なら分かる。だって気に食わないよな。可愛がってる子より、鬱陶しい連れ子の方が優秀なんてさ。それに俺、実の父さんに似て顔が良いからさ。家族以外の人たちにチヤホヤされんのは、いつも実の子よりも俺だった。それもまたムカついただろうなー」
最後のほうは冗談っぽく言っていたが、本当にそうだったんだろうと思う。
「……だから、俺が家にいない方が、家族も俺も、しあわせなんだ」
こいつが誰にでも愛想が良いことも、彼女をとっかえひっかえする理由も、ちょっと分かったような気がした。
こいつは愛に……求められることに飢えているんだ。
それと、愛というものをあまり理解できていないんだろう。……俺もそんなもの全然理解できていないだろうが。
「どう? 面白くなかっただろ?」
「そうだな。全然面白くなかった」
「はは。こんな話したの、理玖が初めて」
そうだろうな。お前はこんなこと、誰にも話さないだろう。
「なんで俺には話した?」
「……」
凪が振り返り、俺の顔をじっと見つめた。ほんの少し、泣きそうな顔をしているように見える。
「理玖は受け入れてくれると思ったから」
「……」
「こんな話聞いても、理玖なら今まで通り、俺と接してくれるだろ」
「おう」
「うん。だから話した」
「そっか」
こんな話を聞いて、家に帰れなんてそんなこと、俺にはとてもじゃないが言えない。
でも、そうなるとこいつは他の友だちの家に行くことになる。
〝他の友だち〟が男か女かなんて重要なことじゃない。俺の経験上、こいつは男でもイケるタチだし。
……エロいことを抜きにしても、こいつが他のヤツを頼るのが気に食わないし。
「……俺の実家、来る?」
「えっ?」
……年末もこいつと一緒に過ごしたいし。
「うち来れば? うちのおせち料理美味いぞ」
「えっ……。えっと……。……え?」
さすがに引かれたか……?
年末に実家連れて帰るって、さすがにちょっとアレか……?
前言撤回しようとしたが、その前に凪が口を開いた。
「い、いいの……?」
思っていたと違う反応に、今度は俺が狼狽えた。
「いいのって……お前こそいいの……?」
「う、うん……。俺は……嬉しい……」
「そ、そう? じゃあ……一緒に帰るか?」
「ご家族に迷惑じゃない……?」
「全然。むしろ俺に友だちができたことに大喜びすると思う」
しかも感じの良いイケメンだし。母さんと姉ちゃん興奮しすぎて死にそう。
凪は頬を赤らめ、もじもじした。
「じゃ、じゃあ……お言葉に甘えたい……」
「……」
おかしい。このタイミングでなんでちんこが反応した?
泣きそうな顔でもじもじしている凪が可愛かったからか?
不憫な凪への同情が極まって愛しさに変換されたからか?
とにかく、どうしようもなく、俺は凪にキスしたくなった。だからしてしまった。
「ん……。理玖……?」
「……実家帰ったらこういうことできないから。行く前にしよ」
「……うん」
久しぶりに、俺が上になった。
この日の凪はいつも以上に受け身で可愛かった。声もいつもより甘くて、俺の名前をよく呼んだ。
さすがにここまで自分ちに帰らないと、心配になってくる。
ある朝、ぼうっとベッドで寝ころんでいる凪に尋ねた。
「なあ。お前、年末どうすんの?」
「え? ここで過ごすけど」
「いや……。俺実家帰るし……」
「あっ……。そ、そっか……」
本当は冬休みに入ってすぐ帰省するつもりだったんだが、こいつがいたのでギリギリまで引き延ばしていた。しかし昨晩親から連絡が入り、「いい加減帰って来なさい」とお叱りを受けたのだ。
「俺、今日か明日には実家帰るけど」
「そっかあ……。じゃあ、他の友だちんちにでも行こうかな……」
いろんな意味で心臓が縮こまった。
こいつ、意地でも家に帰らないつもりだ。家族とそんなに険悪な仲なの? なんで?
それに……なに? 俺がいなかったら他の友だちんち行くんだ? 寝泊まりできればどこでもいいの?
……いや、ふたつめはおかしい。俺がムカつく道理はない。
「凪。嫌なら話さなくていいんだけどさ……」
まだこいつとそこまで仲良くなかったとき、凪がポロッと家族についてこぼしたことがあった。
そのときは「まだそこまでの仲じゃない」と思って踏み入らないようにしていた。他人さんの家庭の事情なんざ、そんなめんどくさいことをインプットしたくなかったしな。
だが、今は……
こいつのこと、もっと知りたいと思っている。
「そんな家族と仲良くないの?」
「あー……うん」
凪は俺に背を向けたまま、覇気のない声で話し始めた。
「あんまり面白い話じゃないけど、聞く?」
「……うん」
「……今から言うこと、誰にも言うなよ?」
「言わないって。言う相手がいねえから」
「……俺の親、再婚しててさ」
「……」
おっと……。思っていたより複雑そう。
「俺、母さんの連れ子だったんだ。それで、再婚相手との子どもが生まれてからは……さ」
「……」
「正直、俺って邪魔者じゃん?」
「そ、そんなこと……」
「はは。理玖は優しいな。でも、母さんも義父さんも、理玖ほど優しくなかった」
凪は再婚相手からずっと疎まれていたらしい。実の母親も、再婚相手との子どもが生まれてからは、再婚相手と一緒に凪を邪魔者扱いするようになったとか。
幼い凪は親の気を引きたくて、誰よりもなんでも頑張った。勉強も、スポーツも、それ以外のことも全て。
「……それが逆効果だったんだって、今なら分かる。だって気に食わないよな。可愛がってる子より、鬱陶しい連れ子の方が優秀なんてさ。それに俺、実の父さんに似て顔が良いからさ。家族以外の人たちにチヤホヤされんのは、いつも実の子よりも俺だった。それもまたムカついただろうなー」
最後のほうは冗談っぽく言っていたが、本当にそうだったんだろうと思う。
「……だから、俺が家にいない方が、家族も俺も、しあわせなんだ」
こいつが誰にでも愛想が良いことも、彼女をとっかえひっかえする理由も、ちょっと分かったような気がした。
こいつは愛に……求められることに飢えているんだ。
それと、愛というものをあまり理解できていないんだろう。……俺もそんなもの全然理解できていないだろうが。
「どう? 面白くなかっただろ?」
「そうだな。全然面白くなかった」
「はは。こんな話したの、理玖が初めて」
そうだろうな。お前はこんなこと、誰にも話さないだろう。
「なんで俺には話した?」
「……」
凪が振り返り、俺の顔をじっと見つめた。ほんの少し、泣きそうな顔をしているように見える。
「理玖は受け入れてくれると思ったから」
「……」
「こんな話聞いても、理玖なら今まで通り、俺と接してくれるだろ」
「おう」
「うん。だから話した」
「そっか」
こんな話を聞いて、家に帰れなんてそんなこと、俺にはとてもじゃないが言えない。
でも、そうなるとこいつは他の友だちの家に行くことになる。
〝他の友だち〟が男か女かなんて重要なことじゃない。俺の経験上、こいつは男でもイケるタチだし。
……エロいことを抜きにしても、こいつが他のヤツを頼るのが気に食わないし。
「……俺の実家、来る?」
「えっ?」
……年末もこいつと一緒に過ごしたいし。
「うち来れば? うちのおせち料理美味いぞ」
「えっ……。えっと……。……え?」
さすがに引かれたか……?
年末に実家連れて帰るって、さすがにちょっとアレか……?
前言撤回しようとしたが、その前に凪が口を開いた。
「い、いいの……?」
思っていたと違う反応に、今度は俺が狼狽えた。
「いいのって……お前こそいいの……?」
「う、うん……。俺は……嬉しい……」
「そ、そう? じゃあ……一緒に帰るか?」
「ご家族に迷惑じゃない……?」
「全然。むしろ俺に友だちができたことに大喜びすると思う」
しかも感じの良いイケメンだし。母さんと姉ちゃん興奮しすぎて死にそう。
凪は頬を赤らめ、もじもじした。
「じゃ、じゃあ……お言葉に甘えたい……」
「……」
おかしい。このタイミングでなんでちんこが反応した?
泣きそうな顔でもじもじしている凪が可愛かったからか?
不憫な凪への同情が極まって愛しさに変換されたからか?
とにかく、どうしようもなく、俺は凪にキスしたくなった。だからしてしまった。
「ん……。理玖……?」
「……実家帰ったらこういうことできないから。行く前にしよ」
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久しぶりに、俺が上になった。
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