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おまけ:夏の北海道
帰省-3
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実家に帰った俺を、両親は温かく迎えてくれた。
夜になると母がテーブルいっぱいに手料理を並べてくれ、父が酌をしてくれる。
久々の家族団らんに、家族以外では得られない安心感を得られた。
小鳥遊と会えないのは寂しいが、やっぱり帰省してよかったと、そのとき俺は思った。
早寝の両親が寝静まった頃、朔也が枕を持って俺の部屋に入ってきた。
見慣れた光景ではあるが、俺はわざとキョトンとした顔をした。
「斗真ー。一緒に寝よー」
そう言ってベッドに潜りこむ朔也に、俺はちょっと引いた声を出す。
「お前な……もう子どもじゃないんだから。自分の部屋で寝ろよ」
「斗真の前ではずっと子どもでいたいんだよ」
俺は高校を卒業するまで実家で暮らしていた。それまでずっと、こうして朔也と同じベッドで寝ていた。
実家を離れてからも、俺が帰省するたびに、朔也はこうして俺と一緒に寝たがる。さすがに社会人になったら止めるだろうと思っていたのだが……そうでもなかった。
俺のベッドに入ると、朔也は幼児退行したかのように子どもっぽく甘えてくる。俺の腕にしがみついたり、俺の背中に頭をぴったりくっつけたり、抱きしめてくれとねだってきたり……
それじゃいけないと分かっていつつも、弟可愛さに応えてしまうのが俺の悪いところだ。
「斗真……挨拶のキスさせて……」
寝る前にする挨拶のキスは、一回で終わらない。
それと……キスだけでは終わらない。
「斗真……ここ、して……」
朔也は俺の手を取り、股間に触れさせた。
「おい……。お前、まだこの癖なくなってないのか……」
「斗真にしてもらうの、一番落ち着くんだ……」
朔也のペニスはもう硬くなっていた。朔也がそれを俺の手に押し付ける。
「斗真……っ、おねがい……」
朔也がこんなことをするのは、元はと言えば俺のせいだ。
なぜなら、俺が――
◇◇◇
今から約十五年前。
十歳になった朔也がおかしな挙動をするようになった。
寝ころんでいる俺の上に乗り股間を押し付けてきたり、一緒に風呂に入ったときに俺にペニスを洗わせたり……
五歳年上の俺には、なぜ朔也がそんなことをするのかがすぐに分かった。
その日の夜もまた、朔也は一緒に寝ている俺の太ももでさりげなくペニスを擦っていた。
勝手にオナニーの道具にされてはかなわない。そんな気持ちが一番強かったことをぼんやり覚えている。
うんざりした俺は、そっと服越しに朔也のペニスに触れた。朔也は自分がしていたことがバレて顔を真っ赤にした。
「ここ、ムズムズするんでしょ?」
「……」
「恥ずかしがらなくていいよ」
朔也は俯き加減にこくりと頷く。
「な、なんか、最近変なんだ……。むずむずして。こすったら気持ちよくて……」
「知ってる。お兄ちゃんもそうだったから分かるよ」
「そうなの……?」
「うん。成長してる証拠だよ。そういうときは、こうやってね――」
「あっ……」
俺は朔也のズボンと下着を下げ、ぴょんと反り返った小さなペニスを指で優しく擦った。
「あっ、あ……っ! お、お兄ちゃん……っ」
「こうすると気持ちいいでしょ。お兄ちゃんに押し付けるんじゃなくて、自分でこうやって擦るんだよ」
俺の言葉は、初めての快感に溺れる弟の耳には入らなかった。
朔也は俺にしがみつき、幼い声で気持ちよさそうな声を上げる。
「んっ……あっ、お兄ちゃん……っ、気持ちい……っ、気持ちい……」
「知ってるよ。お兄ちゃんもこうして気持ちよくなってるから」
「お兄ちゃんもっ……これしてるの……?」
「うん。男の子はみんなしてるよ」
しばらく擦っていると、朔也がぶるっと震えた。そして、怯えた声を出す。
「お兄ちゃん……っ、なんか、変……っ。こ、こわい……っ」
「大丈夫だから」
「あっ、あっ……んんっ……!!」
それが、朔也が精通した日のできごとだ。
俺が朔也を精通させた。朔也に性的なことを初めて教えたのは、俺だった。
それと、俺に相手を射精させる悦びを初めて教えたのは、朔也だった。
射精の快感を知った朔也は、毎晩のように俺にペニスを擦らせるようになった。
思春期まっさかりだった俺も、弟を気持ちよくさせることを内心楽しんでいた。
俺と朔也との行為は徐々にエスカレートしていき――
「朔也……お兄ちゃんのも触って……」
「うん……」
お互いのペニスを握り合い、一緒に射精するのが日課になった。
この関係はいつか終わり、いずれ忘れるものだと思っていた。
しかし、終わらなかった。
朔也が中学生になっても、大学生になっても……社会人になっても、朔也はやめなかった。
「こういうの、もうやめようよ」
何度かそう言ったことがある。だが、朔也は頑なに頷いてくれない。
「彼氏できたんだ。もう朔也とこういうことできない」
そう言ったときの朔也の顔は、今でも忘れられない。
「ひどいよ斗真。俺にこういうこと教えたの斗真でしょ……? 最後まで責任取ってよ……」
泣きながら縋りつく弟を、俺は突き放すことができなかった。
◇◇◇
言い訳を並べたが、そんなの建前だって分かっている。
かわいいのだ。いつまで経っても兄離れできない弟が。俺のせいで性癖が歪んでしまった弟が。
俺のことが世界で一番好きな弟が、かわいくて仕方がないのだ。
だから口先だけでしか「やめろ」と言うことができないということを、自分でも分かっていた。
だからこの日の夜も結局、朔也のペニスを握ったのだ。
「もう……。さっさと兄離れしてくれよ……」
なんて、心の底からは思えていない言葉を吐きながら。
夜になると母がテーブルいっぱいに手料理を並べてくれ、父が酌をしてくれる。
久々の家族団らんに、家族以外では得られない安心感を得られた。
小鳥遊と会えないのは寂しいが、やっぱり帰省してよかったと、そのとき俺は思った。
早寝の両親が寝静まった頃、朔也が枕を持って俺の部屋に入ってきた。
見慣れた光景ではあるが、俺はわざとキョトンとした顔をした。
「斗真ー。一緒に寝よー」
そう言ってベッドに潜りこむ朔也に、俺はちょっと引いた声を出す。
「お前な……もう子どもじゃないんだから。自分の部屋で寝ろよ」
「斗真の前ではずっと子どもでいたいんだよ」
俺は高校を卒業するまで実家で暮らしていた。それまでずっと、こうして朔也と同じベッドで寝ていた。
実家を離れてからも、俺が帰省するたびに、朔也はこうして俺と一緒に寝たがる。さすがに社会人になったら止めるだろうと思っていたのだが……そうでもなかった。
俺のベッドに入ると、朔也は幼児退行したかのように子どもっぽく甘えてくる。俺の腕にしがみついたり、俺の背中に頭をぴったりくっつけたり、抱きしめてくれとねだってきたり……
それじゃいけないと分かっていつつも、弟可愛さに応えてしまうのが俺の悪いところだ。
「斗真……挨拶のキスさせて……」
寝る前にする挨拶のキスは、一回で終わらない。
それと……キスだけでは終わらない。
「斗真……ここ、して……」
朔也は俺の手を取り、股間に触れさせた。
「おい……。お前、まだこの癖なくなってないのか……」
「斗真にしてもらうの、一番落ち着くんだ……」
朔也のペニスはもう硬くなっていた。朔也がそれを俺の手に押し付ける。
「斗真……っ、おねがい……」
朔也がこんなことをするのは、元はと言えば俺のせいだ。
なぜなら、俺が――
◇◇◇
今から約十五年前。
十歳になった朔也がおかしな挙動をするようになった。
寝ころんでいる俺の上に乗り股間を押し付けてきたり、一緒に風呂に入ったときに俺にペニスを洗わせたり……
五歳年上の俺には、なぜ朔也がそんなことをするのかがすぐに分かった。
その日の夜もまた、朔也は一緒に寝ている俺の太ももでさりげなくペニスを擦っていた。
勝手にオナニーの道具にされてはかなわない。そんな気持ちが一番強かったことをぼんやり覚えている。
うんざりした俺は、そっと服越しに朔也のペニスに触れた。朔也は自分がしていたことがバレて顔を真っ赤にした。
「ここ、ムズムズするんでしょ?」
「……」
「恥ずかしがらなくていいよ」
朔也は俯き加減にこくりと頷く。
「な、なんか、最近変なんだ……。むずむずして。こすったら気持ちよくて……」
「知ってる。お兄ちゃんもそうだったから分かるよ」
「そうなの……?」
「うん。成長してる証拠だよ。そういうときは、こうやってね――」
「あっ……」
俺は朔也のズボンと下着を下げ、ぴょんと反り返った小さなペニスを指で優しく擦った。
「あっ、あ……っ! お、お兄ちゃん……っ」
「こうすると気持ちいいでしょ。お兄ちゃんに押し付けるんじゃなくて、自分でこうやって擦るんだよ」
俺の言葉は、初めての快感に溺れる弟の耳には入らなかった。
朔也は俺にしがみつき、幼い声で気持ちよさそうな声を上げる。
「んっ……あっ、お兄ちゃん……っ、気持ちい……っ、気持ちい……」
「知ってるよ。お兄ちゃんもこうして気持ちよくなってるから」
「お兄ちゃんもっ……これしてるの……?」
「うん。男の子はみんなしてるよ」
しばらく擦っていると、朔也がぶるっと震えた。そして、怯えた声を出す。
「お兄ちゃん……っ、なんか、変……っ。こ、こわい……っ」
「大丈夫だから」
「あっ、あっ……んんっ……!!」
それが、朔也が精通した日のできごとだ。
俺が朔也を精通させた。朔也に性的なことを初めて教えたのは、俺だった。
それと、俺に相手を射精させる悦びを初めて教えたのは、朔也だった。
射精の快感を知った朔也は、毎晩のように俺にペニスを擦らせるようになった。
思春期まっさかりだった俺も、弟を気持ちよくさせることを内心楽しんでいた。
俺と朔也との行為は徐々にエスカレートしていき――
「朔也……お兄ちゃんのも触って……」
「うん……」
お互いのペニスを握り合い、一緒に射精するのが日課になった。
この関係はいつか終わり、いずれ忘れるものだと思っていた。
しかし、終わらなかった。
朔也が中学生になっても、大学生になっても……社会人になっても、朔也はやめなかった。
「こういうの、もうやめようよ」
何度かそう言ったことがある。だが、朔也は頑なに頷いてくれない。
「彼氏できたんだ。もう朔也とこういうことできない」
そう言ったときの朔也の顔は、今でも忘れられない。
「ひどいよ斗真。俺にこういうこと教えたの斗真でしょ……? 最後まで責任取ってよ……」
泣きながら縋りつく弟を、俺は突き放すことができなかった。
◇◇◇
言い訳を並べたが、そんなの建前だって分かっている。
かわいいのだ。いつまで経っても兄離れできない弟が。俺のせいで性癖が歪んでしまった弟が。
俺のことが世界で一番好きな弟が、かわいくて仕方がないのだ。
だから口先だけでしか「やめろ」と言うことができないということを、自分でも分かっていた。
だからこの日の夜も結局、朔也のペニスを握ったのだ。
「もう……。さっさと兄離れしてくれよ……」
なんて、心の底からは思えていない言葉を吐きながら。
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