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14話
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◇◇◇
「あっ、あぁっ、はっ、んっ……!」
「んっ、おぉっ、おっ、おっ、ナストッ、あぁぁっ、ナストのペニスが卑しくもわしの腹を叩いておるわっ!! はしたないやつめ!!」
「すみませんっ……あぁっ……!」
「あぁぁっ! もうイクッ!! 出るぞナスト!! あぁぁぁっ!!」
「――っ……」
司祭様の腰の上で踊ること約三分、腸の中に精液が流し込まれた。僕が腰を上げようとすると、司祭様に止められる。
「もう一度だ、ナスト」
「はい……」
ヴァルア様に抱かれた日から五日が経った。あの日から、彼は教会に来なくなった。
僕は彼を恨んでいる。残酷な真実――司祭様が僕に教えてきたことは全て、僕を都合よく扱うためのデタラメだったということ――を突き付けるだけ突き付けて、姿を消したのだ。
そのせいで僕は、僕のことを"愚かなほどに従順な男娼"としか思っていない司祭様に、おもちゃのように抱かれる日々に苦悶していた。
今までと同じことをされているだけなのに、真実を知った今、毎日が辛く惨めだ。こんなことなら司祭様に騙されていたままの方が良かった。真実を忘れたい。
司祭様は三度射精して満足したようだったが、僕が一度も射精しなかったことに……それどころか勃起も完全にしなかったことに、不満を抱いているようだった。今日もまた、手でペニスを刺激され、強制的に射精させられた。
最近ずっとこんな感じだ。司祭様は、はじめてヴァルア様と出会ったあの日の晩に、無理に射精を禁止してしまったのが身体的にまずかったのかもしれないと言っていた。僕にはもう司祭様の言動を信じられないけれど、これだけは司祭様の言う通りなんじゃないかと思っている。
「どうしたんだい、ナスト。最近元気がないように見えるが」
事後、司祭様が心配そうに声をかけた。僕は無理に笑顔を作り、それっぽい理由をでっちあげる。
「少し体調が悪くて……申し訳ありません、司祭様」
「そうか。安静にするんだよ。わしの大事なナスト」
そう言って司祭様が僕に接吻した。最近は彼と唇を重ねるたび吐き気に襲われる。匂い、舌使い、息遣い……それらを一番強く感じ取ってしまうのが、接吻だった。
自室に帰りベッドに潜った僕は、布団をかけてくれたアリスに尋ねた。
「アリスは知ってるの?」
「何をでしょうか?」
「真実」
「……」
アリスは答えなかった。けれど僕は、彼女がなにもかも知っていることを悟った。
『なんと恐ろしい』
ヴァルア様が漏らした言葉がふと頭をよぎった。
翌朝、朝の儀式という名の司祭様の性欲処理を済ませたあと、僕たちは礼拝堂に向かった。今日はミサの日だ。
司祭様が大勢の礼拝者に向かって説教をする。どれもこれもそれらしいことを言っているが、どうも嘘っぽい。あんな言葉を信じ切っていた一週間前までの僕はどうかしていた。
説教が終わり、次は僕が聖なる書の朗読をする。朗読中、ちらりと会衆席に目をやった。礼拝者の――特に男性の、熱っぽい視線に初めて気付く。司祭様が僕を見つめるときと同じ目をしている。そうか。彼らはみんな、僕に性的な目を向けていたんだ。
礼拝者が聖なる歌を歌っている間に、献金を募るために会衆席を回る。上の空のまま、僕は献金してくれた礼拝者に祈りを捧げた。
そのとき、籠の中に札束を投げ込まれた。ハッとして顔を上げると、夢にまで出てきた人が立っていた。
「……ヴァルア様」
ヴァルア様はにっこり笑い、手を振った。
「やあ。元気だったかい?」
「……」
「おやおや、少しやつれたね」
「……どうして?」
「どうしてって?」
「どうして今まで来なかったんですか?」
ヴァルア様は首を傾げ、「何を言っているんだ?」という顔で僕を見た。
「あれ以上君に関わると、面倒ごとに巻き込まれそうだったからだけど、どうして?」
人を殴りたいと思ったのは初めてだ。
「どうしてってなんですか?」
「どうしてそんなことを聞くんだい?」
「だって――」
僕が口を開いたとき、ヴァルア様の近くに立っていた礼拝者が叫んだ。
「おい! いつまで待たせるんだ!! 献金したいんだが!?」
「あっ、すみません! 今行きます」
そこを去る前、僕はヴァルア様を睨みつけて言った。
「ミサが終わったあと、物置部屋の中まで来てください」
「ああ、話が早くて助かるよ。もちろん俺もそのつもりさ」
「ふん」
先ほど文句を言っていた礼拝者は銅貨を一枚籠の中に入れ、「ああ、やっと来てくれた。あいつ、金持ちだからって独り占めすんなよな」なんてことをブツクサ呟いていた。
「あっ、あぁっ、はっ、んっ……!」
「んっ、おぉっ、おっ、おっ、ナストッ、あぁぁっ、ナストのペニスが卑しくもわしの腹を叩いておるわっ!! はしたないやつめ!!」
「すみませんっ……あぁっ……!」
「あぁぁっ! もうイクッ!! 出るぞナスト!! あぁぁぁっ!!」
「――っ……」
司祭様の腰の上で踊ること約三分、腸の中に精液が流し込まれた。僕が腰を上げようとすると、司祭様に止められる。
「もう一度だ、ナスト」
「はい……」
ヴァルア様に抱かれた日から五日が経った。あの日から、彼は教会に来なくなった。
僕は彼を恨んでいる。残酷な真実――司祭様が僕に教えてきたことは全て、僕を都合よく扱うためのデタラメだったということ――を突き付けるだけ突き付けて、姿を消したのだ。
そのせいで僕は、僕のことを"愚かなほどに従順な男娼"としか思っていない司祭様に、おもちゃのように抱かれる日々に苦悶していた。
今までと同じことをされているだけなのに、真実を知った今、毎日が辛く惨めだ。こんなことなら司祭様に騙されていたままの方が良かった。真実を忘れたい。
司祭様は三度射精して満足したようだったが、僕が一度も射精しなかったことに……それどころか勃起も完全にしなかったことに、不満を抱いているようだった。今日もまた、手でペニスを刺激され、強制的に射精させられた。
最近ずっとこんな感じだ。司祭様は、はじめてヴァルア様と出会ったあの日の晩に、無理に射精を禁止してしまったのが身体的にまずかったのかもしれないと言っていた。僕にはもう司祭様の言動を信じられないけれど、これだけは司祭様の言う通りなんじゃないかと思っている。
「どうしたんだい、ナスト。最近元気がないように見えるが」
事後、司祭様が心配そうに声をかけた。僕は無理に笑顔を作り、それっぽい理由をでっちあげる。
「少し体調が悪くて……申し訳ありません、司祭様」
「そうか。安静にするんだよ。わしの大事なナスト」
そう言って司祭様が僕に接吻した。最近は彼と唇を重ねるたび吐き気に襲われる。匂い、舌使い、息遣い……それらを一番強く感じ取ってしまうのが、接吻だった。
自室に帰りベッドに潜った僕は、布団をかけてくれたアリスに尋ねた。
「アリスは知ってるの?」
「何をでしょうか?」
「真実」
「……」
アリスは答えなかった。けれど僕は、彼女がなにもかも知っていることを悟った。
『なんと恐ろしい』
ヴァルア様が漏らした言葉がふと頭をよぎった。
翌朝、朝の儀式という名の司祭様の性欲処理を済ませたあと、僕たちは礼拝堂に向かった。今日はミサの日だ。
司祭様が大勢の礼拝者に向かって説教をする。どれもこれもそれらしいことを言っているが、どうも嘘っぽい。あんな言葉を信じ切っていた一週間前までの僕はどうかしていた。
説教が終わり、次は僕が聖なる書の朗読をする。朗読中、ちらりと会衆席に目をやった。礼拝者の――特に男性の、熱っぽい視線に初めて気付く。司祭様が僕を見つめるときと同じ目をしている。そうか。彼らはみんな、僕に性的な目を向けていたんだ。
礼拝者が聖なる歌を歌っている間に、献金を募るために会衆席を回る。上の空のまま、僕は献金してくれた礼拝者に祈りを捧げた。
そのとき、籠の中に札束を投げ込まれた。ハッとして顔を上げると、夢にまで出てきた人が立っていた。
「……ヴァルア様」
ヴァルア様はにっこり笑い、手を振った。
「やあ。元気だったかい?」
「……」
「おやおや、少しやつれたね」
「……どうして?」
「どうしてって?」
「どうして今まで来なかったんですか?」
ヴァルア様は首を傾げ、「何を言っているんだ?」という顔で僕を見た。
「あれ以上君に関わると、面倒ごとに巻き込まれそうだったからだけど、どうして?」
人を殴りたいと思ったのは初めてだ。
「どうしてってなんですか?」
「どうしてそんなことを聞くんだい?」
「だって――」
僕が口を開いたとき、ヴァルア様の近くに立っていた礼拝者が叫んだ。
「おい! いつまで待たせるんだ!! 献金したいんだが!?」
「あっ、すみません! 今行きます」
そこを去る前、僕はヴァルア様を睨みつけて言った。
「ミサが終わったあと、物置部屋の中まで来てください」
「ああ、話が早くて助かるよ。もちろん俺もそのつもりさ」
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