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第三章
第二十五話 性欲と恋愛
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キスの合間に伊吹さんが教えてくれた。
伊吹さんはキスが好きらしい。だからしつこいくらいしちゃうけど許してって言われた。
たぶん俺も伊吹さんと同じくらいキスが好きなんだと思う。気持ちいいし、安心するし、俺の中身をよしよししてもらっているみたいで沁みる。
だから伊吹さんがキスをしてくるたびに、なんか嬉しくなった。
「明日、二人とも唇が真っ赤に腫れあがってるかもね」
「まじで腫れあがるんですか?」
「さあ。こんなにしたことないから分からないわ」
それって、一夜のうちに伊吹さんと一番たくさんキスしたのは俺ってこと?
……俺は脳内であのイケメンにドヤ顔をした。
ゆるやかなキスの時間の中で、雰囲気が少し変わった瞬間があった。
それまで俺の頬を優しく包んでいた手が、すっと首筋をなぞった。キスのせいで過敏になっていた俺は、それだけでぴくっと反応する。
伊吹さんの手が胸をさする。そして、爪で乳首をちょっと引っ掻いた。
「んわっ!」
「ぷっ……くふふふ……。ちょっと、笑わせないでよ。何その声」
「急に何するんですか!! びっくりしたー……」
「急って……だいぶ時間かけたつもりなんだけど……」
「それまでキスしかしてなかったじゃないですか……!!」
伊吹さんは呆れたようにため息を吐く。
「あのね。あたしたち、キスするためにベッドで寝っ転がってるんじゃないのよ」
「うぐ……」
「キスは本番じゃないの。前戯なの。前戯って何か分かる? 本番前の心と体の準備運動よ」
「はい……」
「ついでにいえばボディタッチも前戯よ。あたし、とっても丁寧に前戯してるつもりなんだけど?」
「俺が間違ってました……すみません……」
「だから面白い声出さないでちょうだいね? 笑っちゃうから」
それからは、面白い声を出さないように精一杯耐えた。乳首を触られても、舐められても、抵抗しなかった。
「(ふぐぅぅ……、ふぐぅ……)」
「……もう、だめ、笑っちゃう。小声でふぐふぐ言わないでよ……」
「(んぐ……んぐぅぅ……)」
前戯って苦行だな。ふぐふぐも言わせてもらえないなんて。声が出ないようにきばっていたら「体に力が入りすぎ」と注意されるし、でも力を抜けばふぐふぐ言ってしまうし。どうしたらいいってんだ。
っていうか、さっきの伊吹さんとの会話で、じわじわと実感してきた。
本当に今から伊吹さんとセックスするんだ、って。
俺、ちゃんとやれるのか? ちゃんと挿れられる? 挿れているときにふがふが言っちゃわないか?
男同士でもコンドームは付けるんだよな? 俺、コンドームの付け方分からないんだけど。伊吹さん、教えてくれるかな……。わー、付け方分からないって申告するの恥ずかしいんだけど……。
そんなことを考えているとき、伊吹さんが俺のちんこをそっと撫でた。
「ふぐっ……!」
触られている。俺以外の人の手が握っている。
「力抜いて。大丈夫。怖がらなくていいから」
怖くない。緊張しているだけだ。あとふがふが言わないように頑張っているだけ。
ガッチガチに強張った体をほぐすように、伊吹さんがキスをしてくれた。ちょっと安心して脱力する。
その間も、伊吹さんは手をゆっくり動かしていた。
……やばい。気持ちいい。キスされながら触られるの、やばい。ってかこれ続けられたら絶対すぐ出る。
口が解放されたタイミングで、俺は今の心情を打ち明けた。
「……伊吹さん。俺、上手くできる自信ないです……」
「はじめは誰だってそうよ」
「俺、何も知らないんです」
「あたしが教えてあげるじゃない」
「……コンドームの付け方も教えてくれますか? 付けたことなくて……」
俺の言葉に、伊吹さんが目をしばたいた。
「むっちゃん、あなた……タチするつもりだったの!?」
「タチってなんですか……」
「挿れるほうよ」
「え?」
「え?」
「「……」」
しばしの沈黙。
「あれ。そうじゃないんですか……?」
そこに疑問を抱くという発想すらなかった。
「え。だって、伊吹さん、自称女子だし……」
「ええ。どちらかというと、ネコ――女の子のポジションをすることのほうが多いわ。でも固定じゃないわよ。タチをするのも好き」
「……」
「ストレートの男の子って、タチよりネコのほうがまだハードルが低いって聞いたことがあるんだけど。むっちゃんはどっちがいいの?」
「……いや、分からんです」
「そう。ネコが絶対にいやなんじゃないなら、ネコになりなさい」
そう言って、伊吹さんが俺のちんこを指でつつく。
「ココのはじめては、好きな子のためにとっておきなさい」
「え……?」
戸惑っている俺に、伊吹さんが微笑みかける。
「あたしとセックスしたいって思うのは、新しい世界を知って心と体がびっくりしているせい」
「……」
「性欲と恋愛って、似てるようで全然違うの。男同士でセックスできたからって、男の人を愛せるとは限らない」
そう、なのかな。
伊吹さんと触れ合って興奮するのも、キスをして安心するのも、ただの興味本位からなのか。
「本当に好きな子ができたときに後悔しないようにしましょ」
「……は、い」
「大丈夫! 案外ネコが気持ちよくてハマるストレート男子もいっぱいいるらしいわよ~? むっちゃんも物の試し! やってみましょ!」
何もかも知らない俺は、伊吹さんに流されるしかなかった。
でも、どこか釈然としなかった。
伊吹さんの性欲・恋愛観にも。そのときの伊吹さんの、表面だけの明るい振る舞いにも。
伊吹さんはキスが好きらしい。だからしつこいくらいしちゃうけど許してって言われた。
たぶん俺も伊吹さんと同じくらいキスが好きなんだと思う。気持ちいいし、安心するし、俺の中身をよしよししてもらっているみたいで沁みる。
だから伊吹さんがキスをしてくるたびに、なんか嬉しくなった。
「明日、二人とも唇が真っ赤に腫れあがってるかもね」
「まじで腫れあがるんですか?」
「さあ。こんなにしたことないから分からないわ」
それって、一夜のうちに伊吹さんと一番たくさんキスしたのは俺ってこと?
……俺は脳内であのイケメンにドヤ顔をした。
ゆるやかなキスの時間の中で、雰囲気が少し変わった瞬間があった。
それまで俺の頬を優しく包んでいた手が、すっと首筋をなぞった。キスのせいで過敏になっていた俺は、それだけでぴくっと反応する。
伊吹さんの手が胸をさする。そして、爪で乳首をちょっと引っ掻いた。
「んわっ!」
「ぷっ……くふふふ……。ちょっと、笑わせないでよ。何その声」
「急に何するんですか!! びっくりしたー……」
「急って……だいぶ時間かけたつもりなんだけど……」
「それまでキスしかしてなかったじゃないですか……!!」
伊吹さんは呆れたようにため息を吐く。
「あのね。あたしたち、キスするためにベッドで寝っ転がってるんじゃないのよ」
「うぐ……」
「キスは本番じゃないの。前戯なの。前戯って何か分かる? 本番前の心と体の準備運動よ」
「はい……」
「ついでにいえばボディタッチも前戯よ。あたし、とっても丁寧に前戯してるつもりなんだけど?」
「俺が間違ってました……すみません……」
「だから面白い声出さないでちょうだいね? 笑っちゃうから」
それからは、面白い声を出さないように精一杯耐えた。乳首を触られても、舐められても、抵抗しなかった。
「(ふぐぅぅ……、ふぐぅ……)」
「……もう、だめ、笑っちゃう。小声でふぐふぐ言わないでよ……」
「(んぐ……んぐぅぅ……)」
前戯って苦行だな。ふぐふぐも言わせてもらえないなんて。声が出ないようにきばっていたら「体に力が入りすぎ」と注意されるし、でも力を抜けばふぐふぐ言ってしまうし。どうしたらいいってんだ。
っていうか、さっきの伊吹さんとの会話で、じわじわと実感してきた。
本当に今から伊吹さんとセックスするんだ、って。
俺、ちゃんとやれるのか? ちゃんと挿れられる? 挿れているときにふがふが言っちゃわないか?
男同士でもコンドームは付けるんだよな? 俺、コンドームの付け方分からないんだけど。伊吹さん、教えてくれるかな……。わー、付け方分からないって申告するの恥ずかしいんだけど……。
そんなことを考えているとき、伊吹さんが俺のちんこをそっと撫でた。
「ふぐっ……!」
触られている。俺以外の人の手が握っている。
「力抜いて。大丈夫。怖がらなくていいから」
怖くない。緊張しているだけだ。あとふがふが言わないように頑張っているだけ。
ガッチガチに強張った体をほぐすように、伊吹さんがキスをしてくれた。ちょっと安心して脱力する。
その間も、伊吹さんは手をゆっくり動かしていた。
……やばい。気持ちいい。キスされながら触られるの、やばい。ってかこれ続けられたら絶対すぐ出る。
口が解放されたタイミングで、俺は今の心情を打ち明けた。
「……伊吹さん。俺、上手くできる自信ないです……」
「はじめは誰だってそうよ」
「俺、何も知らないんです」
「あたしが教えてあげるじゃない」
「……コンドームの付け方も教えてくれますか? 付けたことなくて……」
俺の言葉に、伊吹さんが目をしばたいた。
「むっちゃん、あなた……タチするつもりだったの!?」
「タチってなんですか……」
「挿れるほうよ」
「え?」
「え?」
「「……」」
しばしの沈黙。
「あれ。そうじゃないんですか……?」
そこに疑問を抱くという発想すらなかった。
「え。だって、伊吹さん、自称女子だし……」
「ええ。どちらかというと、ネコ――女の子のポジションをすることのほうが多いわ。でも固定じゃないわよ。タチをするのも好き」
「……」
「ストレートの男の子って、タチよりネコのほうがまだハードルが低いって聞いたことがあるんだけど。むっちゃんはどっちがいいの?」
「……いや、分からんです」
「そう。ネコが絶対にいやなんじゃないなら、ネコになりなさい」
そう言って、伊吹さんが俺のちんこを指でつつく。
「ココのはじめては、好きな子のためにとっておきなさい」
「え……?」
戸惑っている俺に、伊吹さんが微笑みかける。
「あたしとセックスしたいって思うのは、新しい世界を知って心と体がびっくりしているせい」
「……」
「性欲と恋愛って、似てるようで全然違うの。男同士でセックスできたからって、男の人を愛せるとは限らない」
そう、なのかな。
伊吹さんと触れ合って興奮するのも、キスをして安心するのも、ただの興味本位からなのか。
「本当に好きな子ができたときに後悔しないようにしましょ」
「……は、い」
「大丈夫! 案外ネコが気持ちよくてハマるストレート男子もいっぱいいるらしいわよ~? むっちゃんも物の試し! やってみましょ!」
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でも、どこか釈然としなかった。
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