からっぽのガラン ~前世の記憶が蘇る世界でただ一人前世の記憶がないけど、からっぽなんかじゃないってことを証明する!~

生野三太

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プロローグ

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 前に並ぶ少年が歩き出し、祭壇の前で立ち止まるとその場で両膝をついて跪き、目を閉じ手を組むと祈り始める。
 すると、上空から暖かでやさしい光が差し込み、彼の周りにはキラキラした光の粒が漂いだした。
 祈りはじめてからしばらくすると、彼の周りを漂っていた光の粒が彼の中に入っていき、先程まで差し込んでいた光も次第に収まっていく。
 光が完全に収まるのを待ち、司祭が声を出した。
 
「御霊は天より彼の中に降りて、前世の記憶を呼び覚まし、女神より記憶に刻まれしクラスを給わった。女神よ。新たなる目覚めを子供らに与えてくださいましたことを感謝いたします」
 
 これで彼の儀式は終わったようで、司祭といくつか言葉を交わした後、その場をあとにしていった。次はいよいよ僕の番だ。
 
「では次の者、前へ」
 
 司祭から声がかかり、僕は前へと足を進めた。
 祭壇の前に立ち、前の彼に習うように跪き祈りを捧げる。
 
(女神様。女神様。前世の記憶を呼び覚まし、素晴らしいスペシャルなクラスを私にお与えください。よろしくお願いします)
 
 心の中で女神様にそう願う。
 しかし、なぜだろうか。いつまで経っても何も起きる気配がなく、後ろにいた時ですら感じた、光が差し込んだ際の暖かさも感じられない。
 何も起こらないこの状況に異常を感じたのか周りがざわつき出し、僕も不安になり目を開けると、司祭は取り乱した様子でこう言った。
 
「からっぽだ……! 彼には授けられるクラスもなければ、それどころか思い出す過去の記憶すら何一つない……!!」
 
 
「へ……?」
 
 _______________________________________________________


 この世界の住民には皆もれなく、前世の記憶があるらしい。らしいというのも僕にはまだ前世の記憶がないからだ。
 大人たちから聞いた話によると、14歳になる年のある日、女神様に祈りを捧げると前世の記憶が呼び覚まされる。
 ただ、前世を思い出したからといって、今までの自分がなくなるわけでも、変わってしまうわけでもなく、多少影響されることもあるみたいだが、前世の記憶に囚われる人は少ないそうだ。
 というのも、前世での一生を終えて、次の人生に記憶が引き継がれる時期も場所も人によって、バラバラで前世の伴侶や恋人または友人と同じ時期、場所で会える確率はあまりにも低いからだ。
 そういうこともあり、前世の記憶についてはそれはそれとして、今世では、前世とは違う容姿と人格をもって皆割り切って新しい人生を生きていくんだとか。
 まだ前世の記憶のない自分にはいまいちピンとこないが、そういうもんなんだそうだ。

 教会の神父から聞いた、この世界の歴史についても少し話しておこうと思う。
 この世界には人とは別に様々な種族が存在していて、中には人に害を与える魔物と呼ばれる生き物もいる。
 この世界の理はそんな者たちにとっても例外でなく、人と同じく記憶まで引き継いでいるかは定かではないが、死んでも一定の周期でどこからか湧いて出て滅ぶことがない。
 そんな中にあって、魔物を統べるものは魔王と呼ばれ、人々から恐れられていた。
 そのうち、人の中から勇者と呼ばれるものが現れ魔王を討ち滅ぼさんと動き出し、やがて見事魔王を討ち果たす。
 しかし、同じく魔王もいつかは蘇ってしまうため、平和な時は長くは続かない。
 ある時、倒しても倒しても時が経っては復活してしまう魔王、その度に善良な人々が蹂躙されてしまうこの悲惨な状況を変えようとする勇者たちのパーティーが現れる。
 勇者パーティーの一人の賢者が魔王を封印するすべを創り出し、倒してしまうのではなく生きたまま封印を施すことによりこの負のループを抜け出そうとしたのだ。
 そして魔王が封印されると、それから新たな魔王が現れることはなく、統べるものがいなくなった魔物たちは次第に方々に散っていった。
 これにより、人々が魔物から脅かされる状況は一変し、魔物たちによる被害は大幅に減少。以前よりも平和な世の中になったそうだ。
 その封印は今のところ解ける気配はなく、今日まで続いている。
 
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