からっぽのガラン ~前世の記憶が蘇る世界でただ一人前世の記憶がないけど、からっぽなんかじゃないってことを証明する!~

生野三太

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第1話

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 田舎の小さな村で農業を営む両親から産まれた。あたたかな陽だまりの中、両親と一緒に土いじりをするのは好きだ。
 だけど、男と生まれたからには夢を見てしまう。冒険者になって未知なる冒険に夢を求めたいと……!

「ガランー! そろそろ起きなさい! 今日は教会に来年の御霊降ろしの説明を聞きに行く日でしょ!」
 
 そうだった。今日は来年に迫った、女神様から前世の記憶とクラスを授けてもらう "御霊降ろし" の儀式の事前の説明を受ける日だった。
 寝惚けまなこでベットから起き上がり、そう声をかけて起こしてくれた母親と朝食を食べている父親に声をかける。
 
「ふぁあ……母さん、父さんおはよう」
「ああ、おはよう」
「朝ごはん食べていくかい?」
「いや、時間もないし顔洗ったらすぐにでるよ!」
 
 父親と挨拶を交わし、母親に朝食の断りを入れてから目を覚ますために顔を洗いに行く。
 
「よし、今日は来年の本番に向けて、儀式についての色んな説明と、ステータスをはじめて確認する大事な日! 気合い入れていくぞ!」
 
 顔を洗い、顔の頬の部分を両手でパンパンと二回叩き気合いを入れる。
 
「じゃあ、行ってきまーす!!」
「はーい。いってらっしゃい」
 
 玄関の扉を勢いよく開けると教会へと飛び出していった。

 
 教会に着くともう同い年の村の子供たちがみんな集まっていた。
 
「ガラン! 遅いぞ!!」
「ごめん、ごめん」
 
 村の仲の良い男の子から声をかけられる。
 
「今日は楽しみだな! ガランはなんでもできるしきっとすごいステータスだぞ!!」
「へへ、そうかな! でも、うん。そうだといいな!」
 
 そう、僕はなんでもできた。初めてやるようなことでも大抵うまくできたし、友達同士集まってやっていた剣術ごっこでも負け知らずだった。やることなすこと人よりうまくできたのだ。
 
「よーし、皆集まったな。ではさっそく話を始めるぞ」
 
 そうこうしてるうちに、教会で神父をしている男の話が始まった。
 
「今日は来年の御霊降ろしの儀式について話をしたいと思う。皆、聞いて知ってるとは思うが御霊降ろしの儀式ではその日、女神様に祈りを捧げると、前世の記憶が呼び覚まされると同時に記憶に刻まれたクラスを授かることになる」
 
 さらに神父の話は続く。神父が言うには、クラスにはメインクラスとサブクラスがあって儀式で授かるのはメインクラスだ。そして、授かるクラスにはランクがあり下から初級職、中級職、上級職、最上級職とそれとは別に勇者や賢者などに代表される特殊職といわれるクラスがある。ちなみにメインクラスについては授かったクラスからランクが上がることも下がることもないそうだ。
 
「ここまででなにか質問があるものはいるか?」
 
 斜め後ろにいた少年が手を上げ質問をする。
 
「メインクラスについてはランクが上がりも下がりもしないとのことですが、サブクラスについては自由に習得し、ランクを上げていくことはできるのでしょうか?」
「いい質問だ。サブクラスについてはメインクラスが何であっても自由になりたいものを初級職から習得することができる。しかしランクを上げるとなるとメインクラスのランクが関わってくる」
 
 司祭曰く、中級職まではメインクラスのランク関係なくランクアップできるらしいが、上級職以降になるとメインクラスが上級職以上でないとそれ以上ランクアップすることができないらしい。
 
「授かったクラスが下位だった者は落胆するかもしれない。その時点で戦闘系の職では頂きを目指すことはできないからだ。ただ、悲観はしないでほしい。冒険者や兵士になって地道に努力をし、中級以下のクラスであっても皆から尊敬され頼られる者も大勢いる。また、生産系の職をサブクラスとするのであれば、メインクラスのランクに関わらず熟練次第で頂点を目指すこともできる。メインクラスに恵まれた者より険しい道を行くことになるかもしれないが、どんなクラスを授かったにせよ努力する心を忘れないでほしい」
 
 そして、他に質問がないかが確認され、皆から手が上がらなかったため、クラスについての話は終わりとなった。
 それにしても、自分の人生の方向性がどんなクラスをもらうかで決まってしまうなんてほんと運要素が強すぎだろこの世界……
 自分には上位のクラスが授かるよう願いたいものだ。

  
「さて、それでは次に現時点でのステータスの確認に移りたいと思う」
 
 神父はそう言うとスッと板状のものを取り出し目の前のテーブルの上に置く。
 
「これは、女神様が置いていかれたとされる古代のアーティファクトだ。使う者の能力が数値化された形でボード上に表示される。現時点ではクラス補正のないステータスが表示されるが、その数値を確認することで、儀式で授かるであろうクラスについて、ある程度予想することができる。これを機会として、儀式までのこれから一年間、自身がなにを準備し、なにを成すべきなのかを考えてみてほしい」
 
 まあ、ようするにだ。儀式自体は一年後で今日は本番ではないとはいえ、今回のステータス確認で今後の行方が決まると言っても過言ではないのだ。
 
「では、皆こちらに並んでくれ」
 
 そう言われると、皆が席を立ち、ステータスボードの前に一列に並んでいき、順々にステータスを確認していく。
 確認を受けた者の話を詳しく聞くには、主に2点を確認するとのこと。
 1点目は全体的なステータスをみる。全体的なステータスが高ければ高いほど上位のクラスを授かるらしい。
 2点目はステータスの偏りをみる。ステータスの能力表示には腕力、器用さ、耐久、敏捷、知力、精神力と6つの項目があり、この各項目の数値の偏りをみることによって、どんな系統のクラスなのかを予測するそうだ。
 2点目については絶対ではなくある程度クラスを絞り込む程度だが、1点目に関してはほぼ間違いないようだ。
 そうこうしてるうちに自分の番が回ってきた。
 
「ガランか。ではステータスボードの上に手をついてくれ」
 
 言われるがままに板の上に手をつくと、板に文字が浮かび上がってくる。
 
「おぉ、これはすごい! 初級職を授かるであろう子たちのステータスの倍近いステータスがあるぞ!!」
 
 浮かび上がったステータスを確認した神父が興奮した様子で感嘆の声をあげた。
 
「というと、上位のクラスがもらえそうなんでしょうか……!?」
「ああ! まだクラスを授かってないにも関わらず、すでにクラスを授かりステータスにクラス補正のついた初級職の者と同等のステータスがある。これなら最上級職を授かる可能性が高い。もしかしたら特殊職なんてこともあるかもしれん!」
 
 最上級職という神父の発言を聞いた周りの皆から歓声があがる。最上級職を授かる者は数少ない。上級職以上を授かれればいいなと思っていたけど、まさか最上級職を授かる可能性があるなんて!
 
「それで、どんな系統のクラスが予測されるんでしょうか?」
「うむ。通常、クラスによって各項目に多少なりとも数値の偏りが出る場合が多くそれをみて判断するんだが、ガランの場合は各項目が満遍なく高い。オールラウンドなクラス系統なんだろうが、正直私もあまり見たことないステータスだ。しいて言うなら勇者とか……なんてな」
 
 神父から勇者という言葉が出るとさらに大きな歓声があがる。神父も冗談めかして言っているし、さすがに勇者なんてことはないだろうが、今からどんなクラスを授かるのか本当に楽しみだ。
 
「まあ、どうなるかはまだ分からんがかなり優秀なクラスを授かることは確かだ。ただ、この結果に慢心することなく来年まで精進するようにな」
「はい! ありがとうございました!!」
 
 神父にお礼を言って、席に戻る。
 
「すげー! やっぱ思った通りだ! やったなガラン!」
「ああ!」
 
 仲の良い男の子も興奮した様子だ。その後も二人で喋っていると、最後の子がステータスの確認を終えて戻ってきた。
 
「皆、お疲れさま。では、最後になるが毎年、儀式をすっぽかそうとする者がたまにいるが、儀式については勇者や聖女など世界にとって重要とされるクラスの者を見出す目的もあるから必ず受けるように。儀式ではもう一度ステータスの確認をさせてもらうが、これを最後にその後のステータスに関しては報告の義務もないし秘匿してもらって構わないので安心してほしい。本来、ステータスはあまり大っぴらにするものでもないしな。さて、ではこれで終わりとする。皆、気をつけて帰るように」
 
 さあ、ステータスの確認も終わり、あとは儀式を待つのみだ。
 家に帰り今回の結果を両親に報告すると二人はそれはもう喜んで、さすが私たちの息子だ。と、大げさに褒めてくれた。
 儀式までの一年は自分なりに体を鍛えたり、冒険者に必要な知識を身につけたりと、期待に胸を膨らませつつ冒険者になるために日々を過ごしているとあっという間に過ぎていった。
 
 ついに明日は儀式の日だ。
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