一番のクズは…

蛭魔だるま

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従兄3

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「で、何があった?」 

俺は部屋に通され椅子に座るなり本題に入った。 

「…なんの話?」 

あいつは少し驚いた顔をしていた。 

「お前最近様子おかしいだろ。旦那様からも心配の電話来たくらいなんだからよ」 

「あの人が?」 

「ああ」 

「そう…。でも、別になんでもないよ?ちょっと…ほら、家のことでもめてたの引きずってるくらいだから」 

それ数週間前の話だろ。

しかもあのとき清々しい顔で、この家に帰ってきたくせに。 

俺は何も言わずじっと見つめた。 

「違うよ、別に。なんともないから。色々、考え事してるだけ。心配されるほどじゃないよ」 

俺にも言えないってことか。 

「…俺、明日からしばらく用事でここらへん離れるんだわ。ついてくるか?気晴らしに」 

「…うーん、やめとこうかな」 

一瞬、頷きかけたのに、断られた。 

「…なに?俺に隠し事?」 

「そんなんじゃないよ!違う、大丈夫だから。なんでもないから」 

俺の手を両手で掴み、じっと俺の目を見てきた。

俺には、お前の目が不安そうに見えるけどね。 

「お前の好きな奴は誰だ?」 

「お兄ちゃん」 

でも俺にも言えないんだな。 

俺が頭を撫でると気持ちよさそうに目を細めた。 

「…何かあったらちゃんと言えよ。いないって言っても連絡くらいは出来るから」 

「うん、ありがと」

 俺は家を後にした。 

そして俺は友人でありあいつの旦那である男に電話をかけた。 

「ああ、もしもし?悩んでることは確かだと思うが、俺にも言えないらしい」 

「…そうか」 

「悪いな、明日から1週間、俺はいない。お前がちゃんと見張っといてくれよ」 

「ああ、もちろん。気をつけるさ。大切な人だからな」 

「じゃあ、任せるわ」 

俺はこのとき、無理にでもそばにいてやった方が良かったのだろうか。
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