おじ専女子の望まぬモテ期

蛭魔だるま

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 授業が終わり、今日の先生との会話を思い出し余韻に浸りながら帰る支度をしていた。

「あっ、天使君」
「どしたんひーたん」

 私は鞄に入っていた大きな箱を彼に渡した。

「これいる?」
「なにこれ」
「…そうめん」
「いる!」

 天使君は箱を抱きしめた。

「家に余ってるからって、親が送ってきたんだけど、多いし…そんなに好きじゃなくて…」
「俺好きだよー。やったー!ありがとひーたん」
「光君、光君、流しそうめんやろうよ」

 流しそうめんならちょっと私もやってみたい気がする。楽しそう。

「いや、楽しそうではあるけど…どこで流すの?」
「…あー…川…?」
「掴めるか…?」

 2人は悩んでいる。

「もし流しそうめんやるなら誘って。そうめん提供するし」
「2人が流しそうめん台買ってくれたら全然やるけどね」

 私と海里は目線をそらした。天使君にそこまでの資金提供は出来ない。

「じゃあ、このそうめんは俺が美味しく頂きまーす」
「あ、わんこそうめん!わんこそうめんやろ!」

 天使君と海里は教室から出ていった。私も行かないと、と思い一歩進むと前に笹森君が現れた。

「立川さん!これを読んで頂けませんか?」

 このいつも全力な感じが私を恐縮させるんだろうなぁ。
 私はとりあえず笹森君の差し出した本を受け取った。

「これは、何の本?」
「僕の好きな本です」

 それをなぜ今私に渡してくるんだ。

「…それで?」
「人に名を尋ねるときはまず自分から名を名乗れって言いますよね。それと同じように、立川さんを知るなら、まず自分のことを知ってもらおうと思いまして」
「…なるほど?」
「なるほどか?」
 
 春の冷静なツッコミが入った。

「僕はこの本で育ちました。僕を構成している一部であるこの本を読めば僕のことがわかると思うんです」
「物語しかわからないと思う」
「…笹森、俺に貸してくれよ。俺が読む」

 春は私の手から本を奪った。

「…まぁ、いいですよ。僕はこの本を気に入っており、布教用にもう1冊持って来ています。立川さん、どうぞ」

 …マジか。春が読んであらすじだけ聞いて読んだことにしようと思っていたのに。

「は!?」
「途中で飽きたら読むのやめるかも」
「いいですよ。こういう話は立川さんの好みではないとわかるので。あと、鳴海君。汚さないでくださいね」
「汚さねぇよ!」

 春は結構笹森君を気に入ったらしい。この前握手もしてたし。合わないと思ってたけど、そういう人たちほど気が合うのかも。
 言い合いを続ける春と笹森君を残し、今度こそ教室を後にした。
    
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