君との恋の物語-Blue Ribbon-

日月香葉

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恋する乙女

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ドイツフィルの東京公演から2週間。

すっかりやる気を取り戻した私は、Aブラスに向けて練習に励んでいる。

ちょうどこの頃に曲目が発表になったので、タイミングは良かった。

せっかく藤原先輩と並んで吹けるというのに、私は一体何に悩んでいたんだか?

今は、この最初で最後のチャンスを逃したくない。心から楽しみたい。

そう思って毎日吹いている。

ここまで回復できたのも、須藤先生と、恒星のおかげ。

2人には、本当に感謝している。

ありがとね。

Aブラスは、12月の3週目の金曜日が本番だ。つまり、クリスマスの1週間前。

なんとしても演奏で悔いを残したくない。

ここはみんなで成功させて、恒星とクリスマスを心置きなく楽しみたい!


今回のAブラスの曲目は、吹奏楽曲の中ではかなり古典的な位置付けにある曲。

派手さはないけど、本当に勉強になる曲だ。

譜面自体はそんなに難しくはないけど、その分しっかり歌い込みたい。

そんな私は、最近先生からいただいたアドバイスをとても大切にしている。

それは、「いつでもソロを吹くクオリティで吹きなさい」

というもの。当たり前といえば当たり前なんだけど、これは結構難しい。

実際全く手を抜いていないつもりでも、合奏での吹き方とソロの吹き方は無意識のうちに使い分けているもの。

それが小慣れて来ると、どうしてもクオリティにも差が出てしまう。

このタイミングでこのアドバイスを頂けたことは、すごくよかった。

もう一度合奏での吹き方を見直すきっかけになったし、手応えも感じている。

まだまだ、できることはたくさんあるわ!

出し惜しみなんてしない!いつでも全力で演奏するの!

楽器屋でのバイトも順調で、この時期は選定会もいっぱいあるので、週末を中心に出勤している。


そして今日は、もはや定例となった楽しみな日。

『結ちゃん、お待たせ!』

そう、藤原先輩とお茶しに行く日!

「あ、いえいえ、じゃぁ、早速行きましょ!」

先輩、いつ見ても可愛いなぁ。

でも、なんだか最近、一段と綺麗になったような気が…これはもしかすると…?

実は、今日のお茶は珍しく先輩からのお誘いだった。

ん~どうにも偶然とは思えないなぁ?w

『いつものお店でいい??』

っと振り向きながら、いつにも増して可愛らしく先輩が言う。

「はい!」

あぁ、これは多分、間違いないなw






学校から少し離れたカフェ。

ここには恒星ともよく来るんだけど、ほんとにコーヒーが美味しいお店。

店内もすっごくお洒落で素敵。

さて、早速だけど、ここは思い切って私から切り出しちゃおう。

「先輩、珍しいですね、何か、ありましたか?」

注文した飲み物が運ばれてきたところで、私から話しかけた。

『ん?うん、えっと、大したことじゃないんだけどね…』

いや、絶対大したことだ。w

私は黙って頷いた。

先輩は、流し目気味に右下の方に視線を止めていた。

綺麗な人。本心でそう思った。

出会った頃よりは少し伸びた黒い髪も、お洒落な眼鏡も、服装も、全部が先輩らしくて、私は見惚れていた。

その上、クラだってプロ並みに上手い。先輩は、いつだって私の憧れの人。

『結ちゃん、樋口君とは順調?』

「え?えぇ、順調です。ちょっと前まで、私の方がちょっと落ち込んでしまってましたけど、おかげさまで、仲良くしてます。」

ちょっと意外だった。こういう方向から来るとは思わなかった。

『そっか。あのさ、変なこと聞いてもいい?』

はいもちろんです。

「えぇ、どうぞ。」

そう言って少しだけ頬を赤らめる。

あぁ、可愛い!!本当に可愛い!!

間違いない。先輩、恋してる。




『樋口君て、3年生の増田君とは、仲良いのかな?』

なるほど、そう言うことかw

「はい、仲良いですよ!よく演奏について相談したりしてるみたいですよ。」

もう一押し。

「どうかしましたか?」

『えっと…いや、なんていうか…。』

可愛い…今のこの先輩の姿を増田先輩に見てほしいわ!!


憧れの先輩なので、からかうようなことはできないけど、なんだかもどかしかった。

私が増田先輩だったら、もう、こんなに可愛らしい人に好かれていると分かっただけで最高に幸せだと思う。

こんなに素敵な人はそうはいないわ。

『彼女とか、いるのかな…?』

もはや私が先輩を持って帰ってしまいたいくらいに可愛かった。

「いないって言ってましたよ。増田先輩とは、直接連絡取れるんですか?」

なるべく優しく声をかけてみた。

『うん、でも、なんて連絡したらいいかなって思っちゃって…。』

あぁ、増田先輩、罪な人ですよ、あなたは。

「なんでもいいと思いますよ!今度一緒にご飯でもどう?とか、買い物に付き合ってほしい、とか!」

『きてくれるかな…?』

行きます!私が!って言いたいところをグッと堪えて

「きてくれますよ!絶対!2人で会ったことはないんですか?」

先輩の顔が一気に真っ赤になった。なんてわかりやすいのかしらw

『1回だけ。でも、それは、たまたま帰りに一緒になって、話し込んでたら、ご飯でもどう?ってなって。』

先輩、私の時にはあんなに冷静だったのに、自分のことになると急に少女なのね。

いいなぁ、可愛らしくて。素敵。

「では、デートではなかったんですね?」

さらに真っ赤になる先輩。ごめんなさい。ちょっと狙いました。

『それは、ない…。』

「まだ、ですよね。」

「これは、私の勘ですけど、多分誘ったらきてくれると思います。じゃなかったら、帰りが偶然一緒になったくらいじゃご飯に行ったりしないんじゃないですか?」

っていうか、多分、増田先輩は藤原先輩の気持ちに気づいてるんじゃないかな?

と私は思った。

『そ、そうかな?』

そうですw

じゃぁ、少し話の方向を変えてみようかしら?

「ご飯に行ったのは、いつ頃の話ですか?」

『1週間くらい前、かな?』

おぉ!それならちょうどいい!

「だったら、簡単じゃないですか!この間はご飯行ってくれてありがとう、から始まって、改めてゆっくりお話したいから、お休みの日に一緒にどうですか?とか。」

『そ、そんなにうまく行くかな?』

「行きますよ!もし心配なら、一緒にメール打ちましょうよ!」

先輩が、カバンから携帯を取り出す。

一度ぎゅっと握りしめてから、私の方を見た。

『じゃ、じゃぁ、私が打ったメールが変じゃないか、見てくれる…?』

ちょっとだけ上目遣いなのがもうなんとも可愛らしくて愛おしくて罪な人!!

そんな先輩に想いを寄せられている増田先輩はもっと罪な人!!!




なんか、私テンションおかしいわ…。冷静にならなきゃ。

すると、先輩の手元で携帯が震えた。

『え…?』

?なにかしら。

メール?

『増田君から、メール…』

え!?

私の方がびっくりして飛び上がりそうだった。

なんだろう、このタイミングで。

『ごめん、ちょっと、メール、読んでいい?』

もちろんです。

「はい、どうぞ」

先輩は、なぜか恐る恐るといった感じで携帯を操作していく。

私はその様子をそれとなく見ていたんだけど、そもそも先輩がこんなになるまで増田先輩を好きになったきっかけってなんだったんだろうと思っていた。

同級生ならともかく打楽器とクラだとあんまり接点がないと思うんだけど…。

まぁいいわ、後で聞いてみましょ。

先輩は、しばらくじっと携帯を見ていた。

現時点では、どういう内容なのかさっぱりわからない。

いいメールなのか悪いメールなのかも…。

先輩は、固まったままの表情で私の方を見た。

え?なに?どうしたの?



『結ちゃん、これ見て。見間違いじゃないよね…?』

そう言って差し出された携帯の画面は、メールが開きっぱなしになっていた。

【先輩、お疲れ様です。先日は一緒に食事に行ってくださってありがとうございました。あれから、まだ1週間ですが、先輩とのお話があまりに楽しかったので、今度は、休日に、一緒にどうですか?お忙しいかと思いますので、もし、ご迷惑でなければ。増田】

























あらまぁ…。増田先輩って、思っていたより積極的なのね。w


「よかったじゃないですか先輩!!こんな偶然ないですよ!きっと運命です!!お返事ついでに先輩の空いてる日を送っちゃいましょう!!」

あーなんか楽しくなってきたw


その後も、先輩は、大丈夫かなぁ?とか、しつこくないかなぁ?とか呟きながらも、幸せそうな顔でメールを打っていた。

先輩って、すごく大人で落ち着いた人だと思っていたけど、そのイメージはいい意味で崩れていった。

もちろん私よりは年上だし、大人っぽいところもあるけど、でも、まだまだ女の子!

なんだか急に親近感が湧いてきて、嬉しくなった。

先輩、そんなに好きになった人なら、絶対成就させましょうねっ!

そうだ、今度、増田先輩と仲良くなったきっかけを聞いてみよっ!






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