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進言
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正直に言うと、「一緒に留学する」と言ったのは半分以上勢いだった。
でも、後悔はしていない。
実際、留学はしてみたかったし、もっともっと音楽的に成長しようと思ったら、
間違いなく1番いい方法だと思うから。
ただ、国内でやりたいことをやるのとは、ちょっと規模が違ってくる。
当然よね。成人しているとは言っても、学生なんだし。
まずは、ちゃんと家族に話をしてみないと。
特に、お父さんには。
…思い出したくもないんだけど、お父さんは元カレを大分気に入っていた。
それがちょっと気になっていたので、彼氏ができたことは話してない。
まぁ、お母さんは知ってるから、話てるかもしれないけど。
私は、基本的には家族に嘘はつかないことにしているので、今回の留学に恒星が関わっていることも話そうと思っている。
海外で生活する以上、周りにどんな人がいるのかは、親なら誰だって気にするだろうし。
そうと決めたら話は早い方が良さそうね。
家に帰ると、お父さんは珍しくリビングにいた。ソファで新聞を読んでる。
私は、背中に話しかける。
「お父さん、ちょっと話があるんだけど」
『長くなるのか?』
振り向かずに声だけが返ってきた。
「うん」
私は素直に答える。
『わかった。』
そう言って立ち上がり、ダイニングテーブルの方に移動した。
私に向かいに座るように促す。
『どうした?』
言葉だけだとぶっきらぼうに感じるけど、決して冷たい声色ではない。
むしろ、機嫌は良さそうだった。
「あのね、突然なんだけど、私、留学したいと思ってるの」
お父さんの目が僅かに見開かれた。珍しい。いつでも冷静なのに。
『どこへだ?』
と思ったら、すぐに具体的な話になった。
やっぱり冷静なのね。
「それは、実はまだ決めてない。」
『何が目的なんだ?』
「今よりもっと整った環境で音楽の勉強がしたいの」
『それなら転校でもよいだろう?』
「うーん、それも考えたけど、やっぱり本場で学んだほうがいいかと」
『本場とは?ドイツか?イタリアか?』
「具体的にはまだ決めてないけど、多分、ドイツかな」
『なるほど。ほかには?』
他に?ちょっと意味がわからなかった。
「他に?」
『だから、他にはどんな理由があるんだ?』
理由?あぁ、留学したい理由か。
え?なんでわかったんだろう?
『お前が、具体的な国や学校を決める前に俺のところに話を持ってくることは珍しい。さては、誰かに薦められたか誘われたんじゃないのか?』
親ってこんなに鋭いものかしら…?
「誘われたというか…」
お父さんは黙って私をみている。これは、逃げちゃダメね。
「彼氏が留学したいと言ったの。その彼氏は、先輩に薦められたと言ってたわ」
無言で先を促す。
「私はそれを応援したいと思っているの。それに、離れたくないのよ。」
ここで一旦言葉を区切った。
「それは、彼、恒星っていうんだけど、恒星は、他の誰よりも才能に恵まれていて、努力も誰よりするし、近くにいるだけで私も頑張れるし、刺激になるの。」
「だから、恒星が外国で学んでいる間もできるだけ近くにいて、何を感じて、何を学んでいるかを知りたいの。きっと、これが私の成長にもつながっていくと思うの。」
「それに、留学は、私もしたいと思っていたことだから。」
無茶を言ってるのはわかってる。きっと反対されるだろうと思う。
でも、私は本気。恒星の近くにいることで、私も最大限に成長できると本気で思っている。
『いつからだ?』
はい?
『いつから留学するつもりなのだ?』
「今年の、秋には。」
『見込みはあるのか?』
「わからない。でも、必ず合格してみせるわ」
しばらく押し黙る父と娘。
お互いに絶対目を逸らさない。
『いいだろう。精一杯やりなさい。まずは学校を決めて、合格を目指しなさい。話はそれからだ』
え?
「いいの?」
『2度は言わん。それに、俺が良くても受からなければ留学はできないんだぞ』
「わかってる。ありがとう。お父さん!私、一生懸命やるわ!」
お父さんは、黙ってリビングから出て行った。
まさかこんなに早く許しが出るとは思わなかったけど、お父さんの言うとおり、落ちたらなんの意味もないわ。
一生懸命やろう!
まずは、ちゃんと学校を決めなきゃ!
今夜にでも、恒星に電話してみよう。
その日の夜。
『もう話したのか!それで、どうだったんだ?』
留学のことを話したと言うと、恒星はすごく驚いてた。
どうやら恒星はまだ家族に相談してないみたい。
「うん、まぁ頑張れってお許しはもらったわ」
これには私も驚いたけど。
電話の向こうで、息を飲むような気配。
『すごいな。さすがは結。』
いや、私はなにも。むしろ恒星がどんな存在かを話しただけで。
「恒星のおかげよ。」
『ん?なにが?』
「留学の許しをもらえたのが。」
話の流れを説明した。
時々相槌を打ちながら聞いてくれたけど、私が恒星についていくような形で留学を希望した
ということを、正直に話したことに驚いていた。
「まぁ、こう言う時は正直に全部話したほうがお父さんにはいいのよ。」
『なるほど。親子だな。』
「そう?」
『うん、結に似てると思う。いや、逆か。』
そう言って少し笑った。
あ、そうだ。
「そういえば、留学って、どこにいくつもりなの?」
すっかり聞きそびれていた。
『うん、ドイツか、アメリカかな。』
それはまた正反対な二択ね。
「そうなの。ドイツはわかるけど、どうしてアメリカなの?」
『簡単に言うと、クラシックならドイツ、ドラムならアメリカ。かな』
なるほど…
「今のところは、イーブン?」
『いや、どちらかと言えばドイツ。けど、ドラムが本当に楽しくてさ。』
そっか。確かにドラム叩いてる時が1番楽しそうだったな。
『どちらにするかは、結にも相談しようと思っていた。』
「アメリカっていうと、ジュリアーノ?」
ジュリアーノっていうのは、すごく有名な大学で、日本からの留学生もかなり多く受け入れているって聞いたことがった。
『そうだね。アメリカならジュリアーノ一択。ドイツは、カールスルーエか、ベルリンかな』
なるほど。
「わかったわ。そしたら、その3校にどんな先生がいて、どんな教育をしているのか調べてみましょ。」
『そうだな。あんまり時間もない。まずは大学にその3校に詳しい先生がいないか聞いてみよう!』
こうして、私たちは本格的に留学の準備を始めた。
でも、後悔はしていない。
実際、留学はしてみたかったし、もっともっと音楽的に成長しようと思ったら、
間違いなく1番いい方法だと思うから。
ただ、国内でやりたいことをやるのとは、ちょっと規模が違ってくる。
当然よね。成人しているとは言っても、学生なんだし。
まずは、ちゃんと家族に話をしてみないと。
特に、お父さんには。
…思い出したくもないんだけど、お父さんは元カレを大分気に入っていた。
それがちょっと気になっていたので、彼氏ができたことは話してない。
まぁ、お母さんは知ってるから、話てるかもしれないけど。
私は、基本的には家族に嘘はつかないことにしているので、今回の留学に恒星が関わっていることも話そうと思っている。
海外で生活する以上、周りにどんな人がいるのかは、親なら誰だって気にするだろうし。
そうと決めたら話は早い方が良さそうね。
家に帰ると、お父さんは珍しくリビングにいた。ソファで新聞を読んでる。
私は、背中に話しかける。
「お父さん、ちょっと話があるんだけど」
『長くなるのか?』
振り向かずに声だけが返ってきた。
「うん」
私は素直に答える。
『わかった。』
そう言って立ち上がり、ダイニングテーブルの方に移動した。
私に向かいに座るように促す。
『どうした?』
言葉だけだとぶっきらぼうに感じるけど、決して冷たい声色ではない。
むしろ、機嫌は良さそうだった。
「あのね、突然なんだけど、私、留学したいと思ってるの」
お父さんの目が僅かに見開かれた。珍しい。いつでも冷静なのに。
『どこへだ?』
と思ったら、すぐに具体的な話になった。
やっぱり冷静なのね。
「それは、実はまだ決めてない。」
『何が目的なんだ?』
「今よりもっと整った環境で音楽の勉強がしたいの」
『それなら転校でもよいだろう?』
「うーん、それも考えたけど、やっぱり本場で学んだほうがいいかと」
『本場とは?ドイツか?イタリアか?』
「具体的にはまだ決めてないけど、多分、ドイツかな」
『なるほど。ほかには?』
他に?ちょっと意味がわからなかった。
「他に?」
『だから、他にはどんな理由があるんだ?』
理由?あぁ、留学したい理由か。
え?なんでわかったんだろう?
『お前が、具体的な国や学校を決める前に俺のところに話を持ってくることは珍しい。さては、誰かに薦められたか誘われたんじゃないのか?』
親ってこんなに鋭いものかしら…?
「誘われたというか…」
お父さんは黙って私をみている。これは、逃げちゃダメね。
「彼氏が留学したいと言ったの。その彼氏は、先輩に薦められたと言ってたわ」
無言で先を促す。
「私はそれを応援したいと思っているの。それに、離れたくないのよ。」
ここで一旦言葉を区切った。
「それは、彼、恒星っていうんだけど、恒星は、他の誰よりも才能に恵まれていて、努力も誰よりするし、近くにいるだけで私も頑張れるし、刺激になるの。」
「だから、恒星が外国で学んでいる間もできるだけ近くにいて、何を感じて、何を学んでいるかを知りたいの。きっと、これが私の成長にもつながっていくと思うの。」
「それに、留学は、私もしたいと思っていたことだから。」
無茶を言ってるのはわかってる。きっと反対されるだろうと思う。
でも、私は本気。恒星の近くにいることで、私も最大限に成長できると本気で思っている。
『いつからだ?』
はい?
『いつから留学するつもりなのだ?』
「今年の、秋には。」
『見込みはあるのか?』
「わからない。でも、必ず合格してみせるわ」
しばらく押し黙る父と娘。
お互いに絶対目を逸らさない。
『いいだろう。精一杯やりなさい。まずは学校を決めて、合格を目指しなさい。話はそれからだ』
え?
「いいの?」
『2度は言わん。それに、俺が良くても受からなければ留学はできないんだぞ』
「わかってる。ありがとう。お父さん!私、一生懸命やるわ!」
お父さんは、黙ってリビングから出て行った。
まさかこんなに早く許しが出るとは思わなかったけど、お父さんの言うとおり、落ちたらなんの意味もないわ。
一生懸命やろう!
まずは、ちゃんと学校を決めなきゃ!
今夜にでも、恒星に電話してみよう。
その日の夜。
『もう話したのか!それで、どうだったんだ?』
留学のことを話したと言うと、恒星はすごく驚いてた。
どうやら恒星はまだ家族に相談してないみたい。
「うん、まぁ頑張れってお許しはもらったわ」
これには私も驚いたけど。
電話の向こうで、息を飲むような気配。
『すごいな。さすがは結。』
いや、私はなにも。むしろ恒星がどんな存在かを話しただけで。
「恒星のおかげよ。」
『ん?なにが?』
「留学の許しをもらえたのが。」
話の流れを説明した。
時々相槌を打ちながら聞いてくれたけど、私が恒星についていくような形で留学を希望した
ということを、正直に話したことに驚いていた。
「まぁ、こう言う時は正直に全部話したほうがお父さんにはいいのよ。」
『なるほど。親子だな。』
「そう?」
『うん、結に似てると思う。いや、逆か。』
そう言って少し笑った。
あ、そうだ。
「そういえば、留学って、どこにいくつもりなの?」
すっかり聞きそびれていた。
『うん、ドイツか、アメリカかな。』
それはまた正反対な二択ね。
「そうなの。ドイツはわかるけど、どうしてアメリカなの?」
『簡単に言うと、クラシックならドイツ、ドラムならアメリカ。かな』
なるほど…
「今のところは、イーブン?」
『いや、どちらかと言えばドイツ。けど、ドラムが本当に楽しくてさ。』
そっか。確かにドラム叩いてる時が1番楽しそうだったな。
『どちらにするかは、結にも相談しようと思っていた。』
「アメリカっていうと、ジュリアーノ?」
ジュリアーノっていうのは、すごく有名な大学で、日本からの留学生もかなり多く受け入れているって聞いたことがった。
『そうだね。アメリカならジュリアーノ一択。ドイツは、カールスルーエか、ベルリンかな』
なるほど。
「わかったわ。そしたら、その3校にどんな先生がいて、どんな教育をしているのか調べてみましょ。」
『そうだな。あんまり時間もない。まずは大学にその3校に詳しい先生がいないか聞いてみよう!』
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