バンキシャ部!

マムシ

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威厳

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 前日、生徒総会を途中で投げ出し走って帰ってしまった青橋。こんなことは生まれて初めだった。教師に無断で早退することも、全校生徒の前でスカートが捲り上がり、恥辱をさらすことも、初めての経験であり、初めての屈辱。
 だが生徒会長たるもの私情で職務を放棄するわけにはいかない。いつも通りの凛とした態度で登校する青橋。
玄関で靴を履き替え、どの生徒にも隔たりなく、にこやかな笑顔で挨拶する。

「おはようございます皆さん方」

 まるで昨日の事件を忘れたかのように気品に振舞うが、周りの目はいつも通りではない。どこか憐れむような視線が痛かった。
 そしてその視線の中には情欲が煮えたぎらせる目までもが……他人の目を気にしたことがない青橋だったが、昨日の今日なだけに過剰に反応してしまう。
 それでも咳払いをし、生徒会長という肩書に見合った品性ある態度を心がけるのだった。
 教室に向かう途中、廊下の一角に人だかりが出来ていることに気が付く。確か掲示物が貼ってある場所だ。

「どうしたのでありますの?」

 近くにいた女子生徒に聞くと、ばつが悪そうな顔で答えた。

「せ、生徒会長……その言いにくいのですが」

 女子生徒は一枚の紙切れを取り出した。そこには青橋の顔写真が添付されていて、昨日の出来事が書かれている。
〈生徒会長、子供もののパンツで登校!? 全校生徒の前で醜態晒す〉
 そして青橋の隣に添えられたのは山芋マンのイラスト。発行元は「バンキシャ部」と書かれていた。
 この場で発狂したいところだがそこをぐっと抑え込む。

「全く下らないわね」

「でも学校中に広まってしまっていて……」

「所詮、そんな記事は数日もすれば他の話題に移りますわ。盛り上がっているのもいまだけです。目先の元に飛びつく者ほど中身のない滑稽物を作り出すものよ」

「そ、そうですよね」

 女子生徒はバンキシャ部の新聞を丸めると、ゴミ箱に捨てるのだった。
 それすらも気にしていない態度をとる青橋。だが内心、雷伝の顔が浮かび上がり、憎くて仕方なかった。
(よくもやってくれたわね、雷伝未知留)
 青筋を立て大股で歩いていった。

 その日の放課後、業務を行うために生徒会室に向かう。扉を開け、中に入ると生徒会役員がそわそわとしていた。
 誰も目を合わせようとしない。まるで腫れ物に触るような態度で皆がぎこちなかった。そんなことは気にせず、会長の席に座り、バッグを机の下に置く。

「こ、これは何ですの……」

 震えた声でそう言った。溢れ出る怒りを抑えきれなくなっている。
 生徒会長の机の上には山芋マンのフィギュアが並べられていた。
 ぎろりと睨みつけると生徒会役員の背筋が伸びた。

「いや、会長がお好きだと思い……」

 こいつらは馬鹿なのか。どういう方法で機嫌を取ろうとしているんだ!?

「なぜこのアニメキャラクターが好きと?」

「い、いやそれは……何となく」

理由くらいは考えておけ。

「見たのですね?」

「は、はい?」

 上ずった声で惚ける生徒会役員たち。自分の仲間がこんなにも頭が悪かったのかと落胆し、怒りを通り越して呆れ返った。
 こんな時、赤頭がいればガツンと言ったはずだ……そういえば今日は副会長の姿が見当たらない。いつもなら青橋が来るよりも先に生徒会室で待機してるというのに、その席は空席だった。

「副会長はどうしたのですの?」

「赤頭さんは今日、学校をお休みになられたと聞いております」

 屈強な体だけが自慢の赤頭が風邪? ずる休みをするような人ではないし、それに青橋の傍を決して離れたかった赤頭。近くにいれないときや外せない用事が入ってどうしても出席できないときは必ず携帯に連絡が入った。
 だが着信履歴やアプリを覗いても、そこに連絡は一件も無い。
 連絡もなしに休むなんてかなり珍しい。

「なんで休んでいるのか知っている人いる?」

「いいえ、理由までは……」

「そう」

 不審に思った青橋は携帯を持ったまま立ち上がった。

「どちらに行かれるのですか」

「ちょっと副会長に確認の連絡を入れていますわ。校舎内でのスマホの使用は原則として禁止ですからね」

 そう言いながら扉に向かう。そして出ようとするとパッと立ち止まった。そして真っ赤な顔をして振り返る。

「あ、あれは私のパンツでは無くてよ。昨日はたまたま弟のパンツを間違えて入ってしまっただけですわ」

「わ、分かっております」

 吃りながら返事をする生徒会役員たち、恐怖に体を震わせた。

「では……」

 玄関を出て校舎の外へ向かった。体育館の裏まで回り込み、赤頭に電話をかけた。
 しかし着信音が鳴っているだけで、一向に電話に出る気配がない。益々心配になる。いつもならワンコールで出るはずだ。
 それなのに今日はどうして……
 不安になりながらも何度も電話をかけていると、背後から声が聞こえた。

「やめなよ星美。あんただって薄々気が付いてるんでしょ」
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