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再び存亡の危機
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「でも一週間くらいなら大丈夫ですよ部長。規制が開けたらまたやればいいだけですし、読者だってそのくらいは待ってくれます。取り敢えず、このリーク記事はもう使わないことですね」
岩寺が声をかけるが、雷伝の反応は無かった。ずっと俯いたままその場から動こうとしない。まるで借金取りに全てを持っていかれた債務者のようだった。
その背中から生気が感じられず、自暴自棄という言葉がよく似合った。
なぜ雷伝がこんなに落ち込んでいるのか、二人は全く理解していなかった。顔を見合わせもう一度同じことを言った。
すると雷伝は顔を上げ、青ざめた表情で振り返るのだった。
「一週間の活動を停止されたらこの部活は廃部になる……」
「「え?」」
素っ頓狂な声が同時に出た。
話は遡ること生徒総会の前々日、あの一大作戦の日である。
赤頭が申請書にサインをするにあたって、提示した交換条件を覚えているだろうか。
「その代わりそいつはあくまでも仮だ。お前たちが以前のアニメ部のように何の実績も残さなければ俺はお前たちをすぐに打ちのめす。一週間、何もしなければ即廃部。それだけは肝に銘じておけ」
つまり一週間の部活動停止を言い渡された瞬間、この三人は元ラガーマンの赤頭に打ちのめされた後、バンキシャ部の廃部が決定する。
部活停止はノーカウント、などということが通じるは相手ではない。生徒会と風紀委員会は独立しているし、生徒会は今か今かと廃部を狙ってるに違いない。
という説明を聞いた二人も同じく蒼褪めるのだった。
「殺されますね……」
「辞世の句を考えであります」
恐らく水を得た魚のような赤頭に飛び跳ねながら蹂躙されるだろう。そんな未来が来週に迫っている。
「いったん落ち着くか……」
いや落ち着いていられるわけがない。
「ど、どうすりゃいいんだぁぁぁぁ!!」
このままだと死ぬ思いで、取り返した部室が水泡に帰してしまう。半泣きで部室の隅から隅を三人が転がりまくった。
今日の部活はそれで終わった。
結果、制服は信じられないほど汚れたが、部室は綺麗になった。
――同日、パソコン室。
この教室は基本、授業で使われているが、放課後はパソコン部が活動場所として使用している。人数は数十人の大型部活である。
だがこの部活、部長が幽霊部員なのだ。
そんな幽霊部員もたまには来る。たまに出なければもはや幽霊部員ですらない。ただの無である。
フードを被った幼児体型の女の子。これがパソコン部の部長だ。
「部長ぉぉぉぉ、寂しかったです!!」
そう言って走ってきたのは副部長の鳥海千佳《とりうみちか》である。眼鏡を掛けていておさげで地味が女の子だが身長が高く、その縦揺れする胸は豪華絢爛と言えよう。
「くっつくな鳥海、暑苦しい。それにウチのことを部長って呼ぶなよ」
「はいっミミ先輩!」
巳塚美里《へびづかみさと》というのが本名だが、誰もこの名前を呼ばない。正確には呼ぶことを許されていない。
なぜなら当人が自分のフルネームを死ぬほど嫌っているからだ。巳の塚って、確かに可愛くはない名字である。
だから巳と美を取ってミミと呼ばせるようにしてるのだ。
「ところで昨日メールで言ってたことはどうなったの?」
「バンキシャ部のことですか?」
「そうそう、あれウチが書いた記事だよな」
「それはもう風紀委員会に打診をして、解決いたしましたよ」
「これであいつらも部活停止か。でもそれだけで終わると思うな……」
ミミは一人で呟きながら目を見開いた。
――翌日
バンキシャ部は恒例の御前会議を開いた。
「これより御前会議を始める!!」
今回は部室がある。わざわざ自宅や公園に移動せずに行える幸せさを噛み締める雷伝。だがこの命もあと一週間である。
「盗作の件なんですが、おかしいことがあるんですよね」
岩寺が頭を掻きながら呟いた。
「どうした? 言ってみろ」
「これが僕たちに訴えられた盗作の記事なのですが……」
そう言ってノエルに投げつけられた記事をポケットから取り出す。
「そしてこれがこの記事のデータです」
岩寺のパソコンには記事のデータが保管されていた。
「ところどころ違いますね」
一風が呟く。
フォントやレイアウトはまるっきり一緒だが、ところどころの文言が改変されていた。まるで裏サイトの記事をそのまま写したようである。
つまりこれは岩寺が書いた記事が丸写しに記事にすり替えられているのだ。これはどう考えもおかしい。
証拠は残っているが、これを風紀委員に提出したところで告発が取り下げられるとは思えない。改変を疑われて、突き返されるのがオチだ。
ただ生徒たちの言質を取ればいいのだが、これを本当にリアルタイムで見た記事なのか聞き込むにしても、もう一週間以上も前の記事だ。詳細まで覚えている人間がどこに居るだろうか。
何となくの内容くらいでその文言の隅までを暗記している者などどこにもいない。
「ちなみにこっちの記事が盗作と言われるのは根本から間違っているんですよ」
そう言って岩寺が取り出したのは盗作として訴えられた五つの記事のうち、二つの記事だった。
「この記事の発行日が先週の十三日、そしてこれが裏サイトの記事の更新日時です」
その二つはまるっきり同じ内容で同時刻にアップされていた。
「これを見た時は裏サイトとバンキシャ部へのリークが重なっただけかと思ったのですが、記事の改変まで行われているとやはりそれだけとは思えない」
「つまり我らは罠にはめられというわけだな」
雷伝が握りこぶしを作って言った。
岩寺が声をかけるが、雷伝の反応は無かった。ずっと俯いたままその場から動こうとしない。まるで借金取りに全てを持っていかれた債務者のようだった。
その背中から生気が感じられず、自暴自棄という言葉がよく似合った。
なぜ雷伝がこんなに落ち込んでいるのか、二人は全く理解していなかった。顔を見合わせもう一度同じことを言った。
すると雷伝は顔を上げ、青ざめた表情で振り返るのだった。
「一週間の活動を停止されたらこの部活は廃部になる……」
「「え?」」
素っ頓狂な声が同時に出た。
話は遡ること生徒総会の前々日、あの一大作戦の日である。
赤頭が申請書にサインをするにあたって、提示した交換条件を覚えているだろうか。
「その代わりそいつはあくまでも仮だ。お前たちが以前のアニメ部のように何の実績も残さなければ俺はお前たちをすぐに打ちのめす。一週間、何もしなければ即廃部。それだけは肝に銘じておけ」
つまり一週間の部活動停止を言い渡された瞬間、この三人は元ラガーマンの赤頭に打ちのめされた後、バンキシャ部の廃部が決定する。
部活停止はノーカウント、などということが通じるは相手ではない。生徒会と風紀委員会は独立しているし、生徒会は今か今かと廃部を狙ってるに違いない。
という説明を聞いた二人も同じく蒼褪めるのだった。
「殺されますね……」
「辞世の句を考えであります」
恐らく水を得た魚のような赤頭に飛び跳ねながら蹂躙されるだろう。そんな未来が来週に迫っている。
「いったん落ち着くか……」
いや落ち着いていられるわけがない。
「ど、どうすりゃいいんだぁぁぁぁ!!」
このままだと死ぬ思いで、取り返した部室が水泡に帰してしまう。半泣きで部室の隅から隅を三人が転がりまくった。
今日の部活はそれで終わった。
結果、制服は信じられないほど汚れたが、部室は綺麗になった。
――同日、パソコン室。
この教室は基本、授業で使われているが、放課後はパソコン部が活動場所として使用している。人数は数十人の大型部活である。
だがこの部活、部長が幽霊部員なのだ。
そんな幽霊部員もたまには来る。たまに出なければもはや幽霊部員ですらない。ただの無である。
フードを被った幼児体型の女の子。これがパソコン部の部長だ。
「部長ぉぉぉぉ、寂しかったです!!」
そう言って走ってきたのは副部長の鳥海千佳《とりうみちか》である。眼鏡を掛けていておさげで地味が女の子だが身長が高く、その縦揺れする胸は豪華絢爛と言えよう。
「くっつくな鳥海、暑苦しい。それにウチのことを部長って呼ぶなよ」
「はいっミミ先輩!」
巳塚美里《へびづかみさと》というのが本名だが、誰もこの名前を呼ばない。正確には呼ぶことを許されていない。
なぜなら当人が自分のフルネームを死ぬほど嫌っているからだ。巳の塚って、確かに可愛くはない名字である。
だから巳と美を取ってミミと呼ばせるようにしてるのだ。
「ところで昨日メールで言ってたことはどうなったの?」
「バンキシャ部のことですか?」
「そうそう、あれウチが書いた記事だよな」
「それはもう風紀委員会に打診をして、解決いたしましたよ」
「これであいつらも部活停止か。でもそれだけで終わると思うな……」
ミミは一人で呟きながら目を見開いた。
――翌日
バンキシャ部は恒例の御前会議を開いた。
「これより御前会議を始める!!」
今回は部室がある。わざわざ自宅や公園に移動せずに行える幸せさを噛み締める雷伝。だがこの命もあと一週間である。
「盗作の件なんですが、おかしいことがあるんですよね」
岩寺が頭を掻きながら呟いた。
「どうした? 言ってみろ」
「これが僕たちに訴えられた盗作の記事なのですが……」
そう言ってノエルに投げつけられた記事をポケットから取り出す。
「そしてこれがこの記事のデータです」
岩寺のパソコンには記事のデータが保管されていた。
「ところどころ違いますね」
一風が呟く。
フォントやレイアウトはまるっきり一緒だが、ところどころの文言が改変されていた。まるで裏サイトの記事をそのまま写したようである。
つまりこれは岩寺が書いた記事が丸写しに記事にすり替えられているのだ。これはどう考えもおかしい。
証拠は残っているが、これを風紀委員に提出したところで告発が取り下げられるとは思えない。改変を疑われて、突き返されるのがオチだ。
ただ生徒たちの言質を取ればいいのだが、これを本当にリアルタイムで見た記事なのか聞き込むにしても、もう一週間以上も前の記事だ。詳細まで覚えている人間がどこに居るだろうか。
何となくの内容くらいでその文言の隅までを暗記している者などどこにもいない。
「ちなみにこっちの記事が盗作と言われるのは根本から間違っているんですよ」
そう言って岩寺が取り出したのは盗作として訴えられた五つの記事のうち、二つの記事だった。
「この記事の発行日が先週の十三日、そしてこれが裏サイトの記事の更新日時です」
その二つはまるっきり同じ内容で同時刻にアップされていた。
「これを見た時は裏サイトとバンキシャ部へのリークが重なっただけかと思ったのですが、記事の改変まで行われているとやはりそれだけとは思えない」
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雷伝が握りこぶしを作って言った。
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