バンキシャ部!

マムシ

文字の大きさ
18 / 41

再び存亡の危機

しおりを挟む
「でも一週間くらいなら大丈夫ですよ部長。規制が開けたらまたやればいいだけですし、読者だってそのくらいは待ってくれます。取り敢えず、このリーク記事はもう使わないことですね」

 岩寺が声をかけるが、雷伝の反応は無かった。ずっと俯いたままその場から動こうとしない。まるで借金取りに全てを持っていかれた債務者のようだった。
 その背中から生気が感じられず、自暴自棄という言葉がよく似合った。

 なぜ雷伝がこんなに落ち込んでいるのか、二人は全く理解していなかった。顔を見合わせもう一度同じことを言った。
 すると雷伝は顔を上げ、青ざめた表情で振り返るのだった。

「一週間の活動を停止されたらこの部活は廃部になる……」

「「え?」」

 素っ頓狂な声が同時に出た。

 話は遡ること生徒総会の前々日、あの一大作戦の日である。
 赤頭が申請書にサインをするにあたって、提示した交換条件を覚えているだろうか。

「その代わりそいつはあくまでも仮だ。お前たちが以前のアニメ部のように何の実績も残さなければ俺はお前たちをすぐに打ちのめす。一週間、何もしなければ即廃部。それだけは肝に銘じておけ」

 つまり一週間の部活動停止を言い渡された瞬間、この三人は元ラガーマンの赤頭に打ちのめされた後、バンキシャ部の廃部が決定する。
 部活停止はノーカウント、などということが通じるは相手ではない。生徒会と風紀委員会は独立しているし、生徒会は今か今かと廃部を狙ってるに違いない。

 という説明を聞いた二人も同じく蒼褪めるのだった。

「殺されますね……」

「辞世の句を考えであります」

 恐らく水を得た魚のような赤頭に飛び跳ねながら蹂躙されるだろう。そんな未来が来週に迫っている。

「いったん落ち着くか……」

 いや落ち着いていられるわけがない。

「ど、どうすりゃいいんだぁぁぁぁ!!」

 このままだと死ぬ思いで、取り返した部室が水泡に帰してしまう。半泣きで部室の隅から隅を三人が転がりまくった。
 今日の部活はそれで終わった。
 結果、制服は信じられないほど汚れたが、部室は綺麗になった。

 ――同日、パソコン室。
 この教室は基本、授業で使われているが、放課後はパソコン部が活動場所として使用している。人数は数十人の大型部活である。
 だがこの部活、部長が幽霊部員なのだ。
 そんな幽霊部員もたまには来る。たまに出なければもはや幽霊部員ですらない。ただの無である。
 フードを被った幼児体型の女の子。これがパソコン部の部長だ。

「部長ぉぉぉぉ、寂しかったです!!」

 そう言って走ってきたのは副部長の鳥海千佳《とりうみちか》である。眼鏡を掛けていておさげで地味が女の子だが身長が高く、その縦揺れする胸は豪華絢爛と言えよう。

「くっつくな鳥海、暑苦しい。それにウチのことを部長って呼ぶなよ」

「はいっミミ先輩!」

 巳塚美里《へびづかみさと》というのが本名だが、誰もこの名前を呼ばない。正確には呼ぶことを許されていない。
 なぜなら当人が自分のフルネームを死ぬほど嫌っているからだ。巳の塚って、確かに可愛くはない名字である。
 だから巳と美を取ってミミと呼ばせるようにしてるのだ。

「ところで昨日メールで言ってたことはどうなったの?」

「バンキシャ部のことですか?」

「そうそう、あれウチが書いた記事だよな」

「それはもう風紀委員会に打診をして、解決いたしましたよ」

「これであいつらも部活停止か。でもそれだけで終わると思うな……」

 ミミは一人で呟きながら目を見開いた。

 ――翌日
 バンキシャ部は恒例の御前会議を開いた。

「これより御前会議を始める!!」

 今回は部室がある。わざわざ自宅や公園に移動せずに行える幸せさを噛み締める雷伝。だがこの命もあと一週間である。

「盗作の件なんですが、おかしいことがあるんですよね」

 岩寺が頭を掻きながら呟いた。

「どうした? 言ってみろ」

「これが僕たちに訴えられた盗作の記事なのですが……」

 そう言ってノエルに投げつけられた記事をポケットから取り出す。

「そしてこれがこの記事のデータです」

 岩寺のパソコンには記事のデータが保管されていた。

「ところどころ違いますね」

 一風が呟く。
 フォントやレイアウトはまるっきり一緒だが、ところどころの文言が改変されていた。まるで裏サイトの記事をそのまま写したようである。
 つまりこれは岩寺が書いた記事が丸写しに記事にすり替えられているのだ。これはどう考えもおかしい。
 証拠は残っているが、これを風紀委員に提出したところで告発が取り下げられるとは思えない。改変を疑われて、突き返されるのがオチだ。
 ただ生徒たちの言質を取ればいいのだが、これを本当にリアルタイムで見た記事なのか聞き込むにしても、もう一週間以上も前の記事だ。詳細まで覚えている人間がどこに居るだろうか。
 何となくの内容くらいでその文言の隅までを暗記している者などどこにもいない。

「ちなみにこっちの記事が盗作と言われるのは根本から間違っているんですよ」

 そう言って岩寺が取り出したのは盗作として訴えられた五つの記事のうち、二つの記事だった。

「この記事の発行日が先週の十三日、そしてこれが裏サイトの記事の更新日時です」

 その二つはまるっきり同じ内容で同時刻にアップされていた。

「これを見た時は裏サイトとバンキシャ部へのリークが重なっただけかと思ったのですが、記事の改変まで行われているとやはりそれだけとは思えない」

「つまり我らは罠にはめられというわけだな」

 雷伝が握りこぶしを作って言った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について

おとら@ 書籍発売中
青春
この物語は、とある理由から目立ちたくないぼっちの少年の成長物語である そんなある日、少年は不良に絡まれている女子を助けてしまったが……。 なんと、彼女は学園のマドンナだった……! こうして平穏に過ごしたい少年の生活は一変することになる。 彼女を避けていたが、度々遭遇してしまう。 そんな中、少年は次第に彼女に惹かれていく……。 そして助けられた少女もまた……。 二人の青春、そして成長物語をご覧ください。 ※中盤から甘々にご注意を。 ※性描写ありは保険です。 他サイトにも掲載しております。

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...