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四
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むぎに連れてこられた場所は
「ここは妖だけが住まう魂迷町」
魂が迷う町。
響きが怖いと思った結は町の出入口の前で顔がひきつっていた。
「······ハロウィンの仮装とかじゃないんだよね?」
「ハロウィン?異国のなにか??」
この世界にはハロウィンと言う概念はないようだ。
町の中にいるのはどれも人とは違う姿の見た事もないものばかりだった。
彼らからすれば結の方が珍しい客人だろう。
「人間?」
「何で人間が?」
すれ違う度に物珍しそうな目で誰しもが結を見る。
その視線がどれも居心地が悪くむぎに抱かれたままの結は体を強ばらせていた。
「ついたよ」
ここがこの町を仕切っていると言う長がいる屋敷だとむぎが言う。
しっかりした作りの大きな木造の門が目の前に見える。
正面からではなくむぎは裏手に回って裏口のドアに入っていく。
「長に会いに来ました」
玄関に入って中にいる首の長い妖にむぎは結を見せれば「あら、大変」と、直ぐに屋敷の中を案内された。
案内された場所は二階の応接間。
首の長い妖····ろくろ首は「長を呼んできますので暫くお待ち下さい」と、言って部屋から出て行った。
「私、お茶貰ってくるね」
むぎは椅子から立ち上がりそそくさと飲み物を貰いに出ていき、応接間の中には結一人だけが取り残されてしまった。
「人間だ」
「人間の女の子だ」
応接間から覗いてくるのは小さな男の子と女の子。
三歳くらいに見える物珍しそうな目で見てくるその顔が可愛らしい。
この子達も妖か何かだろうか。
バッチリ目があって結はニッコリ笑えば子供達はパァァッと目を輝かかせて応接間に入ってきた。
「人間さん。飴ちゃん食べる?」
「甘いお花で作った美味しい飴ちゃん」
はいっと女の子の方の小さな手からは紙に包まれた花の形をしたピンクの可愛らしい飴が乗っていた。
「くれるの?」
「うん!美味しいよぉ」
「ありがとう」
紙の上の飴をヒョイッと摘み食べれば味わった事の無い甘さが口の中に広がった。
「美味しい」と、笑顔で言う結とニコニコ顔の女の子。
「····あーあ。食べちゃった」
「え?」
「食べちゃった食べちゃった!」
まるで悪戯が成功した様に嬉しそうに笑う男の子。
食べてはいけないものだったのだろうか。
「·······お前ら何してんだ?」
----ぇ?
扉から聞こえた声に反応し結は顔を上げる。
「あ、長だ」
「逃げろー!」
「また何か悪戯でもしたのかねぇ?」
長と言う人物の横をすり抜けた瞬間にスウッと子供達は消えていった。
普通ならそこで驚愕する事なのだが
結にとってはもっと信じ難い事が目の前で起きていた。
「·····アンタが言ってた人間かい?
へぇ···美味そうじゃん」
冗談なのか本気なのか分からない言葉を投げかけ結を見下ろす長はニヤァっと笑った。
「ここは妖だけが住まう魂迷町」
魂が迷う町。
響きが怖いと思った結は町の出入口の前で顔がひきつっていた。
「······ハロウィンの仮装とかじゃないんだよね?」
「ハロウィン?異国のなにか??」
この世界にはハロウィンと言う概念はないようだ。
町の中にいるのはどれも人とは違う姿の見た事もないものばかりだった。
彼らからすれば結の方が珍しい客人だろう。
「人間?」
「何で人間が?」
すれ違う度に物珍しそうな目で誰しもが結を見る。
その視線がどれも居心地が悪くむぎに抱かれたままの結は体を強ばらせていた。
「ついたよ」
ここがこの町を仕切っていると言う長がいる屋敷だとむぎが言う。
しっかりした作りの大きな木造の門が目の前に見える。
正面からではなくむぎは裏手に回って裏口のドアに入っていく。
「長に会いに来ました」
玄関に入って中にいる首の長い妖にむぎは結を見せれば「あら、大変」と、直ぐに屋敷の中を案内された。
案内された場所は二階の応接間。
首の長い妖····ろくろ首は「長を呼んできますので暫くお待ち下さい」と、言って部屋から出て行った。
「私、お茶貰ってくるね」
むぎは椅子から立ち上がりそそくさと飲み物を貰いに出ていき、応接間の中には結一人だけが取り残されてしまった。
「人間だ」
「人間の女の子だ」
応接間から覗いてくるのは小さな男の子と女の子。
三歳くらいに見える物珍しそうな目で見てくるその顔が可愛らしい。
この子達も妖か何かだろうか。
バッチリ目があって結はニッコリ笑えば子供達はパァァッと目を輝かかせて応接間に入ってきた。
「人間さん。飴ちゃん食べる?」
「甘いお花で作った美味しい飴ちゃん」
はいっと女の子の方の小さな手からは紙に包まれた花の形をしたピンクの可愛らしい飴が乗っていた。
「くれるの?」
「うん!美味しいよぉ」
「ありがとう」
紙の上の飴をヒョイッと摘み食べれば味わった事の無い甘さが口の中に広がった。
「美味しい」と、笑顔で言う結とニコニコ顔の女の子。
「····あーあ。食べちゃった」
「え?」
「食べちゃった食べちゃった!」
まるで悪戯が成功した様に嬉しそうに笑う男の子。
食べてはいけないものだったのだろうか。
「·······お前ら何してんだ?」
----ぇ?
扉から聞こえた声に反応し結は顔を上げる。
「あ、長だ」
「逃げろー!」
「また何か悪戯でもしたのかねぇ?」
長と言う人物の横をすり抜けた瞬間にスウッと子供達は消えていった。
普通ならそこで驚愕する事なのだが
結にとってはもっと信じ難い事が目の前で起きていた。
「·····アンタが言ってた人間かい?
へぇ···美味そうじゃん」
冗談なのか本気なのか分からない言葉を投げかけ結を見下ろす長はニヤァっと笑った。
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