死に別れた縁と私と異界の繋

海林檎

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 あの神社はどこに行ったのか。
 上空から見渡しても結の言う神社なんて何処をさがしても見当たらない。

「本当にあったのかよ?」

 あったからこの世界に迷い込んだ。
 人間である結がここに居ることが紛れもない事実だ。

 結とムギのいる場所に降りてきた繋がどういう事だと首を傾げる。
 聞きたいのは結の方だろう。


 神社もない。
 火ノ神との謁見もいつになるのか分からない。
 妖怪の住まう町に人間が一人で紛れ込んでいる状態。

 詰んだとしか言えない。



「······結」

 ムギが結を励ます。

「私達も結が人間の世界に帰れるよう調べるからそんなに落ち込まないで」

 もしかしたら南の時の蕃神なら帰る方法を知っているかもしれない。

 ムギはそう言うが····


「西の国のもんが南の蕃神に連絡するのは流石におかしいだろ」

 確かに···自分の世界でも他国のお偉いさんに直接会いに行く人間は稀中の稀だ。
 下手したら売国奴等のレッテルを貼られる事だってあるだろう。


「·····本当にないんですか?」

「信じられねぇってか?」


 結が見た神社は草木に覆われておらずに空が見えていた。

 だから上から見れば目立つはずなのに見当たらないなんてやはり信じられなかった。


「仕方ねぇな」


 ため息をつく繋がヒョイっと結を横に担ぎあげる。

「しっかり捕まってねぇと落ちるぞ」

「え?えぇ!?」



 結を担ぎあげたまま翼を広げビュンッと再び空に飛んだ。


「ふきゃあぁああああぁぁ!!」

 急な飛行に結は驚きパニックになった結は思わず繋の服にしがみつく。


「飛んでる!飛んでるぅう!!」

「そりゃ飛行してっからなぁ」

「怖い怖い怖い怖い!」

「やかましいわ」


 キャーキャー騒ぐ結の声が耳に響く。
 騒ぐだけで繋の下を見ようとしない結に繋が呆れたため息を漏らした。


「あんまり騒ぐようならその口塞ぐぞ」

 どうやって塞ぐのかだなんて今の結にはそんな聞く余裕も考える余裕も無い。


「·····結」


 怖くないから前を見ろと繋が落ち着いた口調で結に言う。
 名前を呼ぶその声があまりにも縁の声に似ていたのか騒ぐのを止めた結はゆっくりと顔を上げた。


 目の前には繋の顔。


「····落ち着いたか?」


「·········ぁ···はい····」


「ん。良い子だ」

 その顔で微笑むのは反則だ。
 結の頬が赤く染まるのは当然の事だが、それと同時に複雑な気持ちになる。



 その笑みが縁とどうしても被るのだ。



「結。辺りを見渡してみろ」


 神社はあるか?と、結に訪ねる。

 結は恐る恐る顔を向けて当たりを見渡す。



「··············」


 そこには何処にも結の言った神社は見当たらなかった。
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