死に別れた縁と私と異界の繋

海林檎

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 姫雛から聞かれたその言葉。

「何ができるの?」


 何か自信を持って出来るものなんてこの世界には結には無いのかもしれない。

 力もなければこれと言った能力もない。

 答えられない結に姫雛はクスッと笑う。

「何でアンタみたいなのがこんな所に来ちゃったのかしらね」

 それは結自身も思っているところだ。

 何故、自分がこの世界にやってきたのか。

 それが分かれば苦労なんてしていない。



「可哀想」

 見下し笑い、結が持っていたお盆を取り上げ持っていった。











「俺は結に持ってくるように言ったんだが?」

「あの子に渡されたのよ。持って行ってって」

 結の代わりに繋にお茶を持って来た姫雛は笑みを浮かべる。


「飲まないの?」

「あぁ」

 結に頼んだお茶出しだ。
 最後まで繋の元へ持ってくるのは結の役目だろう。

 だから本人が持ってきていない茶を飲む事は無い。

「結に限らず姫雛に頼む時も同様だ。最後までお前が出しに来ない限り飲まねぇよ」

 仕事をするなら最後まで責任を持つ事。

 繋の言葉に姫雛はフッと小さく笑う。


 そして、再び結が茶を持っていかなければならない羽目になった。





 ------









「結。お前にもらったこのペンとやらの事だが····」

 墨汁の上の透明の液体は一体どんな成分で作られているのだという質問をされた。

「ちょっとそこまでは···ただ」

 そのジェルのようなものはインクの乾燥を防止・逆流の防止の為に入れられていると結は説明する。

「そうか···」

 では、こちらの世界のもので代用すればいいかと繋は呟く。

「もしかして····ペン作ろうとしてる?」

「あぁ。これだけ書きやすい筆は見た事ないからな」

 随分とこの世界の文明と言うのだろうか、遅れている気がする。
 確かに妖達の妖力等で機械などは必要ない程生活は潤っている。

 洗濯や飲み物は水の妖怪が
 燃やすもの温かいものを作る時は火の妖怪が
 服を作る時は植物の妖怪がいる。

 だからこれと言った化学的な発展はされずに自然的環境のまま時代が流れているのだろう。


 しかし、今回結が持っていたペンを見て繋がペンの生産をする事を決めた。
 それが、この世界の発展の小さな一歩でもあったのかもしれない。


「これが出来れば購入者が増えて町が潤う」

 他国からも依頼が来るかもしれない。

「あはは。そんな大袈裟な····」



 人間界には沢山あるのに···




「大袈裟なんかじゃねぇぞ」



 きっと国の貢献にも繋がるだろうと繋は笑った。

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