死に別れた縁と私と異界の繋

海林檎

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「姫雛」

「···············」



 結が地下牢から離れた後、繋が入って来た。


「出ろ」


 釈放だと、繋が言う。


 「どうして?」

 姫雛は繋を見て驚いた顔をした。
 自分は繋のお気に入りである結を騙して他国の妖怪達に結を襲わせた。

「結が解放してくれってさ」

 その結本人の希望だと言う。
 また、結に危害を加えるかもしれないと、繋が説得するが

「姫雛さんは何度も馬鹿な真似をする程マヌケじゃない」

 と、言ってのけた。


「ただ、お前には暫くこの屋敷から出ていってもらう」

「暫く」と言う言葉はこの町を再興した時に支えてくれた事への恩情が混じっている。

 離れて自分を思い直して本当に反省したら戻って来ればいいという事だろう。


「············」


 いっそ突き放してくれた方がどんなに楽だろうか。
 そんな事を喉から出そうになるのを堪えて姫雛は座敷牢から出た。







 --------







「結ー。本当に良かったの?」


 姫雛を牢から出して····と、ムギが聞く。

「うん。繋にも言ったんだけど、姫雛さんは同じ過ちを犯す人じゃないと思う」

 それこそ繋にこれ以上失望させたくないのなら。

「それに、私も姫雛さんに伝えたし」


 繋に対しての気持ちを。



「····そっか」


 結が良いならそれでいいかとムギが笑う。


 それよりお腹がすいたと結は笑いムギと一緒に食堂へ行こうと誘った。






「俺も誘ってくれねぇのか?」

 後ろからギュッと抱きつかれて結の頭に顎を置く繋が不貞腐れる。

「長、今日は食堂でご飯たべるの?」

「あぁ。たまにはな」

「····じゃあ、皆で食べに行こっ!」

 ムギと繋の手を引き結は二人を連れて食堂の方へと走る。


 途中、掃除担当の箒神に「廊下を走るんじゃない!」と、三人揃って起こられたのは内緒。
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