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おまけの二十話*
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「積極的に一途で一直線なのは、なにも獣人の特権ではないでしょう」
にっこりと笑みを携えはっきりと言いきった。ハロルド中佐は嫌悪を隠さない軽蔑の瞳で威圧してくるが、心拍数が上がるだけで一歩も引きはしない。敵意は敵意で返される。この視線と同じだけの威圧を、俺はこれから何十年かけてでも、行動でこの人に与えていくのだ。
「あの、ダイナーくん、俺、浮気する気これっぽっちもないからね……?」
「わかってます。浮気するライカさんはちょっと嫌ですし、ライカさんはそのままがいいんですよ。俺が諦めないだけの話なので」
「は、ハロルドさん、俺本当にハロルドさんだけなので……!」
くぅんと眉を下げ慌てふためくライカさんがハロルド中佐にすがる。ハロルド中佐はそんなライカさんを庇うように自分の背に隠して、ゴミ虫を追い払うように俺に舌打ちし威嚇する。
他の男に肩を抱かれるライカさんを見るのは胸が酷く痛む。それでも、今はまだ我慢できる。
――ハロルド中佐はライカさんより十歳年上だ。なら、ライカさんより十年先に亡くなるだろう。
俺は、その時にライカさんの隣にいられれば、それだけでよかった。
ギシギシと、慎ましやかだが車体が揺れている。他人が目にすればカーセックスでもしているのだろうと疑いもしないだろうが、実際は夜の荒野の真ん中に他人の目などなく、車内には俺ひとりが熱く吐息し、助手席のシートの座席と背もたれの隙間にちんぽを捩じ込み腰を振っていた。
「っ、はぁ、ライカさん、ライカ、さんっ……!」
無理な体勢にキツさの変わらないシート。それでも俺の雄はライカさんが座り腰を預けていたこれに膨張して、残り香を犯すように我慢汁を塗りたくり精子をびゅるびゅる飛び散らせる。
閉めきった空間は汗と濃い雄汁の臭いが充満していて、ライカさんが額を預けて眠っていた窓ガラスにはすでに自分の精液をぶっかけ手で馴染ませている。
数日前までは、自分が車でオナニーするなんて考えもしなかった。けれど後悔もない。賢者タイムは来ない。掃除なんて全く苦にならないからもう一度と竿を握る。
数度出してもムクムクと勃起するちんぽを手のひらで包み、瞼の裏でライカさんを想像する。
笑顔のときに見えた、あの他人より鋭い犬歯をつぷりと鈴口に突き入れられたい。
自分のちんぽが鳥ひき肉を茹でたようなポロンポロンの弾力しかないダメちんぽになるまでかぷかぷと甘く痛い噛みつきに萎えつかせ、舌と口ですすりあげられ勃起を繰り返して、そのまま勢いもなくとろとろと漏らしてしまう白濁を頬や唇に塗りつけたい。
乳首を弄るようにちうちう吸われるのもいい。
喉の奥にえずくまで突き入れて直接喉に精子を食べてもらうのも捨てがたい。その時にちょっとくらいは噛んでほしいけど、優しいライカさんは俺のお尻にぎゅっと抱きついて自分から口まんこを使わせてくれるのかもしれない。どっちにしろ尿道に残った可哀想な精子もちんぽが痛くなるまで吸いだして飲んでもらうのだ。くちゅくちゅと唾液を出してもらって舌の上に精子と唾液のまざったやつを見せてもらってごっくんしてもらうのも忘れないようにしないと。
全部したい。ライカさんとなら、余すことなく全部を。
下から後ろから前から横から優しく激しくゆっくり早く、円を描くように、貫くように、萎えたちんぽもビキビキにそそり立つちんぽも何週間も我慢して精子を貯めた濃厚ちんぽもヤりすぎて種なんてなくなった負けちんぽも全部食べてもらいたい。いろんなちんぽでライカさんのたまたまをつんつんしたい。もちろん俺もライカさんのを口に咥えて食べ尽くすのだ。
お尻じゃなくても脇でもいいし股でもいい。口でも手でも、ライカさんの身体ならどこでもいい。だけどライカさんのいないベッドだって、もちろんいい。枕でもシーツでも洋服でも。だから別に、ライカさんが眠っていた軍用車にだって、ちんぽを出せばこんなに熱く、硬く、カウパーがだらだらと出て濡れて、ドクドクに血管が浮き出て脈打つグロテスクなちんぽはてかてかに艶めくんだ。
ライカさん。ライカ曹長。やっぱりえっちのときはライカさんだろう。
限界に近いビクビクのちんぽの亀頭をこねくり回せば、またびゅっびゅとずいぶんと薄まった精子が車内に飛び散る。
あーあ、ライカさんがそこで眠ってたら喉にかかっただろうに。かかった精子ごとキスがしたい。そう思えばゴクリと喉が鳴り、またやわやわとちんぽが勃起していった。
数ヵ月に一度はリラに向かう。何回目かのライカさんとの遊び――デートと言いたいけどここは我慢だ――の最中にハロルド中佐に宣戦布告はしたものの、基本的に自分の行動理念は三十から五十年後のハロルド中佐死後の自分とライカさんの円満な家庭なので、略奪する気は毛頭ない。だって、どういうところが好きなのか聞かれれば、俺はライカさんの一途なところが一番好きだった。戦場のかっこよさと同じくらい好き。告白する前に振られた日のことを思い出せば、あのときから俺は、ハロルド中佐に恋や愛をしているライカさんに愛されたいと思い始めたことを懐かしむことができる。
「お兄ちゃんは今日お義兄ちゃんとデートの日で朝から出掛けてるわよ?」
「お留守、ですか……? 今日行きますって手紙書いたのに……?」
「手紙なんて……ああ、もしかして、先月の鉄道ジャックのニュースはトチカにいってないの? リラに入る輸入品が郵便物含め半焼したの。お兄ちゃんが約束破るわけないし、あんたの手紙燃えたわね。軍回線で電話する手があるのにラブレターにこだわるから行き違うのよ」
「そんな……」
毎回思いの丈を綴った手紙は五枚から十枚。量としてはあっさりめだが、自制しなければ倍倍以上になるものを極限まで削ってまとめた恋文だったのに。
玄関先で膝をついて絶望していると、頭上でくすくすと楽しそうにアリビナさんが笑っていた。人の不幸を笑うなんて、と思う部分もあるが、アリビナさんはライカさんの大事な妹さんなので頬を膨らませる抗議くらいしか俺にはできなかった。それでなくとも、ありていに言えばアリビナさんは俺のことをとても嫌っているので、ライカさんが居ないときは慎重に行動しなければ変なことを吹き込まれてしまう危険性がある。
なにせ、アリビナさんはライカさんの本命を応援する派。俺という存在はハロルド中佐とライカさんの番関係を引き裂く間男として認定されているので、どんなマイナスイメージ運動をされるかわからない。
ハーウィン中佐よりも危険視されていることが少し誇らしいけれど、こういう時、ハーウィン中佐ももっと頑張ってほしいと思ってしまう。年の離れた親友に方向転換しようとしているのはわかるが、未練を断ちきれないなら、尊敬する上官でもただの俺の横恋慕仲間である。
「今ごろ互いに洋服でもコーディネートしあってるんじゃないかしら」
「うっ……」
「ディナーの予約してたから、一度お義兄ちゃんの部屋に帰って着せかえっこしたりしてべたべたするんだろうなぁ」
「ぐっ……」
「もちろんお泊まりだから今日は帰ってこないわよ」
「うぐぅ……!」
すべての言葉が鋭く深く胸に刺さった。
ライカさんとハロルド中佐の仲を壊したいわけではないが、俺だってライカさんが自分じゃない人の恋人をしている姿を想像すれば普通に傷つく。そして俺は持久力と計画性特化でメンタルが弱い。
目頭が熱くなる。数ヵ月振りにしか会えない貴重な大型の休日が、リラに行ってトチカに帰るだけで終わってしまう悲しみはとても重たい。
すんと鼻をすすると涙が落ちる。お酒を飲めばもっと涙腺は脆くなるが、平常時でも他人よりこの目は潤みやすかった。
「な、泣いたの? 思ってたよりずっと弱い……」
「ぐずっ、しかたないでしょう……。久しぶりに会える好きな人が、ずずっ、よりによって恋人さんとデートでいないんですからぁ……!」
「も、もう、ここであんたに泣かれるとあたしが悪者みたいじゃない!」
悪者は間違いなく諦めないでいる俺の方だろう。でも外聞が悪くなるのは俺を泣かせたアリビナさんだ。きっと俺が泣かされたとライカさんに伝わればなにかアクションを貰えるだろう。……それも、なかなかいいかもしれない。
およおよ涙で床を濡らせばどんどんアリビナさんは慌て出す。お隣さんとは良好だとライカさんとの手紙で読んだことがあるから、少し声をあげて泣いてみようか。
「あーもう! いいこと教えてあげるから泣き止みなさい!」
「ずずっ、なんです……?」
「お兄ちゃんが振られるなんてあり得ないけど。あり得ないんだけど、もしもの話」
アリビナさんが目の前にしゃがんで膝に肘を立て頬杖をつく。俺はアリビナさんの言うとおり、服の袖で涙を拭い、正座で言葉を待った。
「振られてたら、きっとあんたのところに行ってたでしょうね」
まあ、振られるなんてあり得ないんだけど。
三度も言われれば本当にあり得ないことなんだなと刷り込まれるが、本題はそこじゃない。
「……俺が選ばれてましたか?」
「あり得ないけど、仮の話なら、たぶん可能性は高かったわ。お兄ちゃんの本来の好みは世話を焼きたくなる年下だもの」
「ほんとですか?!」
「勢いよく食いつくわね……。嘘泣きだったの? だから人間は怖いのよ」
アリビナさんは引いた顔で両腕をクロスさせ自分の肩を抱き、ぶるりと身体を震わせそのまま腕をさする。
嘘泣きなんてとんでもない。本泣きだったのに、俺への評価がまたひとつ下がってしまった。
「お兄ちゃん、あたしみたいな年下の素直でいじらしい行動力のある子が好きなの。そういう子と夫婦になると思ってたのに、実際は根暗の年上でなんでも自分でこなすお義兄ちゃんでしょ? 驚いちゃった」
恋人との関係に入り込んでくる算段のあんたに優しいでしょ?
そう言われてみれば、確かにライカさんの大事な恋人さんに敵意を持った俺を拒否することなくこれまで通りに近く接してくれるから、ライカさんは俺にとても優しい。
身体に接触する距離は許してくれなくても、会話の端々で鋭い犬歯を唇の間から覗かせて笑いかけてくれている。行きたいところは嫌な顔ひとつせずどこへだって案内してくれるし、ランチのときだって、物欲しそうな目で見つめれば困った表情を浮かべるものの結局一口食べさせてくれている。ハーウィン中佐へのお土産に持たされる結構重たいお酒さえなければ、うん、ライカさんは俺に、とても、優しい。
自覚すれば世界が輝いて見える。もう絶望なんてどこにもなかった。急に視野が広がる。アリビナさんの背後に広がるライカさん居住域に染み付いたにおいを深呼吸で感じたいくらいには前向きになれたと思う。よし、と拳を作って気合いをいれる。
「もっと、頑張ってみよう……」
うっとり顔でぽつりと漏らした言葉にアリビナさんはげっそりと疲れた顔で立ち上がる。ライカさん似のお顔にはあまりしてほしくない表情だ。俺も正座から立ち上がり、すっかり回復したメンタルでアリビナさんに笑顔でお礼を言った。とてもいいことを聞けた、と。
「ほんと、いい根性。だからあんた嫌いよ。獣人の血でも入ってるんじゃない? 先祖返りの人間って獣人の積極性に計算力が入るから粘着質になるって聞いたことがあるわ。それになんか、あんたって犬に見えるときがあるし」
「あはは、お褒めにあずかり光栄です。だったらライカさんは本当に俺の運命なのかもしれないですね。嬉しいことです。中に入ってもいいですか? 足りない必要なものがあったら俺、なんでも買ってきますよ」
「お断りするわ。あたしお義兄ちゃん派なの。お兄ちゃんのためでもあるけど、雪の少なくなる夏になったらお義兄ちゃんに出資してもらってラザロ駅前にお店建てるの。去年から経営の勉強も教わってるし、その後も大事なアドバイザーなんだから」
「お店を建てる財力には勝てないなあ。わかりました、また数ヵ月後に出直します」
「もう来なくていいけど来たってことだけ伝えておくわ」
「もちろんお願いします。泣かされたなんて手紙に書きませんので安心してください」
ほっと息を吐いて、次来るときは電話しなさいよと指を眼前に突き立てられる。なんだかんだ、ライカさんと半分以上同じ顔のアリビナさんも人を嫌いきれない優しいところがある。俺に会いたくないだけ? ここは素直に助言として受け取ろう。
再度にこやかにお礼を言って、街に出た。
「コーディネートか……。ディナーって言うならドレスコードだろうし、高級洋服関係のお店はあっちかな。中佐のお財布なら結構ランク高いところが妥当でも、ライカさん貯蓄癖あるから少し下げて……」
リラは広い。田舎者からしたら道を曲がっただけで迷ってしまう。ライカさんが甲斐甲斐しく俺を道案内してくれるのは、だからだ。
でも、実のところ、初めてこの街に来た日にハーウィン中佐に置いていかれたタイミングで立地関係は調査済みだった。新しい店ができていれば多少迷うかもしれないが、方向感覚には自信がある。
「うーん、やめておこう」
行ってみようか少し迷って、今日はやめておくことにした。デートの邪魔はライカさんの不幸せだ。せめて、今日がライカさんにとっていい日になるよう願っておこう。
なにせ、俺の行動理念は数十年単位なのだから。
「……」
だからと言って、へこたれないわけでもないのがメンタルの弱いところだ。
「はぁ……。鉄道ジャックってなんなんですか、迷惑極まりない。お酒買って帰ってハーウィン中佐に愚痴聞いてもらお……」
ハロルド中佐といちゃいちゃしているライカさんをイメージして涙目になり、急ぎ頭を振るって中佐を思考から追い出す。残すのはライカさんのはにかみ笑顔だけでいい。可愛らしい。
ああ、許すまじ鉄道ジャック犯人。本来なら今日は俺とライカさんが遊ぶ日――もといデートの日――だったのに。
「は~……」
見上げた空は快晴で、羽ばたく小鳥も簡単に見つけることができる。それが二羽だと流れ弾を食らうみたいに胸が痛くなるからうつむいた。
「……はぁ」
砂嵐も土埃もないこの街は防塵マスクも要らないから、ほろりとため息も出やすいみたいだ。
にっこりと笑みを携えはっきりと言いきった。ハロルド中佐は嫌悪を隠さない軽蔑の瞳で威圧してくるが、心拍数が上がるだけで一歩も引きはしない。敵意は敵意で返される。この視線と同じだけの威圧を、俺はこれから何十年かけてでも、行動でこの人に与えていくのだ。
「あの、ダイナーくん、俺、浮気する気これっぽっちもないからね……?」
「わかってます。浮気するライカさんはちょっと嫌ですし、ライカさんはそのままがいいんですよ。俺が諦めないだけの話なので」
「は、ハロルドさん、俺本当にハロルドさんだけなので……!」
くぅんと眉を下げ慌てふためくライカさんがハロルド中佐にすがる。ハロルド中佐はそんなライカさんを庇うように自分の背に隠して、ゴミ虫を追い払うように俺に舌打ちし威嚇する。
他の男に肩を抱かれるライカさんを見るのは胸が酷く痛む。それでも、今はまだ我慢できる。
――ハロルド中佐はライカさんより十歳年上だ。なら、ライカさんより十年先に亡くなるだろう。
俺は、その時にライカさんの隣にいられれば、それだけでよかった。
ギシギシと、慎ましやかだが車体が揺れている。他人が目にすればカーセックスでもしているのだろうと疑いもしないだろうが、実際は夜の荒野の真ん中に他人の目などなく、車内には俺ひとりが熱く吐息し、助手席のシートの座席と背もたれの隙間にちんぽを捩じ込み腰を振っていた。
「っ、はぁ、ライカさん、ライカ、さんっ……!」
無理な体勢にキツさの変わらないシート。それでも俺の雄はライカさんが座り腰を預けていたこれに膨張して、残り香を犯すように我慢汁を塗りたくり精子をびゅるびゅる飛び散らせる。
閉めきった空間は汗と濃い雄汁の臭いが充満していて、ライカさんが額を預けて眠っていた窓ガラスにはすでに自分の精液をぶっかけ手で馴染ませている。
数日前までは、自分が車でオナニーするなんて考えもしなかった。けれど後悔もない。賢者タイムは来ない。掃除なんて全く苦にならないからもう一度と竿を握る。
数度出してもムクムクと勃起するちんぽを手のひらで包み、瞼の裏でライカさんを想像する。
笑顔のときに見えた、あの他人より鋭い犬歯をつぷりと鈴口に突き入れられたい。
自分のちんぽが鳥ひき肉を茹でたようなポロンポロンの弾力しかないダメちんぽになるまでかぷかぷと甘く痛い噛みつきに萎えつかせ、舌と口ですすりあげられ勃起を繰り返して、そのまま勢いもなくとろとろと漏らしてしまう白濁を頬や唇に塗りつけたい。
乳首を弄るようにちうちう吸われるのもいい。
喉の奥にえずくまで突き入れて直接喉に精子を食べてもらうのも捨てがたい。その時にちょっとくらいは噛んでほしいけど、優しいライカさんは俺のお尻にぎゅっと抱きついて自分から口まんこを使わせてくれるのかもしれない。どっちにしろ尿道に残った可哀想な精子もちんぽが痛くなるまで吸いだして飲んでもらうのだ。くちゅくちゅと唾液を出してもらって舌の上に精子と唾液のまざったやつを見せてもらってごっくんしてもらうのも忘れないようにしないと。
全部したい。ライカさんとなら、余すことなく全部を。
下から後ろから前から横から優しく激しくゆっくり早く、円を描くように、貫くように、萎えたちんぽもビキビキにそそり立つちんぽも何週間も我慢して精子を貯めた濃厚ちんぽもヤりすぎて種なんてなくなった負けちんぽも全部食べてもらいたい。いろんなちんぽでライカさんのたまたまをつんつんしたい。もちろん俺もライカさんのを口に咥えて食べ尽くすのだ。
お尻じゃなくても脇でもいいし股でもいい。口でも手でも、ライカさんの身体ならどこでもいい。だけどライカさんのいないベッドだって、もちろんいい。枕でもシーツでも洋服でも。だから別に、ライカさんが眠っていた軍用車にだって、ちんぽを出せばこんなに熱く、硬く、カウパーがだらだらと出て濡れて、ドクドクに血管が浮き出て脈打つグロテスクなちんぽはてかてかに艶めくんだ。
ライカさん。ライカ曹長。やっぱりえっちのときはライカさんだろう。
限界に近いビクビクのちんぽの亀頭をこねくり回せば、またびゅっびゅとずいぶんと薄まった精子が車内に飛び散る。
あーあ、ライカさんがそこで眠ってたら喉にかかっただろうに。かかった精子ごとキスがしたい。そう思えばゴクリと喉が鳴り、またやわやわとちんぽが勃起していった。
数ヵ月に一度はリラに向かう。何回目かのライカさんとの遊び――デートと言いたいけどここは我慢だ――の最中にハロルド中佐に宣戦布告はしたものの、基本的に自分の行動理念は三十から五十年後のハロルド中佐死後の自分とライカさんの円満な家庭なので、略奪する気は毛頭ない。だって、どういうところが好きなのか聞かれれば、俺はライカさんの一途なところが一番好きだった。戦場のかっこよさと同じくらい好き。告白する前に振られた日のことを思い出せば、あのときから俺は、ハロルド中佐に恋や愛をしているライカさんに愛されたいと思い始めたことを懐かしむことができる。
「お兄ちゃんは今日お義兄ちゃんとデートの日で朝から出掛けてるわよ?」
「お留守、ですか……? 今日行きますって手紙書いたのに……?」
「手紙なんて……ああ、もしかして、先月の鉄道ジャックのニュースはトチカにいってないの? リラに入る輸入品が郵便物含め半焼したの。お兄ちゃんが約束破るわけないし、あんたの手紙燃えたわね。軍回線で電話する手があるのにラブレターにこだわるから行き違うのよ」
「そんな……」
毎回思いの丈を綴った手紙は五枚から十枚。量としてはあっさりめだが、自制しなければ倍倍以上になるものを極限まで削ってまとめた恋文だったのに。
玄関先で膝をついて絶望していると、頭上でくすくすと楽しそうにアリビナさんが笑っていた。人の不幸を笑うなんて、と思う部分もあるが、アリビナさんはライカさんの大事な妹さんなので頬を膨らませる抗議くらいしか俺にはできなかった。それでなくとも、ありていに言えばアリビナさんは俺のことをとても嫌っているので、ライカさんが居ないときは慎重に行動しなければ変なことを吹き込まれてしまう危険性がある。
なにせ、アリビナさんはライカさんの本命を応援する派。俺という存在はハロルド中佐とライカさんの番関係を引き裂く間男として認定されているので、どんなマイナスイメージ運動をされるかわからない。
ハーウィン中佐よりも危険視されていることが少し誇らしいけれど、こういう時、ハーウィン中佐ももっと頑張ってほしいと思ってしまう。年の離れた親友に方向転換しようとしているのはわかるが、未練を断ちきれないなら、尊敬する上官でもただの俺の横恋慕仲間である。
「今ごろ互いに洋服でもコーディネートしあってるんじゃないかしら」
「うっ……」
「ディナーの予約してたから、一度お義兄ちゃんの部屋に帰って着せかえっこしたりしてべたべたするんだろうなぁ」
「ぐっ……」
「もちろんお泊まりだから今日は帰ってこないわよ」
「うぐぅ……!」
すべての言葉が鋭く深く胸に刺さった。
ライカさんとハロルド中佐の仲を壊したいわけではないが、俺だってライカさんが自分じゃない人の恋人をしている姿を想像すれば普通に傷つく。そして俺は持久力と計画性特化でメンタルが弱い。
目頭が熱くなる。数ヵ月振りにしか会えない貴重な大型の休日が、リラに行ってトチカに帰るだけで終わってしまう悲しみはとても重たい。
すんと鼻をすすると涙が落ちる。お酒を飲めばもっと涙腺は脆くなるが、平常時でも他人よりこの目は潤みやすかった。
「な、泣いたの? 思ってたよりずっと弱い……」
「ぐずっ、しかたないでしょう……。久しぶりに会える好きな人が、ずずっ、よりによって恋人さんとデートでいないんですからぁ……!」
「も、もう、ここであんたに泣かれるとあたしが悪者みたいじゃない!」
悪者は間違いなく諦めないでいる俺の方だろう。でも外聞が悪くなるのは俺を泣かせたアリビナさんだ。きっと俺が泣かされたとライカさんに伝わればなにかアクションを貰えるだろう。……それも、なかなかいいかもしれない。
およおよ涙で床を濡らせばどんどんアリビナさんは慌て出す。お隣さんとは良好だとライカさんとの手紙で読んだことがあるから、少し声をあげて泣いてみようか。
「あーもう! いいこと教えてあげるから泣き止みなさい!」
「ずずっ、なんです……?」
「お兄ちゃんが振られるなんてあり得ないけど。あり得ないんだけど、もしもの話」
アリビナさんが目の前にしゃがんで膝に肘を立て頬杖をつく。俺はアリビナさんの言うとおり、服の袖で涙を拭い、正座で言葉を待った。
「振られてたら、きっとあんたのところに行ってたでしょうね」
まあ、振られるなんてあり得ないんだけど。
三度も言われれば本当にあり得ないことなんだなと刷り込まれるが、本題はそこじゃない。
「……俺が選ばれてましたか?」
「あり得ないけど、仮の話なら、たぶん可能性は高かったわ。お兄ちゃんの本来の好みは世話を焼きたくなる年下だもの」
「ほんとですか?!」
「勢いよく食いつくわね……。嘘泣きだったの? だから人間は怖いのよ」
アリビナさんは引いた顔で両腕をクロスさせ自分の肩を抱き、ぶるりと身体を震わせそのまま腕をさする。
嘘泣きなんてとんでもない。本泣きだったのに、俺への評価がまたひとつ下がってしまった。
「お兄ちゃん、あたしみたいな年下の素直でいじらしい行動力のある子が好きなの。そういう子と夫婦になると思ってたのに、実際は根暗の年上でなんでも自分でこなすお義兄ちゃんでしょ? 驚いちゃった」
恋人との関係に入り込んでくる算段のあんたに優しいでしょ?
そう言われてみれば、確かにライカさんの大事な恋人さんに敵意を持った俺を拒否することなくこれまで通りに近く接してくれるから、ライカさんは俺にとても優しい。
身体に接触する距離は許してくれなくても、会話の端々で鋭い犬歯を唇の間から覗かせて笑いかけてくれている。行きたいところは嫌な顔ひとつせずどこへだって案内してくれるし、ランチのときだって、物欲しそうな目で見つめれば困った表情を浮かべるものの結局一口食べさせてくれている。ハーウィン中佐へのお土産に持たされる結構重たいお酒さえなければ、うん、ライカさんは俺に、とても、優しい。
自覚すれば世界が輝いて見える。もう絶望なんてどこにもなかった。急に視野が広がる。アリビナさんの背後に広がるライカさん居住域に染み付いたにおいを深呼吸で感じたいくらいには前向きになれたと思う。よし、と拳を作って気合いをいれる。
「もっと、頑張ってみよう……」
うっとり顔でぽつりと漏らした言葉にアリビナさんはげっそりと疲れた顔で立ち上がる。ライカさん似のお顔にはあまりしてほしくない表情だ。俺も正座から立ち上がり、すっかり回復したメンタルでアリビナさんに笑顔でお礼を言った。とてもいいことを聞けた、と。
「ほんと、いい根性。だからあんた嫌いよ。獣人の血でも入ってるんじゃない? 先祖返りの人間って獣人の積極性に計算力が入るから粘着質になるって聞いたことがあるわ。それになんか、あんたって犬に見えるときがあるし」
「あはは、お褒めにあずかり光栄です。だったらライカさんは本当に俺の運命なのかもしれないですね。嬉しいことです。中に入ってもいいですか? 足りない必要なものがあったら俺、なんでも買ってきますよ」
「お断りするわ。あたしお義兄ちゃん派なの。お兄ちゃんのためでもあるけど、雪の少なくなる夏になったらお義兄ちゃんに出資してもらってラザロ駅前にお店建てるの。去年から経営の勉強も教わってるし、その後も大事なアドバイザーなんだから」
「お店を建てる財力には勝てないなあ。わかりました、また数ヵ月後に出直します」
「もう来なくていいけど来たってことだけ伝えておくわ」
「もちろんお願いします。泣かされたなんて手紙に書きませんので安心してください」
ほっと息を吐いて、次来るときは電話しなさいよと指を眼前に突き立てられる。なんだかんだ、ライカさんと半分以上同じ顔のアリビナさんも人を嫌いきれない優しいところがある。俺に会いたくないだけ? ここは素直に助言として受け取ろう。
再度にこやかにお礼を言って、街に出た。
「コーディネートか……。ディナーって言うならドレスコードだろうし、高級洋服関係のお店はあっちかな。中佐のお財布なら結構ランク高いところが妥当でも、ライカさん貯蓄癖あるから少し下げて……」
リラは広い。田舎者からしたら道を曲がっただけで迷ってしまう。ライカさんが甲斐甲斐しく俺を道案内してくれるのは、だからだ。
でも、実のところ、初めてこの街に来た日にハーウィン中佐に置いていかれたタイミングで立地関係は調査済みだった。新しい店ができていれば多少迷うかもしれないが、方向感覚には自信がある。
「うーん、やめておこう」
行ってみようか少し迷って、今日はやめておくことにした。デートの邪魔はライカさんの不幸せだ。せめて、今日がライカさんにとっていい日になるよう願っておこう。
なにせ、俺の行動理念は数十年単位なのだから。
「……」
だからと言って、へこたれないわけでもないのがメンタルの弱いところだ。
「はぁ……。鉄道ジャックってなんなんですか、迷惑極まりない。お酒買って帰ってハーウィン中佐に愚痴聞いてもらお……」
ハロルド中佐といちゃいちゃしているライカさんをイメージして涙目になり、急ぎ頭を振るって中佐を思考から追い出す。残すのはライカさんのはにかみ笑顔だけでいい。可愛らしい。
ああ、許すまじ鉄道ジャック犯人。本来なら今日は俺とライカさんが遊ぶ日――もといデートの日――だったのに。
「は~……」
見上げた空は快晴で、羽ばたく小鳥も簡単に見つけることができる。それが二羽だと流れ弾を食らうみたいに胸が痛くなるからうつむいた。
「……はぁ」
砂嵐も土埃もないこの街は防塵マスクも要らないから、ほろりとため息も出やすいみたいだ。
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親友と、飲み会の悪ふざけでキスをした。単なる罰ゲームだったのに、どうしてもあのキスが忘れられない…。
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※fujossyさんの属性コンテスト『ノンケ受け』部門にて優秀賞をいただいた作品です。
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