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第二部
お誘い *アリア視点
しおりを挟む私たちがここに転移してきてから三日が経ちました。
シュウ以外の騎士たちはようやく歩けるようになってきたところです。
私の治癒魔法が聞くようになって良かったです。
ここに来てから魔法がまた使えるようになりました。
呪い自体を解呪したわけではないのですが、私の力を奪っていたカナリアから離れたからだろう、とティア様がおっしゃっていました。
根本的な解決には至っていないので一時的なものでも、私の力が役に立って嬉しいです。
この三日間でユミさんと仲良くなりました。
天然でマイペースで自分の力に無頓着な方ですが、そこがまた可愛らしい方なのです。
ということをこっそり呟いていたらミシェルさんに仲間認定されてしまいました。
ミシェルさんは私にユミさんがいかに可愛くて愛らしい存在かをひたすら語っていました。およそ半日。
気づけば日が昇っているのにはさすがに焦りました。
そんなミシェルさんですが、なんだかシュウと良く二人でお茶会をしているみたいです。
とても仲良さげに話す二人を見て、なんだかもやもやします。
いつもどことなく気を抜くことのなかったシュウが、ミシェルさんと話しているときはいつも自然体のように感じました。
何なのでしょう、この胸のもやもやは。
気になってユミさんとティア様に相談しました。
ユミさんはそんな気持ちになったことがないからわからないと言っていましたが、ティア様は何か意味ありげな表情を浮かべニヤニヤ。
聞いても答えてくれませんでした。いずれ分かると。
一体どういうことなのでしょうか。
「――アリア」
後ろから私を呼ぶ声が。
振り返るとそこには金の髪に赤い瞳の美少女、ユミさんです。
「ユミさん、どうしたんですか?」
「これからお散歩に行くのだけど、アリアもどうですか?」
「行きます。今日はどこまで?」
私はここに来てからユミさんのお散歩によく付き合うようになりました。
最初は騎士たちの面倒を見ようと思って断わったのですが、気分転換だと言ってシュウに追い出されました。
無理はしていないはずなのですが。
しかし、これがとても楽しいのです。
ユミさんは話していても見ているだけでもとても楽しいですし、それにユミさんと歩いていると自然と動物たちが集まってくるのです。
動物たちに囲まれたことなどないので貴重な体験です。大変モフモフで素晴らしかったです。特に狼たち。
「今日はお花畑の先に行こうと思って。新しい場所の開拓です」
「? あそこの先には行ったことないのですか?」
「ええ。ミシェルがダメだって言うから。でも今日はカイも一緒ですし、何よりアリアもいますからね。安全です」
カイとは…………確か神獣様のお名前でしたね。
最初に挨拶してからしばらく見ませんでしたが、どこにいたのでしょうか。
「カイにはちょっとお願い事をしていたので、ここ三日間は出かけていたのですよ。数時間前に帰ってきました」
そうなんですね。
というか、どうして私の心の声が聞こえているのでしょうか。
一体何をなさったのですかっ。
「アリア、顔に全部出てますよ。…………なるほど、ミシェルが言っていたことが良くわかりました」
「……ミシェルさんはなんと?」
「アリアはとても分かりやすい人だと。……しかし私に似ているとはどういうことかしら?」
う~ん、と唸りながら私の顔をじっと見つめてきます。
あ、ちょっ、そんなじっと見られたら、は、恥ずかしいです……。
たぶんミシェルさんにとってはユミさんも結構わかりやすい人なのでしょう。
私はシュウに良く言われるので少し慣れています。
「う~ん、わからないわ。……まあ、今はいいです。それよりお散歩に行きましょう。新しい場所を見つけるのはワクワクするのですよ♪」
ユミさんとても楽しそうです。
鼻歌交じりにスキップしそうな勢いです。
……何でしょうこの圧倒的美少女は。人類の宝なのではないでしょうか。
シュウも言っていました。
『あの女神のスマイルはヤバイ。あの笑顔一つで戦争が終わるんじゃないかと思うほどだ。曇らせてはならない。絶対にだ!!』
真顔でこんなことを言われて、さすがの私も少し引きました。
相変わらずシュウの言うことはよくわかりません。
ですが、ユミさんの笑顔は大変に愛らしいのです。私の心を鷲掴みです。
「アリア~。行きますよ~」
「あ、はーい。今行きます」
変なことを考えすぎて立ち止まっていました。
少し先でユミさんが手を振っています。その周囲にはもうすでに動物たちが。
早いです。どこから嗅ぎ付けてきたのですか。
慣れた私は気にしないことにします。それでは行きましょう。
今日は楽しい楽しい探検です――――――。
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