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第二部

ピクニック

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 あの後二時間くらい、ミシェルが抱き着いて離れてくれませんでした。
 ティアの言った言葉通りに言った結果なので、助けを求めたのですが眠いからパスと言われました。
 ティア、酷い……。
 それに何より途中ミシェルが「お嬢様……えへ……えへへ……やわやわですねぇ……それにいい匂い……役得……」なんて言いながら鼻血が。
 さすがにこれはアウトです。
 人に見せられません。シュウさんなんかアリアの目を塞いでいましたもの。
 本当、うちのメイドがごめんなさい。

 ミシェルを落ち着かせて(物理)からそろそろ他の騎士さんたちも動けるようになったので、作戦会議をすることにしました。
 今日はいい天気なので聖樹の前でピクニックです。
 私たちが外に出ると、自ずと動物たちが集まってきます。
 最近はその数も増え、今では数えるのも億劫になるほど大所帯です。
 ご飯をもらうために待機する子や私の足元の集まる子、それと聖樹の周囲を走り回って遊ぶ子。様々です。
 ちなみにヴィルは走り回っています。
 元気いっぱいですね。

「お待たせしました~」

 上機嫌なミシェルが大量の料理を運んできました。
 一体何人分の料理を作ったのでしょうか。シートに入りきらないですよ。
 まあ、騎士さんたちがいっぱい食べてくれるでしょう。それに動物たちもたくさんいるので問題なしですね。
 それにしても今日のは特に美味しそうですね。
 騎士さんたちは見たことのない料理に訝し気な眼を向けつつも、喉を鳴らしています。

「たくさんあるのでどうぞ~。おかわりもありますからね~」

 ミシェルがそう言うと、騎士さんたちは我先にと料理に手を伸ばしました。
 そんなに焦らなくてもすぐにはなくなりませんよ。
 ミシェルは私用に果物たっぷりのパンケーキを作ってくれたみたいです。
 とても美味しいです。しかし、解せないことが一つ。
 私もお料理のお手伝いをしようと思ったのですが、ミシェルに止められてしまいました。一体なぜでしょうか。
 ティアもどうしてか私をキッチンに入れないようにしていました。
 いつの間にミシェルと結託していたのですか。これは裏切りと言うものでは?

「お嬢様、そのように納得できない顔をされてもダメですよ。お嬢様にお料理はさせません」

「どうしてですか? アリアは良くて私がダメな理由を教えてください」

「アリアさんはお料理上手ですよ。ここに来てから時々お手伝いしていただいているのですが、かなりの腕前です。サンドリオンのお料理も教えていただきました。それに比べてお嬢様は私が教えているのにも関わらず、劇物を精製するではないですか。ちゃんとしたお料理が作れるようになるまでは許可しませんからね」

 むぅ。
 納得いきません。不満を表明します。
 私がいつ劇物を精製したというのですかっ。
 私は、いつも、歴とした、お料理を、しているではありませんか。

「お嬢様。お料理とはですね、味だけではないのです。見栄えも重要なのです。食べる人が食欲をそそるようなものがお料理と呼べるのです。ですので、カレーもオムライスもハンバーグも全部無色透明になるものをお料理とは言えません。むしろどうしたらそうなるのか教えてほしいですね」

「こ、心を読むんじゃありませんっ! それに私だってどうして色がなくなるのかわからないのっ。ミシェルに言われた通りやっているのだからっ」

「ふ~ん……」

「………………。そ、そんなことより、作戦会議をしましょう。そのためにこうやってピクニックをしているのです。リラックスした空気の中やればいい案が思い浮かぶでしょ」

 ミシェルがジト目で見てきますが、無視です。気にしてはいけません。
 それより本来の目的を果たしましょう。
 周囲にそう声をかけたのですが、誰からも反応がありません。
 見渡すと、なかなかカオスな状況でした。
 騎士さんたちはなぜか大食い勝負をしていました。どうしてそうなったのですか。
 ティアはカイとヴィルに絡んでいます。精霊王と神獣ということで意外と仲がいいのです。いやしかし、そんな場合ではありません。

 ――――アリアとシュウさんがとてもイチャイチャしているからです。
 なんですかあの甘々な空気は。完全な桃色空間です。こういうの娯楽本で読みました。
 アリアがシュウさんにあ~んして食べさせて世話を焼いています。
 シュウさんがお腹いっぱいになったのかなんだか眠そうな顔をすると、お膝をポンポンと叩いて上目遣い。
 その視線を受けたシュウさんはアリアのお膝に頭をのせて寝転がります。
 いわゆる膝枕というやつです。私知っています。恋人がよくやるって本に書いてありました。あれは本当だったのですね。
 なんだか見ているだけでドキドキしてきました。

「お、お嬢様っ!! 見てはいけませんっ! ま、まだお嬢様には早いです。あんなものをお嬢様の視界に入れるのは教育上いけないことなのですっ!!」

 ミシェルの声が響き渡りました。
 せっかくいい雰囲気だったのに、このメイドは。
 後でお仕置きですっ!







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