婚約破棄されたので森の奥でカフェを開いてスローライフ

あげは

文字の大きさ
70 / 123
第二部

仲直り *アリア視点


「ねぇ、カナリア」

「何よ」

 カナリアは素っ気なく返事をした。
 私の方を向いてくれないのは、やっぱりまだ私のことを……。
 それでもいいか。
 私は私で伝えよう。せっかくユミさんがこんなチャンスを与えてくれたのだから。

「私は……嬉しい。こうしてカナリアとまた話せて。もう二度と会えないと思っていたから。だから……だから、これからはちゃんと、姉妹として。やり直したい」

 私は思っていることを素直に言った。
 こんなこと真正面から言うのは恥ずかしいけれど。
 カナリアは俯いて顔を見せない。

「…………バカじゃないの」

 小さな呟きが聞こえた。
 やっぱりダメかな。
 都合が良すぎるとか言われるかな。
 正直、少し怖いと思っている。

「今、何歳だと思っているわけ? 今さらやり直すって言ったって、そんなの無理に決まってるでしょ。もうそんな子供じゃないわよ」

「そ、そうだけど……でもっ」

「私たちの関係はやり直すとか、その程度のものじゃないわ。恨まれても当然のことをしたのよ。だから処刑される覚悟を決めたの。それを台無しにされたっていうのに、のん気な事なんて言えるわけないわ」

 カナリアの言う通りかもしれない。
 私たちの関係はそんな簡単なものではないのは分かっている。
 それでも私は……。
 そう思うけど、言葉が出てこない。
 やっぱりダメだった。
 せっかくユミさんがここまでしてくれたのに、私ではその期待に応えられない。

「そっか……。ごめんね。勝手な事言って……」

 せめて刑を免れたカナリアを自由にしてあげたい。
 それくらいならユミさんも許してくれるかな。

「――――まだ、話は終わってないわよ。勝手にどこ行こうとしてるの」

「え?」

 ユミさんにお願いに行こうとした足が止まる。

「確かにやり直しはできない。私たちの間にはそんな簡単な言葉で済ませられるはずのないしこりがある。それだけのことをしたのよ、私は」

「そうだけど」

「それでもっ。それでも、私を許してくれるというのなら……」

 そこで一度言葉を切って、意を決したように告げた。

「――新しく始めたい。やり直すのではなく、新しく。聖女アリアと聖女カナリアではなく。アリア・サンダードとカナリアサンダードでもなく。ただのアリアとただのカナリアとして、そんな普通の姉妹として、新しく始めたいっ。……もう一度、今度こそ心の底から、私は…あなたのことをお姉様と呼びたいっ!」

 そう言ったカナリアはどこか恥ずかしそうに、でも必死に想いを伝えてくれた。
 その顔はまるで純粋な少女のようであり、そして妹が姉へのわがままを言っているかのような、そんな顔をしていた。
 そんなカナリアを見て、私は懐かしいあの日を思い出していた。

 まだ私が聖女として認定される前、屋敷の庭で二人で遊んでいた頃。
 私は勉強して学んだ魔法をカナリアに見せていた。
 こんなことできるようになったんだよ、と言って。
 その時カナリアは確かこんなこと言っていた。

『私もいつかお姉様みたいになる!』

 あの頃は二人中のいい姉妹だったと、そう思う。
 あの頃のカナリアが今重なった。
 そして私の目からは涙が溢れだしていた。

「……ほ、ほんとに……いいのぉ……?」

「それはこっちのセリフよ。あんなことした私を簡単に許せるのならね。って言っても、聖女様ならそんなこと簡単か……」

「……もう……せいじょじゃないよぉ……!」

 感極まった私はカナリアを抱きしめた。
 もう絶対に離さないと気持ちを込めて。

「ちょっ。そのぶっさいくな泣き顔、どうにかしなさいよ。まったく……」

 困ったお姉様ね、と苦笑して、私の背中に手が添えられた。
 この日この時、ようやく私たちは本当の姉妹になれたのだと思いました。




感想 3

あなたにおすすめの小説

普段は地味子。でも本当は凄腕の聖女さん〜地味だから、という理由で聖女ギルドを追い出されてしまいました。私がいなくても大丈夫でしょうか?〜

神伊 咲児
ファンタジー
主人公、イルエマ・ジミィーナは16歳。 聖女ギルド【女神の光輝】に属している聖女だった。 イルエマは眼鏡をかけており、黒髪の冴えない見た目。 いわゆる地味子だ。 彼女の能力も地味だった。 使える魔法といえば、聖女なら誰でも使えるものばかり。回復と素材進化と解呪魔法の3つだけ。 唯一のユニークスキルは、ペンが無くても文字を書ける光魔字。 そんな能力も地味な彼女は、ギルド内では裏方作業の雑務をしていた。 ある日、ギルドマスターのキアーラより、地味だからという理由で解雇される。 しかし、彼女は目立たない実力者だった。 素材進化の魔法は独自で改良してパワーアップしており、通常の3倍の威力。 司祭でも見落とすような小さな呪いも見つけてしまう鋭い感覚。 難しい相談でも難なくこなす知識と教養。 全てにおいてハイクオリティ。最強の聖女だったのだ。 彼女は新しいギルドに参加して順風満帆。 彼女をクビにした聖女ギルドは落ちぶれていく。 地味な聖女が大活躍! 痛快ファンタジーストーリー。 全部で5万字。 カクヨムにも投稿しておりますが、アルファポリス用にタイトルも含めて改稿いたしました。 HOTランキング女性向け1位。 日間ファンタジーランキング1位。 日間完結ランキング1位。 応援してくれた、みなさんのおかげです。 ありがとうございます。とても嬉しいです!

婚約破棄され森に捨てられました。探さないで下さい。

拓海のり
ファンタジー
属性魔法が使えず、役に立たない『自然魔法』だとバカにされていたステラは、婚約者の王太子から婚約破棄された。そして身に覚えのない罪で断罪され、修道院に行く途中で襲われる。他サイトにも投稿しています。

リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?

あくの
ファンタジー
 15になって領地の修道院から王立ディアーヌ学園、通称『学園』に通うことになったリリゼット。 加護細工の家系のドルバック伯爵家の娘として他家の令嬢達と交流開始するも世間知らずのリリゼットは令嬢との会話についていけない。 また姉と婚約者の破天荒な行動からリリゼットも同じなのかと学園の男子生徒が近寄ってくる。 長女気質のダンテス公爵家の長女リーゼはそんなリリゼットの危うさを危惧しており…。 リリゼットは楽しい学園生活を全うできるのか?!

【本編完結】ただの平凡令嬢なので、姉に婚約者を取られました。

138ネコ@書籍化&コミカライズしました
ファンタジー
「誰にも出来ないような事は求めないから、せめて人並みになってくれ」  お父様にそう言われ、平凡になるためにたゆまぬ努力をしたつもりです。  賢者様が使ったとされる神級魔法を会得し、復活した魔王をかつての勇者様のように倒し、領民に慕われた名領主のように領地を治めました。  誰にも出来ないような事は、私には出来ません。私に出来るのは、誰かがやれる事を平凡に努めてきただけ。  そんな平凡な私だから、非凡な姉に婚約者を奪われてしまうのは、仕方がない事なのです。  諦めきれない私は、せめて平凡なりに仕返しをしてみようと思います。

噂の醜女とは私の事です〜蔑まれた令嬢は、その身に秘められた規格外の魔力で呪われた運命を打ち砕く〜

秘密 (秘翠ミツキ)
ファンタジー
*『ねぇ、姉さん。姉さんの心臓を僕に頂戴』 ◆◆◆ *『お姉様って、本当に醜いわ』 幼い頃、妹を庇い代わりに呪いを受けたフィオナだがその妹にすら蔑まれて……。 ◆◆◆ 侯爵令嬢であるフィオナは、幼い頃妹を庇い魔女の呪いなるものをその身に受けた。美しかった顔は、その半分以上を覆う程のアザが出来て醜い顔に変わった。家族や周囲から醜女と呼ばれ、庇った妹にすら「お姉様って、本当に醜いわね」と嘲笑われ、母からはみっともないからと仮面をつける様に言われる。 こんな顔じゃ結婚は望めないと、フィオナは一人で生きれる様にひたすらに勉学に励む。白塗りで赤く塗られた唇が一際目立つ仮面を被り、白い目を向けられながらも学院に通う日々。 そんな中、ある青年と知り合い恋に落ちて婚約まで結ぶが……フィオナの素顔を見た彼は「ごめん、やっぱり無理だ……」そう言って婚約破棄をし去って行った。 それから社交界ではフィオナの素顔で話題は持ちきりになり、仮面の下を見たいが為だけに次から次へと婚約を申し込む者達が後を経たない。そして仮面の下を見た男達は直ぐに婚約破棄をし去って行く。それが今社交界での流行りであり、暇な貴族達の遊びだった……。

【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜

Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。

お言葉ですが今さらです

MIRICO
ファンタジー
アンリエットは祖父であるスファルツ国王に呼び出されると、いきなり用無しになったから出て行けと言われた。 次の王となるはずだった伯父が行方不明となり後継者がいなくなってしまったため、隣国に嫁いだ母親の反対を押し切りアンリエットに後継者となるべく多くを押し付けてきたのに、今更用無しだとは。 しかも、幼い頃に婚約者となったエダンとの婚約破棄も決まっていた。呆然としたアンリエットの後ろで、エダンが女性をエスコートしてやってきた。 アンリエットに継承権がなくなり用無しになれば、エダンに利などない。あれだけ早く結婚したいと言っていたのに、本物の王女が見つかれば、アンリエットとの婚約など簡単に解消してしまうのだ。 失意の中、アンリエットは一人両親のいる国に戻り、アンリエットは新しい生活を過ごすことになる。 そんな中、悪漢に襲われそうになったアンリエットを助ける男がいた。その男がこの国の王子だとは。その上、王子のもとで働くことになり。 お気に入り、ご感想等ありがとうございます。ネタバレ等ありますので、返信控えさせていただく場合があります。 内容が恋愛よりファンタジー多めになったので、ファンタジーに変更しました。 他社サイト様投稿済み。

出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む

家具屋ふふみに
ファンタジー
 この世界には魔法が存在する。  そして生まれ持つ適性がある属性しか使えない。  その属性は主に6つ。  火・水・風・土・雷・そして……無。    クーリアは伯爵令嬢として生まれた。  貴族は生まれながらに魔力、そして属性の適性が多いとされている。  そんな中で、クーリアは無属性の適性しかなかった。    無属性しか扱えない者は『白』と呼ばれる。  その呼び名は貴族にとって屈辱でしかない。      だからクーリアは出来損ないと呼ばれた。    そして彼女はその通りの出来損ない……ではなかった。    これは彼女の本気を引き出したい彼女の周りの人達と、絶対に本気を出したくない彼女との攻防を描いた、そんな物語。  そしてクーリアは、自身に隠された秘密を知る……そんなお話。 設定揺らぎまくりで安定しないかもしれませんが、そういうものだと納得してくださいm(_ _)m ※←このマークがある話は大体一人称。