41 / 73
報酬
しおりを挟むマリーさんは、ずっしりと金貨の入った袋をテーブルの上に置いた。
「これはダンジョンを攻略した報奨金と私からの依頼の報酬を含めた金額です。全てアリスさんのものです」
「え、えぇぇぇぇ!? こ、こんなに!?」
金貨二枚もあれば、一般的な四人家族が二月暮らせる。
これだけあれば何もしなくても数年は暮らしていける自信があるわ。
「ま、マリーさんの分は……?」
「私はお金は要りません。正直、これだけあれば十分ですから」
そう言ってマリーさんは、深紅の宝石が嵌めこまれたネックレスを取り出した。
それはエルダーリッチを倒したことでドロップしたアイテム、「解呪のネックレス」。あらゆる呪いを解呪できる魔宝石のネックレスだ。
一度使用すると、大量の魔力を補充しなければ効果がなくなってしまうが、強力なアイテムなのは間違いない。
「目的の物とは違いますが、これがあれば姉の呪いを解くことができます。それに……いい魔法書も手に入りましたし」
と、ニコニコ顔で物騒な装丁の魔法書を抱きかかえる。
光の上級魔法〈アンチカース〉の魔法書。
エルダーリッチが光の上級魔法書をドロップするのもどうかと思うけど、マリーさんが嬉しそうなので気にしないことにした。
「あとは、この〈呪霊軍隊〉の魔法書ですが、アリスさんにお渡ししておきます」
「私では使えませんけど……」
「王家で保管するわけにはいきませんし、ギルドに預けるのも筋違いでしょう。これは私たちが命を賭して得たものです。であれば、アリスさんが持っているべきではないでしょうか。このような物騒な魔法を悪用されるわけには参りません。その点、アリスさんであれば信頼できます。どうか、受け取ってください」
「……そこまで言われたら、断れないじゃないですか。わかりました。私が大切に保管しておきます」
「できれば人の目に触れないようにしてください」
「なら、ボクの亜空間で保管しておくよ。ボクが取り出さない限り、誰の目にも入らないからね」
そう言ってミルフィが魔法書に触れると、亜空間取り込まれテーブルから魔法書は消えた。
安心したようにマリーさんもにっこり笑う。
「あと、倒した”侵略者”からのドロップアイテムはギルドに渡しました。それでよかったのですよね?」
「はい。私には必要ないですし、ケイトが言うにはあの素材で呪い耐性の武器や防具が作れるみたいです。それなら、必要とする人が使うべきですから」
私がそう言うと、マリーさんも納得したように頷いてくれる。
後ろに控えていたメイドのアリーさんが耳打ちすると、彼女は立ち上げり頭を下げた。
「そろそろ時間なので、私は行きます。この度は本当にありがとうございました。貴女との旅の思い出は忘れません」
「大袈裟ですよ。私はマリーさんの依頼を受けただけです。それに……友人からそう頭を下げられてはなんかムズムズします。……私なんかが王女様の友人とかおこがましいかもしれませんけど」
「そんなことありません! アリスさんが良ければ、これからも友人として思ってください。今度はぜひ王都へ。友人として、お城を案内しますから。それでは」
最後にマリーさんと握手をして別れた。
王女様が私を友人と思ってくれるなんて、貴重な体験をしたように思う。
うん、ちょっと……いや、大分危なかったけど今回の冒険はとても良いものだった。
お説教をするために待ち構えているケイトの姿が無ければ完璧だったのに……。
その後、数時間にわたるお説教を終え、私は赤いタグを首から下げ帰路に就いた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
18
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる