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面倒事はいつも突然に
しおりを挟むマリーさんがギルドマスターとお話をしている間、私はギルドにあるテーブルに体を預け、ダラダラと待っていた。
本当は、早く家に帰ってお風呂に入って休みたいのだが、マリーさんの話が終わるまで待機するようにと、ケイトに強く言われてしまった。
さすがにあんな怖い笑顔で言われたら従わざるを得ない。
私はここで、理解しがたい注目を浴びながら待つのだ。
「どうせなら、王女様と一緒に行けばよかったのに。ここでダラっと変に注目を集めるよりはマシだと思うよ」
「いいのぉ。難しい話は大人に丸投げするべきなんだから。それに、私はただの緑ランクよ。今回はたまたま運が良かっただけ。そういうことにしておけば、変なことに巻き込まれずに済むじゃない」
「いや、それはどうかな。今までのアリスの境遇を考えると、面倒なことになると思うんだよねぇ……」
ミルフィの含みのある言葉が気になる。
こんなボロボロの女の子に絡んでくるような人なんて――。
「おい。『呪詛洞穴』を攻略したってのはお前か?」
いないと思っていた数秒前の私、なんて浅はかだったのだろう。
声のした方へ顔だけ向ける。体を起こすのも面倒だ。
軽鎧を纏った四人の探索者。首から下げているタグは私より二つ上の赤。
あぁ……これはいつもの、かなぁ。
「……そういうことになってるわね」
「お前みたいな雑魚がそんなことできるわけねぇだろうが! 言え。どんな汚い手を使ったんだ? ん?」
「王女様と一緒に潜って、汚い手もないでしょ。こっちは疲れてるの。どっか行ってくれない」
相手にするのも面倒で、思わず本音が出てしまった。
もしくは、今まで溜まっていた鬱憤がついに耐え切れなくなってしまったのかもしれない。
私の言葉を聞いた探索者たちは、額に青筋を立て、得物に手を掛けた。
「てめぇ……役立たずの分際で、調子に乗りやがって……。その舐めた態度も気に入らねぇ! 緑のくせに、赤の俺に対しての礼儀がなってないみたいだな!」
「たまにそういうこという人いるけど、あんたみたいなのに礼儀とか必要? 尊敬されたいのなら、もっとそれらしく振舞いなさいよね」
私がそう言うと、男たちはさらに顔を赤くし、体を震わす。
周囲で見ていた探索者からは小さな笑い声が聞こえた。
何人かは私の言葉に同意してくれているみたいだ。
ミルフィなんて大声を上げて笑っている。私より酷く煽っているのだけど、これも私のせいになるのかしら。
「……もう許さねぇぞ。舞踏会にでも行ったような恰好の女に馬鹿にされて黙ってられるか! 表に出ろ!」
「……ん? 舞踏会? 何の――あっ」
いろいろあって転身したままだった。
道理で魔力が常に減っていくわけだわ。
今ここで解除するわけにはいかないし、武器を抜いた男たちの相手するのも嫌だし、どうしようかな。
「――何をしているのですか?」
悩んでいると、凛とした声が聞こえた。
視線が一斉に声の方へと向かう。
私と同様、ボロボロだが毅然と佇む姿から王族としての貫禄のようなものが感じられた。
いつの間にか側に来ていたマリーさんは、テーブルに突っ伏している私とそんな私に武器を向けている男たちを見ると、大きく溜息を吐いた。
そして深紅の瞳で男たちを真っ直ぐ射抜く。
「彼女は私の友人です。その方に武器を向けられているということは……私に対する叛意として見受けられますが、よろしいですか?」
マリーさんがそう言うと、男たちは蜘蛛の子を散らすようにギルドから飛び出していった。
さすが王族。あれだけで追い返すとは、カッコイイ……。
いつもの笑顔を浮かべたマリーさんが、私の対面に座る。
それに合わせて、メイドのアリーさんが四人分の紅茶と、パンケーキを差し出してくれた。
「先ほど話し合いが終わりました。ささやかですが帰還のお祝いと、報酬の分配をいたしましょう」
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