物理最強信者の落第魔法少女

あげは

文字の大きさ
59 / 73

日記

しおりを挟む

「……ねぇ、アンタ知ってたんでしょ? これのこと」

 陽は沈み、夜の闇を映した真っ黒な海。さざ波の音が鼓膜を心地よく刺激する。
 アリスとケイトが眠る宿の部屋を離れ、高い灯台に上り海を眺めているツバキが呟く。
 その場にはツバキの姿しかない。しかし、彼女は一人ではないと感じていた。

「何のことかな? ボクは何もしらな――」

「ここに書いてあるわ。『この日記の存在を知るのは、意地悪なスパルタ教官だけど、誠実な愛を持ったパンケーキ大好きの愛らしい使い魔さんだけ』ってね。やっぱりあの子の日記なのね」

「……まあ、書いてあるのなら誤魔化しても仕方ないね。確かにボクは彼女の日記の存在を知っている。何が書いてあるかまでは知らないし、ボクを封印した後、あの子がどこに日記を隠したのかも知らない。こうしてバラバラの紙になってダンジョンから発見されるとは思ってなかった」

 可愛らしい声の後、暗闇からミルフィの姿が浮かび上がる。
 ツバキは振り向き、ミルフィに対し紙を見せつけるように掲げた。

「あの子は……桜楽《さくら》の死の真相は知っているのね?」

「知っていてもそれは話せないかな。彼女との最後の約束だからね。君にだけは話すなと言われている」

 ミルフィがそう言うと、ツバキは苦しそうに顔を歪める。

「どうして……いつも、桜楽は何も教えてくれない……。自分一人で抱え込んで、結局どうしようもなくなった時だけ助けを求める。でも……最後だけは何も言わなかった。誰にも、何も話さず、一人で死んだ……」

「サクラはそれを望んでいた。使い魔として、ボクは主の願いを優先したまでだ。君に話さなかったのは……サクラなりの思いやりだろうね」

「それなら全部話してほしかった! 自分一人で抱えて勝手に死んで……それで私が納得するわけないじゃない! 一人で世界の敵になって……人類最大の悪党? 桜楽はそんな子じゃない!!」

 溜め込んでいた想いが涙となって溢れだす。
 頼ってもらえなかった悔しさ、何もできなかった後悔。ツバキはその想いをずっと抱えて生きてきた。

「そうだね。サクラはとても優しい子だ。必ず誰かのために行動する。世界を守るために、世界の敵になった。世界を救う代償が、人類の敵になることだったんだ。君なら、彼女が何を選択するのか理解できるだろう? サクラにとってたった一人の家族、姉なんだから」

 ツバキは乱暴に涙を拭い、顔を上げる。
 その瞳には、強い怒りと熱情が宿っていた。

「真相を知りたいのなら、これを集めることだね。彼女はいつかのために自分の知り得る全てを日記に記していたはずだ。彼女の汚名を覆すのなら、まずは知らなければならない」

「もちろんわかってるわ。私は、あの子の死の真相を知るためにここまで生きてきたのよ。ようやく、手掛かりを掴めたのだから……絶対に見つけてみせるわ。そのためにも、アリスにはもっと強くなってもらわないといけないわね」

 ツバキはニヤッと笑う。
 これからアリスの特訓は、さらに過激なものになることだろう。
 そんなことなどつゆ知らず、宿のベッドで暢気にアリスは眠っていた。




しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

無能勇者の黙示録~勝手に召喚されて勝手に追放されたので勝手に旅に出ます~

枯井戸
ファンタジー
力も強くない、足も速くない、魔法も使えないし、頭も大してよくない、どこにでもいるちょっとオタク趣味の主人公・東雲真緒が白雉国に勇者として転生する。 同期の勇者はそれぞれ力が強かったり、魔法が使えたり、回復ができたりと各々の才能を開花させ頭角を現していくのだが、真緒に与えられた才能は異世界転生モノでよく見る〝ステータスオープン〟のみだった。 仲間には使えないと蔑まれ、ギルドには落第勇者の烙印を押され、現地人には殺害されかけ、挙句の果てに大事な人を亡くし、見ず知らずの土地の最底辺で生きていくことになった真緒だったが、彼女はまだ〝ステータスオープン〟の可能性に気づいていないだけだった。 ───────────── ※投稿時間は多少前後しますが毎日投稿は続けていくつもりです。 ※タイトルは予告なしにガラリと変わる場合があるのでご了承ください。 ※表紙は現在の主人公のイメージ図です。もしまた別の国へ行く場合、彼女の装いも変化するかもしれません。

一国一城の主を目指す!〜渇望の日々を超えて。

リョウ
ファンタジー
 何者かになりたかった。  だが現世でその願いは叶わず、男は敗北感と悲嘆を胸に沈んでいた。  そんな彼の前に現れたのは、一柱の女神。  導かれるまま異世界へ転移した男は、新たにレイと名乗り、剣も魔法も身分もない底辺から成り上がることを決意する。  冒険者として生きる術を学び、魔法を覚え、剣を磨き、人と裏社会を見極めながら、レイは少しずつ力を蓄えていく。  目指すのは、ただ生き延びることではない。  一国一城の主となり、この世界で“何者か”になること。  渇望を燃料に、知恵と執念で上へ上へと這い上がる、ファンタジー成り上がり譚。

ぽっちゃり女子の異世界人生

猫目 しの
ファンタジー
大抵のトリップ&転生小説は……。 最強主人公はイケメンでハーレム。 脇役&巻き込まれ主人公はフツメンフツメン言いながらも実はイケメンでモテる。 落ちこぼれ主人公は可愛い系が多い。 =主人公は男でも女でも顔が良い。 そして、ハンパなく強い。 そんな常識いりませんっ。 私はぽっちゃりだけど普通に生きていたい。   【エブリスタや小説家になろうにも掲載してます】

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

傷物転生令嬢マグダリーナと原初の魔法使いエステラの幻想譚-女神とスライムの光とともに- (旧タイトル:ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる―― ※他サイトでも掲載しています ※ちょいちょい手直ししていってます 2026.12.14 タイトル変更 旧タイトル:ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

【完結】悪役令嬢ではありません。肩書きはただの村人ですが、いつの日か名だたる冒険者になっていた。

小田
ファンタジー
  ポッチ村に住む少女ルリは特別な力があったのだが、六歳を迎えたとき母親が娘の力を封印する。村長はルリの母の遺言どおり、娘を大切に育てた。十四歳を迎えたルリはいつものように山に薬草を採りに行くと、倒れていた騎士を発見したので、家に運んで介抱すると。騎士ではなく実は三代公爵家の長男であった。そこから彼女の人生は大きく動き出す。  特別な力を持つ村人の少女ルリが学園に行ったり、冒険をして仲間と共に成長していく物語です。  なろう、エブリスタ、カクヨム掲載しています。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

処理中です...