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二章 水の都
ロゼの秘密
しおりを挟む「単刀直入に聞くっすけど、なんで追いかけられてたんすか? あの男たちが何者かもわかるといいんすけど」
ご飯を食べ、少し落ち着いてからカーナが尋ねた。
ロゼちゃんはきょとんとしている。美少女はどんな顔しても可愛いみたいです。
「そんなことあたしが知るわけないじゃない。あの人間たちが何者かなんて興味ないわ。大方、あたしが可愛すぎるから捕まえておきたかったとかそんなところでしょ」
すごい自信だ。
どうしてそんなに自分が可愛いということを疑わないのだろうか。
そんなにはっきりと自分が可愛いなんて言う人はいませんよ。
「いや……確かにろぜっちがかわいいのは認めるっすけど、それであんなに大勢で追いかけまわすなんてありえないっすよね」
「あたしの可愛さの前にありえないことなんてないわ!」
「何アホなこと言ってるんすか」
「アホって何よ! バカにしてるわけ!?」
カーナが呆れた末に本音を言ってしまった。思ったことを口に出してしまうのはカーナの悪い癖だ。
そのせいで何回か貴族と揉め事を起こしかけた。少しは建前というものを覚えてほしいわね。
「そこらへんはどうでもいいんで、あいつら何か言ってたりしなかったすか?」
「ん~。そうねぇ……ああ、そういえば! 売ったら金になるとか言っていた気がするわ。人間て相変わらずお金が好きなのね。不思議だわ」
「売ったら金になるって……人身売買ってことよね。そんなことしてるバカがまだいるわけ?」
「そんなわけないと思うっすけどね。違法の商人は大体検挙されているはずっすから。特に王国とアタランティアでは。あと教国もっすね」
「それなら帝国と連合が裏で何かしてるってこと?」
「可能性は無きにしも非ずっすかね。ただ両国でも人身売買に関しては新しく法令ができたとかなんとか。なのでほぼゼロっすよ」
「そんなこと言ったってどうせ陰でやってる人たちがいるんでしょ」
「そりゃ当然っすよ。裏でこそこそ違法な事してるバカは消しきれないっすからね。だからこれは国ではなく、おそらく個人の話っす。どっかのアホ貴族がまた変な事企んでるんじゃないっすかねぇ」
「ちょっと。二人だけで何小難しい話してるのよ。可愛いあたしを置いてけぼりにして。あたしにもわかるような話をしなさいよ。それか面白い話をしなさい」
これでもわかりやすく話しているつもりなのだが。
それに突然面白い話しろとか無茶ぶりにもほどがある。
というか、ロゼちゃんは放置されるのが嫌で構ってほしいのだろうか。
「それなら一番気になってたこと聞いてもいいっすか?」
「何よ。あたしの魅力について? それならもちろん可愛い――」
「いや、それじゃなくて。さっきうっすらと見えた羽はなんすか?」
うわぁ。本当に聞きにくいことをズバッと聞くなぁ。
どういう神経しているのだろう。
羽について質問すると、ロゼちゃんの雰囲気が一変した。
どうやら地雷だったみたい。魔力があふれ出している。
「……どうしてそれを?」
どこから声を出しているのか、美少女が発する声じゃなかったわよ。
それよりカーナはいつの間に私の後ろに移動したのかしら。
こういう時だけ私を盾にするのは本当にやめてほしい。
「え、え~とぉ……そのぉ~、さっき魔法使おうとしてた時にうっすらと見えたというかなんというか……」
「……」
沈黙してしまった。
こういう空気、苦手です。先の展開が読めなくて怖いわ。
「……そう。それならあんたたちが悪いわけではなさそうね」
良かった。溢れだした魔力が消えたことにホッとする。
これに懲りたらカーナは人を怒らせるような言動は控えてほしい。
「見てしまったのなら仕方がないわ! あたしの正体を教えてあげるわ!」
「いいの?」
「いいのよ! もう見ちゃったんだから。それとも口封じで殺されたいのかしら?」
「滅相もございません!」
今の笑顔とても怖かった。
「美少女の笑顔、プライスレス!」 とか後ろでほざいているバカはもうどうしようもないわね。
「あたしは、精霊と妖精族のハーフよ!」
「「精霊と妖精のハーフ?」」
それって同じではないのだろうか。
それより精霊って実在したんだ。聖獣がいるんだから当然いるか。
「正確には違うんだけどね。簡単に言うと、先祖返りで精霊の力を宿した妖精ってことよ。本当はもっと複雑みたいなの。長老たちの話が難しすぎて理解できなかったわ。だから精霊と妖精のハーフってことで納得してるってこと!」
「「なるほど……」」
この子と話していてわかったことが一つある。というかなんとなく察していたが。
ロゼちゃんは頭が良くないみたい。いわゆるおバカと言って差し支えないでしょう。
「まあ、話はなんとなく分かったっす。それで、そのハーフさんがこんなところで何してるっすか? 妖精族ってことは獣大陸っすよね。どうしてこの大陸に?」
そう聞くと、まじめな顔をした。
何か抱えていることがあるみたいだ。
「そうね。あたし一人ではおそらく解決できないわ。あんたたちにも協力してもらおうかしら」
そう言ってロゼちゃんは妖精族に起こっていることを話し始めた。
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