追放歌姫の異世界漫遊譚

あげは

文字の大きさ
45 / 72
二章 水の都

樹海突破

しおりを挟む

 ――翌朝。
 さて、私たちはこれからアタランティアに向かうのだが。

「……どっちに行くの?」

「さあ。そんなの自分もわからないっすよ。太陽の位置もわからないのに方角がわかるはずないっすし」

「あたしが知る筈もないわ! 逃げていたらここに辿り着いただけよ!」

 誰も道が分からない。これじゃ進むに進めないしより迷うかもしれない。
 こうなったのも全部カーナのせいよ。絶対にそうだから。

「ろぜっち、転移とかでこの樹海抜けたりできないっすか?」

「残念ね! 魔力が足りないから不可能よ! それに視認した空間にしかまだ干渉できないわ!」

「なんだ。まだ権能を使いこなせているわけじゃないんすね」

「ちょっと。あたしが不完全みたいな言い方はやめてちょうだい。あたしは完全無欠の絶対的な美少女なの。それだけは覚えておきなさい!」

 自信満々にいえるその精神は何でできているのだろうか。

「とにかく方向だけでも決めましょう。こんなところでじっとしているなんて時間がもったいないわ」

「どうやって決めるんすか? まさか古典的な方法で棒とか使ったりしないっすよねー?」

 ギクッ。
 なぜそれを。まだだれにも話したことのないママから教えてもらった秘伝の方法なのに。

「その顔、図星っすね。しかも母親から教わった秘伝の技とか考えているっす。そんなの秘伝でもなんでもないっすよ。誰でも知っている方法っすから」

 そんなっ……。
 ママから教えてもらった特別なものだと思っていたのに。
 私は膝からその場に崩れ落ちた。ルナとブラウが慰めてくれる。
 うぅ~。モフモフ。

「そんなペットモフモフしてないで行くっすよー。なんとなく進めば必ず何か見つかる筈っすよ」

「適当な事言わないでよ。そんなだからこうして今絶賛迷子ちゅうなんだからねっ!」

「それについては仕方ないっすね。性分っすから」

 開き直りおって。
 しかし結局カーナの言う通り、とりあえず動くことにした。
 この樹海を抜けなければいけないのは確実。
 あ~。早くお風呂入りたいわ~。

「……ところで、なんでリリィたちだけブラウに乗ってるんすか?」

「楽だしモフモフできる。一石二鳥じゃない」

「自分も乗せるっていう選択肢はないんすか?」

「カーナが先導しなきゃなんだから歩いたほうがいいでしょ。だからよろしく~」

 普段適当にしているのだからこういう時くらいマジメに働かせないといけない。
 別に迷子になった意趣返しとかそんなんじゃないわよ。当然じゃない。
 カーナのためにやっているのだから感謝してほしいわ。

「……リリィ。あとで覚えとくっすよ」

 そんなもの知りません。
 私は大切な事しか覚えておかない女なのですから。
 とにかく私たちは歩き続けた。



 ◇◇◇



 ――三時間後。

「……ねぇ。ここって何か見覚えないかしら?」

「……奇遇っすね。自分もそう思っていたっすよ」

「あたしは細かいことは気にしないわよ!」

 目の前には見覚えのある小さな水場があった。
 なぜか元いた場所に戻ってしまったみたい。

「ちゃんと印付けてたわよね」

「当然っすよ。これでも自分シーフっすから。一度通った道を忘れるなんてありえないっす」

「それならこれはどういうことよ」

「自分にもわからないっすね~」

 手詰まりだわ。
 いくら樹海にいるからってこんなに迷うことなんてあるかしら。
 こういう森は何度か経験しているはずなのに。

「ニャ~」

 ルナちゃんが何か言いたそうにしている。
 だからといって私の顔に張り付いてくるのはどうかと思うが。
 ちゃんとかまっているはずなのに、甘えん坊さんね。

「どうしたの?」

「ニャ―」

「……魔法? 樹海そのものに?」

「ニャッ」

「何かがいるってことね。わかったわ。ありがとう、ルナ」

 教えてくれたルナをギュッと抱きしめてあげる。モフモフ。
 こういうとき役に立つのは一番古参の万能猫さんですね。
 うちのルナちゃんは頼りになるんです。
 誰にもあげませんからね! 私の猫なんだから! 

「要するにこの樹海に魔法をかけて惑わせている何かがあるってことっすね」

「おそらくルナちゃんみたいな幻影魔法を使う何かよ。猫か人か……」

「人の気配はしないっすよ。魔物もいないと思うっす。となると……」

「話は分かったわ! ここら辺一帯を魔法で吹き飛ばせばいいのね!」

「どうしてそうなったの!?」

「いや、ある意味間違ってないと思うっすよ。特に貴重な植物が生えているわけでもなし、誰かの私有地でもない。それならかけられた魔法ごと吹き飛ばして新しい道を作るのも悪くないっすね」

 と言って何か魔法の準備をし始める二人。
 言っても聞かないと思うのでブラウを盾に隠れる。
 しかし、ブラウも状況を理解してか口を開き何かの準備をしている。
 ちょっと待って。ブラウまで何するつもりよ。

「それじゃ行くっすよ~。リリィ、伏せててくださいっすね~」

「ひぃっ」

 私がルナちゃんを抱えたまま伏せると。

〈風神〉!

〈精霊砲〉!

「アオォォォォォォォン!!」



 激しい轟音が鳴り響いた。
 凄まじい風と衝撃で吹き飛ばされそうになるのを何とかこらえる。
 しばらくして収まったところで顔を上げると……。

「うわぁ……」

 眼前に生い茂っていた木々は跡形もなく消え去り、数百マイトル先まで見渡せるほどの大きな道が生まれていた。

「結構先まで言ったっすね。これなら迷うこともなさそうっすね。それに先の方に街道っぽいのも見えるようになったっすよ」

「さすがあたし! 可愛い私の魔法なんだから当然よね!」

「わんわん!」

 褒めてほしいのか、ブラウが尻尾をブンブン振り回しながら駆け寄ってくる。
 うんうん、偉い偉い。と、ほぼ現実逃避気味に撫でてあげる。
 ていうか、うちのわんこ、口から何か出したんですけど! 何よあれ! 聖獣ってあんなこともできるわけ!

「わん!」

 誇らしげに吠えるブラウを見て諦めがついた。
 そういうものだと受け入れると決めたんだから。
 開き直った私は、ブラウに乗りロゼちゃんとカーナを回収した。
 そして新しく樹海にできた大きな道を駆け抜けていった――。













しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

異世界わんこ

洋里
ファンタジー
3匹の愛犬と共に異世界に転移した主人公、小日向真奈が、戸惑いながらも冒険をしていくお話しです。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

虚弱体質で偽聖女だと追放された私は、隣国でモフモフ守護獣様の白き聖女になりました

・めぐめぐ・
恋愛
平民孤児であるセレスティアルは、守護獣シィに力を捧げる【聖女】の一人。しかし他の聖女たちとは違い、儀式後に疲れ果ててしまうため「虚弱すぎる」と、本当に聖女なのか神殿内で疑われていた。 育ての親である神官長が拘束され、味方と居場所を失った彼女は、他の聖女たちにこき使われる日々を過ごす。そしてとうとう、平民が聖女であることを許せなかった王太子オズベルトによって、聖女を騙った罪で追放されてしまった。 命からがら隣国に辿り着いたセレスティアルは、そこで衰弱した白き獣――守護獣ラメンテと、彼と共に国を守ってきた国王レイと出会う。祖国とは違い、守護獣ラメンテに力を捧げても一切疲れず、セレスティアルは本来の力を発揮し、滅びかけていた隣国を再生していく。 「いやいや! レイ、僕の方がセレスティアルのこと、大好きだしっ!!」 「いーーや! 俺の方が大好きだ!!」 モフモフ守護獣と馬鹿正直ヒーローに全力で愛されながら―― ※頭からっぽで

追放された聖女は旅をする

織人文
ファンタジー
聖女によって国の豊かさが守られる西方世界。 その中の一国、エーリカの聖女が「役立たず」として追放された。 国を出た聖女は、出身地である東方世界の国イーリスに向けて旅を始める――。

追放された荷物持ちですが、実は滅んだ竜族の末裔でした~のんびり暮らしたいのに、なぜかそうならない~

ソラリアル
ファンタジー
目が覚めたら、俺は孤児だった。 家族も、家も、居場所もない。 そんな俺を拾ってくれたのは、優しいSランク冒険者のパーティだった。 「荷物持ちでもいい、仲間になれ」 その言葉を信じて、俺は必死についていった。 だけど、自分には何もできないと思っていた。 それでも少しでも役に立ちたくて、夜な夜な一人で力を磨いた。 だけどある日、彼らは言った。 『ここからは危険だ。荷物持ちは、もう必要ない』 それは、俺の身を案じた「優しさ」からの判断だった。 俺も分かっていた。 だから、黙ってそれを受け入れ、静かにパーティを離れた。 「もう誰にも必要とされなくてもいい。一人で、穏やかに生きていこう」 そう思っていた。そのはずだった。 ――だけど。 ダンジョンの地下で出会った古代竜の魂と、 “様々な縁”が重なり、騒がしくなった。 「最強を目指すべくして生まれた存在」 「君と一緒に行かせてくれ。」 「……オリオンを辞めさせた、本当の理由を知っている」 穏やかなスローライフ生活を望んだはずなのに、 世界はまた、勝手に動き出してしまったらしい―― ◇小説家になろう・カクヨムでも同時連載中です◇

処理中です...