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婚約破棄ってっきり当主立ち合いの元、穏便に行うものだと思ってましたけど違うのですね。さすが貴族は違いますね!!
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今日は無事に冬を越し、春を迎えることが出来た春の感謝祭であり、王宮ではパーティーが開催された。チアキ様が明日には出国するので最後の祝いの席でもあり、チアキ様はたくさんの貴族の方々に囲まれていました。
私は給仕で厨房と会場を行き来して、空いた皿やグラスワインを下げる役目なのですが、途中で侍女長にチアキ様の視界に入る場所で待機するように言われました。何でだろうと思っていましたがチアキ様のお顔を見て理解しました。
貴族の方々とのお話はお好きではないようで表情がどんどん曇っているからです。そんなチアキ様の様子を分かっていない貴族の方々はニコニコと嬉しそうに次々と話しかけていきます。あと何故か令嬢の方が多いようにも見えます。そういえばチアキ様は綺麗なお顔をしていることを思い出しました。しかも地位のあるお方ですし、繋がりが欲しいのは仕方ないです。……ですがこのままだとチアキ様が爆発してしまわないか不安です。私は会話が少し途切れた際にごく自然にお酒が入ったグラスワインを複数持って近づきました。
「お話のところ失礼致します。追加のワインをお持ちしました」
するとチアキ様が少し目を丸くして私を見たが、何か言うわけでもなく、1つのグラスを取った。他の貴族の方々も取ったところで退く。
遠目でチアキ様を見ると、少し機嫌が良くなっていました。チアキ様のお好きなお酒をリサーチして本当に良かったです。これなら何とかパーティーが無事終えられそうです。……なんて油断していた時です。
「エリザマス公爵令嬢!!この場を持って貴様との婚約を破棄するっ!!!!」
突然、会場中に我が国の王太子殿下であるジェルド殿下の声が響き渡りました。声の方を向けば、ジェルド殿下の他にこの前、宮の前に集まっていた上級貴族のご子息の方々も一緒にいました。そしてその中央には彼らに守られるように立つローヒインさんがいました。
はて?今日、王宮で開催されるこのパーティーは貴族のみ参加できるパーティーのはず。いくら将来有望とはいえ平民である彼女が参加できるはずがないのですが……
まさか殿下が呼んだ、とかでしょうか?まさか、いくら仲が良いとはいえそんな身勝手なことはしない、はずなのですが。そんな彼らが睨む先にはこの国でも権力を持つ公爵家の令嬢であるエリザマス令嬢でした。
「貴様は身分を笠に着てローヒインを平民出身だと虐め、更には僕からの寵愛に嫉妬し暴行までしたそうじゃないか!!そんな心無い令嬢と結婚など出来ぬ!!僕は貴様との婚約を破棄し、ローヒインと婚約し結婚することをここで宣言する!!」
殿下が大きな声でそう宣言した。ローヒインさんは「こわかったですう」と言いながら殿下にすがりついていました。あれ?少し笑みを浮かべているようですが気のせいでしょうか?そんな彼の言葉にエリザマス令嬢は悲しそうに目を伏せました。
「僕はローヒインと結婚する!!貴様などいらぬ!!」
「私はそのようなことを一切した覚えはないですが、彼女を愛しているというのなら私は身を引きますわ……」
「ふん!!貴様は未来の王妃を虐めた罪で国外追放だ!!さっさと国から出ていけ!!」
「分かりましたわ」
そう言われた瞬間、嬉しそうに笑うエリザマス公爵令嬢。何故かチラチラとチアキ様の方を見ているように見えますが気のせいでしょうか?
婚約破棄されて国外追放されたというのにエリザマス令嬢は堂々としてます。おお、これが国1番の美貌を持つ誇り高い公爵令嬢の風格というものでしょうか。会場の外へと歩く姿も美しいです。きっと彼女はこれからも苦行の中も誇り高く生きていくのだろうと思わせます。
ですが、扉が近づくにつれてその歩みが遅くなっていきます。あと2m程で扉なのに、もはやそれ進んでます?というような歩幅で歩いてます。
運悪く扉の側に開閉する為の使用人が席を外していました。それもその筈。パーティーが始まってすぐに退出する貴族はいないでしょうし。
1番近くにいる使用人は私のみ。これは扉を開けるべきなのか、うんうんと悩んでると殿下も痺れを切らしたようでした。
「さっさとこの会場から出ていけ!!!!この悪女めっ!!!!」
そう言って何と空になったワイングラスを令嬢に向けて投げたのです。
ええ~~~、いくら憎い相手でもワイングラスを女性に投げます?しかも暴投過ぎて狙いが外れて私の方に向かってきているのですが!!??
避けなきゃ怪我しますが、避けたら他の貴族の方々にぶつかり怪我させてしまいます。ああ~~、どうすれば、なんて思い、衝撃に備えたその時。
「はぁ……、あのまま終わっていれば見逃してやろうと思っていたのに」
安心する低い声が聞こえてきました。カチャン、と軽い音がする方を見れば、飛んできた筈のワイングラスが割れずに床に落ちていました。
何て人だろう。あんな風に飛んできたワイングラスを割らずに受け止めるなんて。私の視線の先には会場中の視線を集めてもなお堂々と立ち、不遜な態度のチアキ様がいました。
「本当に命知らずな奴らだね」
そう言いながら、足元のワイングラスを踏み砕きました。
……何て人だろう。ここのワイングラスの値段は下手したら私の1ヵ月の給料くらいあるものだってあるのに、何の躊躇いもなく壊しましたね。じゃあ何で壊さずに受け止めたんです????まぁどのみち殿下が投げた時点で割れる運命だったワイングラスなのですが……
私は給仕で厨房と会場を行き来して、空いた皿やグラスワインを下げる役目なのですが、途中で侍女長にチアキ様の視界に入る場所で待機するように言われました。何でだろうと思っていましたがチアキ様のお顔を見て理解しました。
貴族の方々とのお話はお好きではないようで表情がどんどん曇っているからです。そんなチアキ様の様子を分かっていない貴族の方々はニコニコと嬉しそうに次々と話しかけていきます。あと何故か令嬢の方が多いようにも見えます。そういえばチアキ様は綺麗なお顔をしていることを思い出しました。しかも地位のあるお方ですし、繋がりが欲しいのは仕方ないです。……ですがこのままだとチアキ様が爆発してしまわないか不安です。私は会話が少し途切れた際にごく自然にお酒が入ったグラスワインを複数持って近づきました。
「お話のところ失礼致します。追加のワインをお持ちしました」
するとチアキ様が少し目を丸くして私を見たが、何か言うわけでもなく、1つのグラスを取った。他の貴族の方々も取ったところで退く。
遠目でチアキ様を見ると、少し機嫌が良くなっていました。チアキ様のお好きなお酒をリサーチして本当に良かったです。これなら何とかパーティーが無事終えられそうです。……なんて油断していた時です。
「エリザマス公爵令嬢!!この場を持って貴様との婚約を破棄するっ!!!!」
突然、会場中に我が国の王太子殿下であるジェルド殿下の声が響き渡りました。声の方を向けば、ジェルド殿下の他にこの前、宮の前に集まっていた上級貴族のご子息の方々も一緒にいました。そしてその中央には彼らに守られるように立つローヒインさんがいました。
はて?今日、王宮で開催されるこのパーティーは貴族のみ参加できるパーティーのはず。いくら将来有望とはいえ平民である彼女が参加できるはずがないのですが……
まさか殿下が呼んだ、とかでしょうか?まさか、いくら仲が良いとはいえそんな身勝手なことはしない、はずなのですが。そんな彼らが睨む先にはこの国でも権力を持つ公爵家の令嬢であるエリザマス令嬢でした。
「貴様は身分を笠に着てローヒインを平民出身だと虐め、更には僕からの寵愛に嫉妬し暴行までしたそうじゃないか!!そんな心無い令嬢と結婚など出来ぬ!!僕は貴様との婚約を破棄し、ローヒインと婚約し結婚することをここで宣言する!!」
殿下が大きな声でそう宣言した。ローヒインさんは「こわかったですう」と言いながら殿下にすがりついていました。あれ?少し笑みを浮かべているようですが気のせいでしょうか?そんな彼の言葉にエリザマス令嬢は悲しそうに目を伏せました。
「僕はローヒインと結婚する!!貴様などいらぬ!!」
「私はそのようなことを一切した覚えはないですが、彼女を愛しているというのなら私は身を引きますわ……」
「ふん!!貴様は未来の王妃を虐めた罪で国外追放だ!!さっさと国から出ていけ!!」
「分かりましたわ」
そう言われた瞬間、嬉しそうに笑うエリザマス公爵令嬢。何故かチラチラとチアキ様の方を見ているように見えますが気のせいでしょうか?
婚約破棄されて国外追放されたというのにエリザマス令嬢は堂々としてます。おお、これが国1番の美貌を持つ誇り高い公爵令嬢の風格というものでしょうか。会場の外へと歩く姿も美しいです。きっと彼女はこれからも苦行の中も誇り高く生きていくのだろうと思わせます。
ですが、扉が近づくにつれてその歩みが遅くなっていきます。あと2m程で扉なのに、もはやそれ進んでます?というような歩幅で歩いてます。
運悪く扉の側に開閉する為の使用人が席を外していました。それもその筈。パーティーが始まってすぐに退出する貴族はいないでしょうし。
1番近くにいる使用人は私のみ。これは扉を開けるべきなのか、うんうんと悩んでると殿下も痺れを切らしたようでした。
「さっさとこの会場から出ていけ!!!!この悪女めっ!!!!」
そう言って何と空になったワイングラスを令嬢に向けて投げたのです。
ええ~~~、いくら憎い相手でもワイングラスを女性に投げます?しかも暴投過ぎて狙いが外れて私の方に向かってきているのですが!!??
避けなきゃ怪我しますが、避けたら他の貴族の方々にぶつかり怪我させてしまいます。ああ~~、どうすれば、なんて思い、衝撃に備えたその時。
「はぁ……、あのまま終わっていれば見逃してやろうと思っていたのに」
安心する低い声が聞こえてきました。カチャン、と軽い音がする方を見れば、飛んできた筈のワイングラスが割れずに床に落ちていました。
何て人だろう。あんな風に飛んできたワイングラスを割らずに受け止めるなんて。私の視線の先には会場中の視線を集めてもなお堂々と立ち、不遜な態度のチアキ様がいました。
「本当に命知らずな奴らだね」
そう言いながら、足元のワイングラスを踏み砕きました。
……何て人だろう。ここのワイングラスの値段は下手したら私の1ヵ月の給料くらいあるものだってあるのに、何の躊躇いもなく壊しましたね。じゃあ何で壊さずに受け止めたんです????まぁどのみち殿下が投げた時点で割れる運命だったワイングラスなのですが……
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